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連載
602 記録媒体魔導具事件 3
「……あれ、何かありました?」
気まずい空気を吹き飛ばすようにケーキを食べ紅茶を飲む俺達を見て、そう言うティンバー第二騎士団長。
どうやら騎士団長自ら証拠品を持ってきてくれたらしい。異空間収納鞄に入れて預けてくれれば済むのに。
「ゴホン。うん、まあ、ちょっとな。わざわざご苦労」
「は、いえ、ノア殿がご所望とのことで自分としては何をするのかすごく気になりまして、その、ついでです」
リオラルが咳払いをひとつして労うと、言いにくそうに応えるティンバーに苦笑する。まあ錬金術師ギルドや薬師ギルドの件で色々あったから興味があるんだろうな。それに何故かヴァンがティンバーに懐いてるんだよね。今だってそそくさとティンバーの足元に自分から近寄って見上げているし。
「……ええと?」
困り顔のティンバーが俺を見るので頷く。
「ヴァンはティンバーに抱っこしてほしいんだよ」
「──っでは、失礼致します、フェンリル殿」
『おう』
そう言ってそそくさと抱き上げてもふもふと手を動かすティンバー。ものすごくいい笑顔だ。ヴァンは途端にデレッと力を抜いて気持ちよさそうに目を細める。ティンバーは、ゴッドハンドの持ち主だったのか。
ちょっと負けた気がして悔しいが、俺には撫でてくれるアークがいるもんね。いや、そうじゃない。俺は一体何を張り合っているのか。慌てて頭を振って逸れてしまった思考を振り払う。
「それでグレイ第二騎士団長、証拠品を出してくれるか」
「はい、こちらです」
リオラルに促されたティンバーが、ヴァンを器用に片腕で抱き上げた状態でマジックバッグから魔導具を取り出す。
「俺が直接触っても大丈夫?」
「もちろんです。これまでの調査ですでに色々と弄られているので、破壊しなければ構わないです」
「分かった」
ティンバーがそう言うので俺は魔導具を手に取り、まずは鑑定をする。確かに核となる部品以外は『ヘクセ』という名が表示される。
「俺が魔導具やポーションを錬成するときは当然魔力を使うんだけど。俺は詳しくないけど魔導具師もたぶん魔力を使うよね?」
「ええ、確かに使いますね。組み立てや動作の確認とか、場合によっては動かすための魔石に自分の魔力を込めるようです」
パンテラが応えてくれたので、俺はなるほどと頷く。
「やっぱり。この魔導具にもわずかだけど製作者の魔力が残ってるんだ。それを捜索に使おうと思う」
ただ、ごく微量だから確信はないんだけど、ちょっとこのヘクセの魔力に引っかかるものがあるんだよね。もう少し確認できればいいんだけどな。
「それは……でもかなり微弱な、魔力の残滓では? それで探せるのか?」
俺の提案にリオラルが怪訝そうな顔で聞く。確かにここに残る残滓ではとてもじゃないが手がかりにすらならないだろうけど。
「俺が捜索専用の魔導具を錬成するよ」
「え!?」
俺の言葉にどういうことだと驚くリオラル達。しかし俺の言った意味が分かったらしいアークが応える。
「アレを応用するんだな?」
「そう。アレなら広範囲で一気に探せる」
「アレとは? それに広範囲って一体?」
俺達の会話についていけないリオラル達に、俺の代わりにアークが自身の腕輪を見せて教える。
「実は俺とノアの婚姻の腕輪に、互いの位置を探索できる魔法が付与されているんだ。もしも離れ離れになっても即座に居場所が分かるように」
「他者には見えない地図に近くならピンポイントで、離れすぎていたら方角を示すようになってて、離れてても一定距離まで近づけばピンポイントに切り替わるよ」
「……はあ? そんなことできるのかい? それに広範囲って、どれくらいの範囲なんだ?」
俺達の説明に驚き呆れたような声を出しつつ、リオラルが更に聞いてくる。
「使用者の魔力によるかな。俺やアークなら古の森くらいはカバーできると思う」
「──はあっ!?」
範囲を聞いたリオラル達は、今度は全員で驚愕の叫び声を上げた。あれ、やっぱり普通じゃなかった?
アークを見ると、やれやれという顔で溜め息をついていた。
※最後の方でノアがヘクセの魔力についてちょっと言及している文章を加筆しました。
気まずい空気を吹き飛ばすようにケーキを食べ紅茶を飲む俺達を見て、そう言うティンバー第二騎士団長。
どうやら騎士団長自ら証拠品を持ってきてくれたらしい。異空間収納鞄に入れて預けてくれれば済むのに。
「ゴホン。うん、まあ、ちょっとな。わざわざご苦労」
「は、いえ、ノア殿がご所望とのことで自分としては何をするのかすごく気になりまして、その、ついでです」
リオラルが咳払いをひとつして労うと、言いにくそうに応えるティンバーに苦笑する。まあ錬金術師ギルドや薬師ギルドの件で色々あったから興味があるんだろうな。それに何故かヴァンがティンバーに懐いてるんだよね。今だってそそくさとティンバーの足元に自分から近寄って見上げているし。
「……ええと?」
困り顔のティンバーが俺を見るので頷く。
「ヴァンはティンバーに抱っこしてほしいんだよ」
「──っでは、失礼致します、フェンリル殿」
『おう』
そう言ってそそくさと抱き上げてもふもふと手を動かすティンバー。ものすごくいい笑顔だ。ヴァンは途端にデレッと力を抜いて気持ちよさそうに目を細める。ティンバーは、ゴッドハンドの持ち主だったのか。
ちょっと負けた気がして悔しいが、俺には撫でてくれるアークがいるもんね。いや、そうじゃない。俺は一体何を張り合っているのか。慌てて頭を振って逸れてしまった思考を振り払う。
「それでグレイ第二騎士団長、証拠品を出してくれるか」
「はい、こちらです」
リオラルに促されたティンバーが、ヴァンを器用に片腕で抱き上げた状態でマジックバッグから魔導具を取り出す。
「俺が直接触っても大丈夫?」
「もちろんです。これまでの調査ですでに色々と弄られているので、破壊しなければ構わないです」
「分かった」
ティンバーがそう言うので俺は魔導具を手に取り、まずは鑑定をする。確かに核となる部品以外は『ヘクセ』という名が表示される。
「俺が魔導具やポーションを錬成するときは当然魔力を使うんだけど。俺は詳しくないけど魔導具師もたぶん魔力を使うよね?」
「ええ、確かに使いますね。組み立てや動作の確認とか、場合によっては動かすための魔石に自分の魔力を込めるようです」
パンテラが応えてくれたので、俺はなるほどと頷く。
「やっぱり。この魔導具にもわずかだけど製作者の魔力が残ってるんだ。それを捜索に使おうと思う」
ただ、ごく微量だから確信はないんだけど、ちょっとこのヘクセの魔力に引っかかるものがあるんだよね。もう少し確認できればいいんだけどな。
「それは……でもかなり微弱な、魔力の残滓では? それで探せるのか?」
俺の提案にリオラルが怪訝そうな顔で聞く。確かにここに残る残滓ではとてもじゃないが手がかりにすらならないだろうけど。
「俺が捜索専用の魔導具を錬成するよ」
「え!?」
俺の言葉にどういうことだと驚くリオラル達。しかし俺の言った意味が分かったらしいアークが応える。
「アレを応用するんだな?」
「そう。アレなら広範囲で一気に探せる」
「アレとは? それに広範囲って一体?」
俺達の会話についていけないリオラル達に、俺の代わりにアークが自身の腕輪を見せて教える。
「実は俺とノアの婚姻の腕輪に、互いの位置を探索できる魔法が付与されているんだ。もしも離れ離れになっても即座に居場所が分かるように」
「他者には見えない地図に近くならピンポイントで、離れすぎていたら方角を示すようになってて、離れてても一定距離まで近づけばピンポイントに切り替わるよ」
「……はあ? そんなことできるのかい? それに広範囲って、どれくらいの範囲なんだ?」
俺達の説明に驚き呆れたような声を出しつつ、リオラルが更に聞いてくる。
「使用者の魔力によるかな。俺やアークなら古の森くらいはカバーできると思う」
「──はあっ!?」
範囲を聞いたリオラル達は、今度は全員で驚愕の叫び声を上げた。あれ、やっぱり普通じゃなかった?
アークを見ると、やれやれという顔で溜め息をついていた。
※最後の方でノアがヘクセの魔力についてちょっと言及している文章を加筆しました。
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