570 / 638
連載
閑話 竜王国での一幕 sideヴァルハラ大公家&王家
◇◇◇sideウラノス
今日の夕方、まだ終わりの見えない書類の山と格闘しているときに、獣人国に滞在中のアルカンシエルとノアちゃんから通信が入った。
この通信魔導具はノアちゃんが錬金術で錬成した最新作で、音声はもちろんリアルタイムで映像も見ることができる優れものだ。これのおかげで何時でも彼らの姿を見て話せる。何とも素晴らしいものである。
そんな通信魔導具から伝えられた内容に、私はまた頭を抱えることになった。そばで聞いていたレーゲンも同じである。
「聞いていたな、レーゲン。早速内容をまとめて陛下に謁見の申し込みをしてくれ」
「畏まりました。すぐに取りかかります」
お互い、頭が痛いと思いつつも迅速に動く。
今回のケースはとてもじゃないが獣人国だけの問題に留まらない。だからこそ、よくぞノアちゃん達がこちらを頼ってくれたと思う。
「アークの話だと三国の協力を提案したのはノアちゃんだというし、下手をするとノアちゃんが一人で何でもやってしまうところだったろう」
下手にそれができるだけの力があるが故に。
今まで頼る術のなかったノアちゃんは周りに頼るという当たり前のことができない環境だった。だがこうして私達を頼ってくれるくらいには気を許してくれているし、周りを見る余裕も生まれてきているのだろう。
それはそれで嬉しいが、頼られる内容が嬉しくないのも事実で──
「本っ当にろくでもないな、獣人国は」
次期国王の王太子殿下や他の王子殿下、メーレ王妃や側妃達は素晴らしいのに。
ヘタレでちょっと脳筋な国王は愚王とまでは言わないが、上に立つ資質が弱いと思う。
不敬? そんなの今更だな。ノアちゃんを苦しめた時点で私達の敵認定だよ。そんな輩に遠慮はいらないだろう?
「だがノアちゃんがあそこのリンクス王子を気に入っているし、メーレ王妃も好いているし。それだけでもこちらが手を貸す理由になる」
「そうですね。ノア殿の喜ぶ顔が見たいですよね」
「うんうん。そのためならば義父様は頑張っちゃうぞ!」
そのための苦労ならば、たとえ執務が長引いても私は頑張れる。
こうして早速謁見の許可を得て王城に向かい、案の定、竜王陛下達も頭を抱えることになる。
◇◇◇sideリオライト
「──え? 何だって?」
「ですから、これからヴァルハラ大公閣下が竜王陛下に謁見をするそうなので、宰相様も同席するようにと通達がきております」
ここは宰相である私、リオライトの執務室。夕刻だが今日もちょっと残業だなと思いつつ書類を裁いていたときに不意に聞こえた話にキョトンとする。
話を持ってきたのは宰相補佐のルーシィ・エヴァンズ。水色の腰まである髪を三つ編みにしていて、琥珀色の垂れ目がちの瞳。私の護衛も兼任しているため二メートル越えのガッチリ体型の青竜だ。歳はまだ若く、三〇〇歳だったか。人族ならば三〇代の見た目で優しげな顔立ちだ。
ちなみに私は竜王陛下の長子ではあるが次期竜王は自身の息子のシスカリオンなので気楽ではある。
私はガッチリ体型の陛下に似ず、竜人としては細身だ。肩に付くくらいの銀色の髪をハーフアップにし、同じく銀色の切れ長の瞳。背は二メートルもないが大きい方ではあるだろう。
肉体労働よりも文官向きだったので、今の役職に不満はない。
──まあ陛下がたまに暴走するのでそういったときの後始末が面倒ではあるが、おおむね平和だ。
そんな日々に、最近家の王子達の再従兄弟であるアルカンシエルの番いになったノアちゃんが色々と騒動を起こして──いや、言い方が悪いな。とにかく色々と天然で常識外れなために起こる騒動で、暇だと言う間もないわけだが……
今回の同席もそっち絡みなんだろうか……?
「分かった。急な謁見ということは、また問題があったのだろう。つい先日のアルバトロス魔法騎士団長の番いの件もあるし、色々と大変だな」
「他人事のようにおっしゃってますけど、今回呼ばれたってことは貴方様にも関係があるということでは?」
「……やっぱり?」
私とルーシィは謁見の間に向かう道すがら、二人でそんな会話をしていたのだが……
従兄弟であるウラノスの謁見で、私達は陛下達と同じく頭を抱えることになる。
※皆様、新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今日の夕方、まだ終わりの見えない書類の山と格闘しているときに、獣人国に滞在中のアルカンシエルとノアちゃんから通信が入った。
この通信魔導具はノアちゃんが錬金術で錬成した最新作で、音声はもちろんリアルタイムで映像も見ることができる優れものだ。これのおかげで何時でも彼らの姿を見て話せる。何とも素晴らしいものである。
そんな通信魔導具から伝えられた内容に、私はまた頭を抱えることになった。そばで聞いていたレーゲンも同じである。
「聞いていたな、レーゲン。早速内容をまとめて陛下に謁見の申し込みをしてくれ」
「畏まりました。すぐに取りかかります」
お互い、頭が痛いと思いつつも迅速に動く。
今回のケースはとてもじゃないが獣人国だけの問題に留まらない。だからこそ、よくぞノアちゃん達がこちらを頼ってくれたと思う。
「アークの話だと三国の協力を提案したのはノアちゃんだというし、下手をするとノアちゃんが一人で何でもやってしまうところだったろう」
下手にそれができるだけの力があるが故に。
今まで頼る術のなかったノアちゃんは周りに頼るという当たり前のことができない環境だった。だがこうして私達を頼ってくれるくらいには気を許してくれているし、周りを見る余裕も生まれてきているのだろう。
それはそれで嬉しいが、頼られる内容が嬉しくないのも事実で──
「本っ当にろくでもないな、獣人国は」
次期国王の王太子殿下や他の王子殿下、メーレ王妃や側妃達は素晴らしいのに。
ヘタレでちょっと脳筋な国王は愚王とまでは言わないが、上に立つ資質が弱いと思う。
不敬? そんなの今更だな。ノアちゃんを苦しめた時点で私達の敵認定だよ。そんな輩に遠慮はいらないだろう?
「だがノアちゃんがあそこのリンクス王子を気に入っているし、メーレ王妃も好いているし。それだけでもこちらが手を貸す理由になる」
「そうですね。ノア殿の喜ぶ顔が見たいですよね」
「うんうん。そのためならば義父様は頑張っちゃうぞ!」
そのための苦労ならば、たとえ執務が長引いても私は頑張れる。
こうして早速謁見の許可を得て王城に向かい、案の定、竜王陛下達も頭を抱えることになる。
◇◇◇sideリオライト
「──え? 何だって?」
「ですから、これからヴァルハラ大公閣下が竜王陛下に謁見をするそうなので、宰相様も同席するようにと通達がきております」
ここは宰相である私、リオライトの執務室。夕刻だが今日もちょっと残業だなと思いつつ書類を裁いていたときに不意に聞こえた話にキョトンとする。
話を持ってきたのは宰相補佐のルーシィ・エヴァンズ。水色の腰まである髪を三つ編みにしていて、琥珀色の垂れ目がちの瞳。私の護衛も兼任しているため二メートル越えのガッチリ体型の青竜だ。歳はまだ若く、三〇〇歳だったか。人族ならば三〇代の見た目で優しげな顔立ちだ。
ちなみに私は竜王陛下の長子ではあるが次期竜王は自身の息子のシスカリオンなので気楽ではある。
私はガッチリ体型の陛下に似ず、竜人としては細身だ。肩に付くくらいの銀色の髪をハーフアップにし、同じく銀色の切れ長の瞳。背は二メートルもないが大きい方ではあるだろう。
肉体労働よりも文官向きだったので、今の役職に不満はない。
──まあ陛下がたまに暴走するのでそういったときの後始末が面倒ではあるが、おおむね平和だ。
そんな日々に、最近家の王子達の再従兄弟であるアルカンシエルの番いになったノアちゃんが色々と騒動を起こして──いや、言い方が悪いな。とにかく色々と天然で常識外れなために起こる騒動で、暇だと言う間もないわけだが……
今回の同席もそっち絡みなんだろうか……?
「分かった。急な謁見ということは、また問題があったのだろう。つい先日のアルバトロス魔法騎士団長の番いの件もあるし、色々と大変だな」
「他人事のようにおっしゃってますけど、今回呼ばれたってことは貴方様にも関係があるということでは?」
「……やっぱり?」
私とルーシィは謁見の間に向かう道すがら、二人でそんな会話をしていたのだが……
従兄弟であるウラノスの謁見で、私達は陛下達と同じく頭を抱えることになる。
※皆様、新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます
青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。
藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。
溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。
その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。
目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。
前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。
リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。
アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。
当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。
そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。
ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。
彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。
やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。
これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。