拾われた俺、最強のスパダリ閣下に全力で溺愛されてます 迷い子の月下美人

エウラ

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597 立つ鳥跡を濁さず?

「では幽閉塔の取り壊しをこれから行うということでいいかな? 立会人として宰相と彼の側近が付き添うことになるが」
「はい、構いません。よろしくお願いします」

リオラル達も空気を読んでルドヴィカに確認を取ると、近衛騎士の一人に幽閉塔までの案内を頼み報告会を終わらせた。

「では宰相達、よろしく頼む。アルカンシエル殿達もご足労だった。裁判の結果などは追々連絡を致す」
「こちらこそありがとうございました」
「あとのこともよろしくお願いします」
「失礼致します」

リオラルにそれぞれ挨拶をして席を立つと、ヴァンとエレフも立った。

『邪魔したの』
《馳走になった》
「……お菓子は置いていきなさい」

威厳たっぷりな言い方だけど、ヴァンは可愛い仔狼姿だしエレフは手に残った焼き菓子を掴んでいる。子供か。
エレフ、ショックな顔をするんじゃない。さっきまで俺の菓子を満足するまで食べていただろう。本当に欠食児童か。

「よいよい。ギンカ、紙に包んで持たせてあげなさい」
「はい」
「……すみません。ありがとう」
「気に入ったのならよかった。料理長も喜ぶ。厨房でお姿をお見かけしたと張り切っていたのでな」

リオラルが気を遣ってお土産にしてくれる。そして厨房の話になって、俺はハッと思い出した。

「そうだ、ヴァンが色々と食事をいただいたようで、ありがとうございます。料理人達にもお礼を言っておいてください」
「うむ、伝えよう」
《ありがとう》
『料理、美味かったぞ』

おやつをもらってご機嫌になったエレフと、厨房での料理を思い出したヴァンがウキウキでそう言って執務室を出る。

「現金だなぁ」
「まあ、あの二人だし。お礼は言っていたからヨシとしよう」
「じゃあ今度こそお邪魔しました」
「ああ」

こうしてようやく宰相達と幽閉塔に向かう。
ヴァンとエレフも一緒に来るようだ。まあ、目の届く範囲にいてくれた方がこちらとしても助かるからいいけど。

『ないとは思うが、彼奴が暴走したときの抑止力も兼ねてな』
《力技はヴァンだし、魔力の暴走なら我の得意分野だしの》
「あー、そっか。ありがとう、気にかけてくれて」

そうか、番いを喪ったわけではないけれどルドヴィカが万が一暴走したら俺とアークが抑えるしかない。そこに幻獣と精霊王がいればなお安心だ。

「そうだな。我を忘れないとは言い切れないし、それで俺もアークやノアちゃんを傷つけたくないしな」

そう言うルドヴィカに、俺も父リンドヴルムの話を思い出す。あんな感じに暴走してしまったら、本人も周りも傷ついて大変だ。それに番いであるサムラートもきっと悲しむ。

何だかんだと言いながら、皆がお互いを大切に思っているんだなと再認識して嬉しくなるのだった。

幽閉塔に到着し、改めてよく見るとルドヴィカの腕はすごいんだなと思う。

最初に大鎌で斬り落とした天井部分はそのまま地面に落ちている。普通は落ちた衝撃で粉々に砕けていると思うんだけど、斬るときにルドヴィカが魔法で保護したようでひと欠片も砕けていない。

「ルドヴィカ、わざわざ保護したんだ?」
「だってあのまま落ちて砕けたら証拠品とかも巻き添えになるし、何よりサムラートに被害が及んだら目も当てられないだろう」

真顔で当然のように言うルドヴィカに、チャラい魔法騎士団長という認識を改める。

「怒り心頭だったのにあの一瞬でそこまで考えてたんだ。もっと雑だと思ってたのに意外と冷静だった」
「いやだから、ノアちゃんの俺に対する印象酷っ……もういいけどね」

でも改めた側からおちゃらけるので、これはもうどちらもルドヴィカの本質なんだろうと思うことにする。アークは生まれたときからの付き合いだからか気にしてはいないようだ。

こんなやりとりを何とも言えない表情で黙って見守る宰相達。近くにヴァンとエレフもいるので、緊張もしているのだろう。

「とりあえずノアちゃん、幽閉塔の上部を避けて得意の結界で囲ってくれるか。そうしたら俺の結界魔法を解くから」
「分かった」

ルドヴィカに頼まれて、幽閉塔を結界魔法で囲む。すぐに自分の結界魔法を解いたルドヴィカは、翼を顕現して上部に翔んでその場に留まる。
宰相達は目の前で翼を顕現したルドヴィカに驚く。まあ竜人が翼を顕現することってあんまりないだろうし、ルドヴィカは赤竜で真紅の翼だから目立つしね。

宰相達が幽閉塔の上に行ったルドヴィカに注目している中、前回同様に異空間収納鞄マジックバッグから大鎌を取り出す。
それにギョッとする宰相達を尻目に、ルドヴィカは上部から大鎌を素早く振り下ろした。

その瞬間、轟音とともに立ち上った土煙に結界の中が目視できなくなる。少しして土煙が晴れると、幽閉塔は切り刻まれていてただの瓦礫と化していた。

それを見下ろしていたルドヴィカは、今度は炎の殲滅魔法『インフェルノ』を結界の中に放つ。俺がよく使う殲滅魔法だ。さすがは魔法騎士団長。ルドヴィカも無詠唱でサラッと使えるんだな。
やっぱり手合わせをお願いしよう。

俺がわくわくとしている側では、インフェルノの熱量とは反対に宰相達が顔を青くして震えている。

「うん、これは溶けて跡形もなくなるね。と言うか、ルドヴィカのインフェルノも威力がすごいね」
「ルドヴィカは元々魔法に長けているし、赤竜は炎系の魔法は得意だからな」

ルドヴィカがインフェルノを使ったあと、その熱で周りに被害が出そうだからと上部も結界魔法で塞いだ。
ルドヴィカは地上に降りてきて、右手の親指をグッと立てて俺達の方に突き出す。翼は消していた。

「言わずとも塞いでくれてありがとう、ノアちゃん。あとは燃え尽きるまでちょっと待ってね」
「大丈夫だよ。少しは気が済んだ?」
「まあな。あとは楽しみにとっておくさ」

とりあえず、幽閉塔を消し炭にすることができてよかったね。

「……比喩じゃなく消し炭」
「と、とんでもない方法でしたね」

宰相達が呆然と呟く。近衛騎士はもはや言葉もないようだ。
数分して火の消えた結界の中を見ると、瓦礫は溶けてドロドロ。まだ熱いので俺は『アブソリュート・ゼロ』で冷ますとボコボコの地面を魔法で平らに均して更地にした。
そこまでやってから、ハッと気づく。

「あ、ごめんルドヴィカ、俺が後始末しちゃった。何もなかったことにした方がいいかと思って」
「いやいや、綺麗に痕跡を消してくれて助かる。俺、そのまま放置しようかと思ってたから。言われてみれば状態のがいいよな。ありがとう」

思い出したくもない場所だから、これでオッケーだよね。

結界魔法を解くと、そこは本当に幽閉塔があったことすら分からないほど綺麗に均された地面があるだけだった。

「うん、これでここは満足!」

ルドヴィカがいつもの調子でニカッと笑ったので、俺達もホッとして笑うのだった。
まあ、宰相達は引きつった笑い顔だったけどね。


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