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連載
618 偽装魔導具探索の成果は? 1
その辺りの話は色々と平行線で長くなりそうだったので止めて、俺は空いた時間を有効活用することに決めた。
「ヘクセの方は保留になったから、その間、偽装魔導具の方を見に行ってもいいかな」
俺がリオラルに聞くとリオラルも頷く。
「ああ、小隊長達か。そうだな、進捗もそうだが、グレイ騎士団長とヴァン殿の動向も気になるし」
「後半が本音でしょう」
「バレたか」
リオラルが真面目な顔で言ったらギンカがそれにツッコミを入れ、気を悪くもせずに笑って返すリオラル。本音と建て前ってヤツだね。確かにヴァン達のことはとてつもなく気になるから気持ちは分かる。
「でもさすがに王太子殿下が城下を彷徨くわけにはいかないでしょう。俺とアークで行ってくるよ」
お忍びというわけにもいかないだろうし、普通に行ったら行ったで護衛やら何やらとんでもないことになるよね。
「仕方あるまい。戻ったら是非とも詳しく報告をしてくれ」
「分かった」
「記録媒体魔導具で見せてやるよ」
「期待している」
そういうところはきちんと弁えている。リオラルは自分の言動に付随するアレコレや影響力を分かっていて、やっぱり次期国王だなと思う。
竜王陛下や獅子王陛下もこれくらい思慮深いとよかったのにな、なんてちょっと不敬なことを考えてクスッと笑ってしまう。
「ノア?」
「ううん、何でもない。リオラルはやっぱりすごいなって思っただけ」
アークが怪訝そうに名を呼んだので、慌てて首を振って応える。竜王陛下達が脳筋だなんて思ったことは内緒にしておこう。
城を出て城下街に下りるとティンバー達を探す。城下街も広いので小隊長五人それぞれが小隊の騎士を引き連れて手分けして探索をしているらしく、そこかしこに騎士の姿が見える。ティンバーと小隊長達しか知らないけど、彼らが第二騎士団員なんだろう。
住人はあちこちにたくさんいる騎士達を見て何事かと気にしてはいるようだが、わざわざ声をかけることはしない。職務を邪魔しないようにしているのだろう。
俺達はヴァンの気配を探して、一緒にいるだろうティンバーを見つけると声をかける。
「ティンバー、どんな感じ?」
「あ、ノア殿、アーク殿。わざわざいらしたんですか。すみません」
俺達に気づいて振り返るティンバーの腕の中には、案の定寛いでぐんにゃりと力の抜けたヴァンがいた。俺はアークと顔を合わせて吹き出す。
「魔導具の調子が気になって勝手に来ただけだから、気にしないで。それにしてもヴァンをずっと抱えてるの?」
「ええ、何故か気持ちよさそうに眠ってしまって……いい加減な場所に下ろすわけにもいかず」
そうだよね、俺やアークだったらそこら辺にポイって下ろすけど、獣人国の人達にとっては敬うべきフェンリルなんだもんね。
「でもそれじゃあ、何かあったときに両手が塞がってて対処できなくない? さっきは起きてたから片腕で抱えていられたんだろうし。あっ、何なら片腕で胴体をこう、小脇に抱えたら?」
あの胴体部分に腕を通して脇にぶらんと。前足と後ろ足がだらんと垂れるヤツ。小さい子がよく抱えられるよね、あれ。
そう言ったらティンバーは首を横にブンブンと振った。
「そ、そんな不敬な抱え方できませんよ」
「ええ、じゃあ──あっ、前にさ、アークがクルール達を抱っこするのに使ったスリングあるじゃん。あれはどう?」
「──ああ、あれか。ノアが膝から崩れ落ちたヤツ。あれ、クルール達と一緒にギギ達の実家の農園に置いてきただろう。もしかして別の物があるのか?」
アークのあの姿に俺は確かに崩れ落ちた。だって格好いい旦那様が可愛い猫獣人型のゴーレム七体をスリングで抱っこしてたんだよ。妄想じゃなくて現実で。
あのときは俺、カッコ可愛くて、もう壊れるかと思ったよ。
ちなみにスリングとは、赤ちゃんや幼児をお腹の辺りで幅が広くて長い布を使って抱っこする物のこと。斜めにたすき掛けするようにして布の中に赤ちゃんをハンモックに乗せるようにように納めて使うんだ。
それはともかく。それで固定すれば両手は空くよね。それで実際に剣を振るえるのかはどうかとして。
そして俺の異空間収納魔法の中には幾つも試作したスリングが入っているんだな。
再びお披露目のとき!
「じゃーん。こんなのはどうでしょう!」
俺は金色のティンバーに似合いそうな色合いの、新緑色の生地にヴァンの毛並みの銀灰色の刺繍が刺してあるスリングを引っ張り出して広げた。
「俺の偏見だけど、ティンバーって金色なんだけど何か優しげな淡い新緑のイメージがあってさ。それにヴァンの色を差し色にしたのがあって。まあ、たまたま試作したヤツなんだけど、どう?」
「おお、いいですね、それ」
そう言ったらティンバーは喜んでくれたんだけど、アークや他の騎士達が微妙な顔になった。何で?
「あのな、ノア。お互いの色を合わせた衣装なんかは恋人や婚約者同士や夫夫で身に着けるもんなんだよ。以前、ドレスコードで俺達が着たようにな」
「……」
あれ、じゃあマズい?
「……鈍い鈍いとは思ったけど、グレイ騎士団長って鈍感すぎだろう」
「いや、案外分かっててやってたりして」
「いやいや、本当に鈍いだけでしょう」
「あれで本当に恋人同士じゃないのか。まあ相手がフェンリル様だから恋人にはなれないのかも」
などなど、騎士団員達が呆れたように呟いているのが聞こえる。
うん、ティンバーも天然ということで、気にしない。本人は嬉々として、眠るヴァンを包んで器用に抱えて抱っこしているし。
「ありがとうございます、ノア殿。これで何かあっても大丈夫です」
「うん、まあ、ティンバーがいいならいっかぁ」
俺もちょっと遠い目をした。
※このあとの展開をちょっと練るので更新が滞りがちになるかと思います(あと師走や断捨離とかもあり時間が取りにくいので)
もしかしたら閑話とかを挟むかもしれません。ご了承下さい。
「ヘクセの方は保留になったから、その間、偽装魔導具の方を見に行ってもいいかな」
俺がリオラルに聞くとリオラルも頷く。
「ああ、小隊長達か。そうだな、進捗もそうだが、グレイ騎士団長とヴァン殿の動向も気になるし」
「後半が本音でしょう」
「バレたか」
リオラルが真面目な顔で言ったらギンカがそれにツッコミを入れ、気を悪くもせずに笑って返すリオラル。本音と建て前ってヤツだね。確かにヴァン達のことはとてつもなく気になるから気持ちは分かる。
「でもさすがに王太子殿下が城下を彷徨くわけにはいかないでしょう。俺とアークで行ってくるよ」
お忍びというわけにもいかないだろうし、普通に行ったら行ったで護衛やら何やらとんでもないことになるよね。
「仕方あるまい。戻ったら是非とも詳しく報告をしてくれ」
「分かった」
「記録媒体魔導具で見せてやるよ」
「期待している」
そういうところはきちんと弁えている。リオラルは自分の言動に付随するアレコレや影響力を分かっていて、やっぱり次期国王だなと思う。
竜王陛下や獅子王陛下もこれくらい思慮深いとよかったのにな、なんてちょっと不敬なことを考えてクスッと笑ってしまう。
「ノア?」
「ううん、何でもない。リオラルはやっぱりすごいなって思っただけ」
アークが怪訝そうに名を呼んだので、慌てて首を振って応える。竜王陛下達が脳筋だなんて思ったことは内緒にしておこう。
城を出て城下街に下りるとティンバー達を探す。城下街も広いので小隊長五人それぞれが小隊の騎士を引き連れて手分けして探索をしているらしく、そこかしこに騎士の姿が見える。ティンバーと小隊長達しか知らないけど、彼らが第二騎士団員なんだろう。
住人はあちこちにたくさんいる騎士達を見て何事かと気にしてはいるようだが、わざわざ声をかけることはしない。職務を邪魔しないようにしているのだろう。
俺達はヴァンの気配を探して、一緒にいるだろうティンバーを見つけると声をかける。
「ティンバー、どんな感じ?」
「あ、ノア殿、アーク殿。わざわざいらしたんですか。すみません」
俺達に気づいて振り返るティンバーの腕の中には、案の定寛いでぐんにゃりと力の抜けたヴァンがいた。俺はアークと顔を合わせて吹き出す。
「魔導具の調子が気になって勝手に来ただけだから、気にしないで。それにしてもヴァンをずっと抱えてるの?」
「ええ、何故か気持ちよさそうに眠ってしまって……いい加減な場所に下ろすわけにもいかず」
そうだよね、俺やアークだったらそこら辺にポイって下ろすけど、獣人国の人達にとっては敬うべきフェンリルなんだもんね。
「でもそれじゃあ、何かあったときに両手が塞がってて対処できなくない? さっきは起きてたから片腕で抱えていられたんだろうし。あっ、何なら片腕で胴体をこう、小脇に抱えたら?」
あの胴体部分に腕を通して脇にぶらんと。前足と後ろ足がだらんと垂れるヤツ。小さい子がよく抱えられるよね、あれ。
そう言ったらティンバーは首を横にブンブンと振った。
「そ、そんな不敬な抱え方できませんよ」
「ええ、じゃあ──あっ、前にさ、アークがクルール達を抱っこするのに使ったスリングあるじゃん。あれはどう?」
「──ああ、あれか。ノアが膝から崩れ落ちたヤツ。あれ、クルール達と一緒にギギ達の実家の農園に置いてきただろう。もしかして別の物があるのか?」
アークのあの姿に俺は確かに崩れ落ちた。だって格好いい旦那様が可愛い猫獣人型のゴーレム七体をスリングで抱っこしてたんだよ。妄想じゃなくて現実で。
あのときは俺、カッコ可愛くて、もう壊れるかと思ったよ。
ちなみにスリングとは、赤ちゃんや幼児をお腹の辺りで幅が広くて長い布を使って抱っこする物のこと。斜めにたすき掛けするようにして布の中に赤ちゃんをハンモックに乗せるようにように納めて使うんだ。
それはともかく。それで固定すれば両手は空くよね。それで実際に剣を振るえるのかはどうかとして。
そして俺の異空間収納魔法の中には幾つも試作したスリングが入っているんだな。
再びお披露目のとき!
「じゃーん。こんなのはどうでしょう!」
俺は金色のティンバーに似合いそうな色合いの、新緑色の生地にヴァンの毛並みの銀灰色の刺繍が刺してあるスリングを引っ張り出して広げた。
「俺の偏見だけど、ティンバーって金色なんだけど何か優しげな淡い新緑のイメージがあってさ。それにヴァンの色を差し色にしたのがあって。まあ、たまたま試作したヤツなんだけど、どう?」
「おお、いいですね、それ」
そう言ったらティンバーは喜んでくれたんだけど、アークや他の騎士達が微妙な顔になった。何で?
「あのな、ノア。お互いの色を合わせた衣装なんかは恋人や婚約者同士や夫夫で身に着けるもんなんだよ。以前、ドレスコードで俺達が着たようにな」
「……」
あれ、じゃあマズい?
「……鈍い鈍いとは思ったけど、グレイ騎士団長って鈍感すぎだろう」
「いや、案外分かっててやってたりして」
「いやいや、本当に鈍いだけでしょう」
「あれで本当に恋人同士じゃないのか。まあ相手がフェンリル様だから恋人にはなれないのかも」
などなど、騎士団員達が呆れたように呟いているのが聞こえる。
うん、ティンバーも天然ということで、気にしない。本人は嬉々として、眠るヴァンを包んで器用に抱えて抱っこしているし。
「ありがとうございます、ノア殿。これで何かあっても大丈夫です」
「うん、まあ、ティンバーがいいならいっかぁ」
俺もちょっと遠い目をした。
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