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連載
626 魔導具錬成からの… 3
廊下でやらかして動揺していた俺だったが、そのあとアークの逞しい左腕に抱えられてくっ付いているうちに落ち着きを取り戻した。
アークの足が止まったので顔を上げると、いつの間にかティンバーの団長室に着いていた。その団長室の前には先触れを頼んだ近衛騎士が立っていて、扉をノックして声をかける。
「グレイ第二騎士団長は中でお待ちです。では我々はここで失礼致します」
「あ、ありがとうございました」
「ありがとう」
先触れの近衛騎士が団長室内に声をかけると返事があり、近衛騎士が扉を開けてそう言ったので俺達はお礼を言って別れた。
奥の執務机に座っていたティンバーが立ち上がって俺達のそばにやってきた。俺は慌ててアークに床に下ろしてもらう。何時も抱っこされてるから慣れちゃって忘れてたよ。
「こんにちは。急に来てしまってごめんなさい」
「いえ、どのみちノア殿に偽装魔導具の件で連絡をしようとしていたので助かります。アルカンシエル殿もご足労いただきありがとうございます」
「まあ俺達は基本的に何時も一緒に行動だからな」
先触れをしたといってもティンバーの予定を確認せずに来たから迷惑だったろうと思ってそう言えば、ティンバーもこちらに連絡を入れるところだったらしい。迷惑じゃないならよかった。
アークの発言は竜人の執着心や独占欲からだろうけど、確かに大抵は同じ行動だな。最近はちょくちょく離れるけど、古の森と行ったり来たりだから仕方ない。
「今日はスリングでの抱っこじゃないんだね」
俺がそう言えば、ティンバーは一瞬キョトンとしたあと、ああ、と言って微笑んだ。
「ヴァン殿ですね。先触れがくる少し前に散歩をしてくると言って団長室から出て行きましたよ。今頃は厨房でおやつをもらっているかもしれませんね」
「ははは、そうなんだ?」
和やかに笑うティンバーを見て、俺は昨日よりもマーキングがすごくないかと思わずアークと目を合わせて苦笑する。
アークも気づいたようで同じく苦笑している。
夜通しくっついていたとしても、こうはならないよね。一体何をどうしたらこんなにヴァンの匂いが染みつくんだろう。あとでアークに聞いてみよう。
そう思ってアークをジッと見つめていたら、何か察したのか目を逸らすアーク。
いやだって気になるじゃん。
「あとでマーキングのこと教えてね」
「…………あとでな」
小さく口に出して言えば、ものすごく躊躇ったあとにボソッと言われて首を傾げる。まあ教えてくれるならいいや。
それよりも偽装魔導具だよ。
「そうそう、偽装魔導具の確認だけど、ここじゃちょっと無理だよね。何処かでやるの?」
「あ、はい。第二騎士団の訓練場の隣にある倉庫を一つ確保していまして、そこに偽装魔導具を集めているのでそちらでお願いします」
「分かった。じゃあ案内よろしくお願いします」
こうしてティンバーの案内で倉庫に向かう道すがら、他の騎士達がボソボソと囁く声が耳に入った。
「団長、今日はアレ使ってないな」
「さっきフェンリル殿を厨房のある方で見かけたぞ。だから抱っこしてないんだな」
アレとはスリングのことだろう。そしてヴァンはやっぱりおやつをもらいに行っているようだ。
「いやいや、これが普通だろう。アレ、誰が見てもおかしいって」
「何で団長、あれが通常運転だと思っているんだ。全く違和感持たずに連れ歩いていたし」
うーん、やっぱり。周りは違和感だらけなのに本人達は何とも思っていなさそうなところが何とも言えない。
「そもそも、あの強烈なマーキングに何故気づかないのか」
「本当に鈍すぎだよな」
だよね、あれに気づいていないのか無関心なのか。俺も色々と鈍いらしいけど、それでもさすがに気づくレベルなのに。
「ティンバー、何かヴァンに上手いこと丸め込まれていそう」
「そうだな。どうもティンバーがノアに似た系統の性質で思った以上に純粋というか……心配になるレベル」
「え、俺と似てる?」
確かに鈍いところとかはちょっと分かるけど、ティンバーの方は俺よりも人生経験豊富そうだよ。俺は非モテだったけどティンバーはモテそうだし。
「ああ、俺に丸め込まれ──コホン、いやちょっと箱入りっぽいというか擦れていないというか」
うん? 何かアーク、言いかけて誤魔化した?
思わずジト目になるとアークに笑って誤魔化された。
「とにかくちょっと騙されやすそうってことだ」
「むう、そりゃあ俺は確かに騙されてたけどさ。でもティンバーは騎士団長やるくらいしっかりしてるだろうし、俺よりも年上で大人だし、大丈夫でしょ」
「まあ、実年齢はノアの方が上だが、経験で言えばティンバーの方が勝っているか」
「実年齢はいいの!」
アークが意地悪だ。そりゃあ二二一歳だけど実際に生きている時間は二一年だからいいんだよ。
「ああ、ごめん。拗ねるノアも可愛くて、つい」
俺はムスッとしながらティンバーのあとを足早についていく。アークは謝りながら悠々と追いついてきて、そんなに身長差はないはずなのに足の長さのせいかなと的外れなこと思った。
そうして倉庫に着いたときにはさっきのモヤモヤな気持ちは消え失せて、偽装魔導具の方に気が向いていてウキウキワクワクするのだった。
アークの足が止まったので顔を上げると、いつの間にかティンバーの団長室に着いていた。その団長室の前には先触れを頼んだ近衛騎士が立っていて、扉をノックして声をかける。
「グレイ第二騎士団長は中でお待ちです。では我々はここで失礼致します」
「あ、ありがとうございました」
「ありがとう」
先触れの近衛騎士が団長室内に声をかけると返事があり、近衛騎士が扉を開けてそう言ったので俺達はお礼を言って別れた。
奥の執務机に座っていたティンバーが立ち上がって俺達のそばにやってきた。俺は慌ててアークに床に下ろしてもらう。何時も抱っこされてるから慣れちゃって忘れてたよ。
「こんにちは。急に来てしまってごめんなさい」
「いえ、どのみちノア殿に偽装魔導具の件で連絡をしようとしていたので助かります。アルカンシエル殿もご足労いただきありがとうございます」
「まあ俺達は基本的に何時も一緒に行動だからな」
先触れをしたといってもティンバーの予定を確認せずに来たから迷惑だったろうと思ってそう言えば、ティンバーもこちらに連絡を入れるところだったらしい。迷惑じゃないならよかった。
アークの発言は竜人の執着心や独占欲からだろうけど、確かに大抵は同じ行動だな。最近はちょくちょく離れるけど、古の森と行ったり来たりだから仕方ない。
「今日はスリングでの抱っこじゃないんだね」
俺がそう言えば、ティンバーは一瞬キョトンとしたあと、ああ、と言って微笑んだ。
「ヴァン殿ですね。先触れがくる少し前に散歩をしてくると言って団長室から出て行きましたよ。今頃は厨房でおやつをもらっているかもしれませんね」
「ははは、そうなんだ?」
和やかに笑うティンバーを見て、俺は昨日よりもマーキングがすごくないかと思わずアークと目を合わせて苦笑する。
アークも気づいたようで同じく苦笑している。
夜通しくっついていたとしても、こうはならないよね。一体何をどうしたらこんなにヴァンの匂いが染みつくんだろう。あとでアークに聞いてみよう。
そう思ってアークをジッと見つめていたら、何か察したのか目を逸らすアーク。
いやだって気になるじゃん。
「あとでマーキングのこと教えてね」
「…………あとでな」
小さく口に出して言えば、ものすごく躊躇ったあとにボソッと言われて首を傾げる。まあ教えてくれるならいいや。
それよりも偽装魔導具だよ。
「そうそう、偽装魔導具の確認だけど、ここじゃちょっと無理だよね。何処かでやるの?」
「あ、はい。第二騎士団の訓練場の隣にある倉庫を一つ確保していまして、そこに偽装魔導具を集めているのでそちらでお願いします」
「分かった。じゃあ案内よろしくお願いします」
こうしてティンバーの案内で倉庫に向かう道すがら、他の騎士達がボソボソと囁く声が耳に入った。
「団長、今日はアレ使ってないな」
「さっきフェンリル殿を厨房のある方で見かけたぞ。だから抱っこしてないんだな」
アレとはスリングのことだろう。そしてヴァンはやっぱりおやつをもらいに行っているようだ。
「いやいや、これが普通だろう。アレ、誰が見てもおかしいって」
「何で団長、あれが通常運転だと思っているんだ。全く違和感持たずに連れ歩いていたし」
うーん、やっぱり。周りは違和感だらけなのに本人達は何とも思っていなさそうなところが何とも言えない。
「そもそも、あの強烈なマーキングに何故気づかないのか」
「本当に鈍すぎだよな」
だよね、あれに気づいていないのか無関心なのか。俺も色々と鈍いらしいけど、それでもさすがに気づくレベルなのに。
「ティンバー、何かヴァンに上手いこと丸め込まれていそう」
「そうだな。どうもティンバーがノアに似た系統の性質で思った以上に純粋というか……心配になるレベル」
「え、俺と似てる?」
確かに鈍いところとかはちょっと分かるけど、ティンバーの方は俺よりも人生経験豊富そうだよ。俺は非モテだったけどティンバーはモテそうだし。
「ああ、俺に丸め込まれ──コホン、いやちょっと箱入りっぽいというか擦れていないというか」
うん? 何かアーク、言いかけて誤魔化した?
思わずジト目になるとアークに笑って誤魔化された。
「とにかくちょっと騙されやすそうってことだ」
「むう、そりゃあ俺は確かに騙されてたけどさ。でもティンバーは騎士団長やるくらいしっかりしてるだろうし、俺よりも年上で大人だし、大丈夫でしょ」
「まあ、実年齢はノアの方が上だが、経験で言えばティンバーの方が勝っているか」
「実年齢はいいの!」
アークが意地悪だ。そりゃあ二二一歳だけど実際に生きている時間は二一年だからいいんだよ。
「ああ、ごめん。拗ねるノアも可愛くて、つい」
俺はムスッとしながらティンバーのあとを足早についていく。アークは謝りながら悠々と追いついてきて、そんなに身長差はないはずなのに足の長さのせいかなと的外れなこと思った。
そうして倉庫に着いたときにはさっきのモヤモヤな気持ちは消え失せて、偽装魔導具の方に気が向いていてウキウキワクワクするのだった。
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