拾われた俺、最強のスパダリ閣下に全力で溺愛されてます 迷い子の月下美人

エウラ

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629 帰省と報告 1

リオラルの執務室に戻った俺達は、偽装魔導具の確認で分かったことを報告した。

「まさかヘクセがノア殿の養父と何かしら関わりがあるかもしれないとは」
「言われてみれば偽装にしろ魔導具の製作にしろ、かなりの高性能らしいし、彼の方と何かしら関係があったとすれば納得もいく」

オウラン宰相が驚愕し、リオラルも驚きながらも納得顔で言う。確かにヘクセの魔導具は例の粗悪な部品以外はきっちり作られているし、偽装の技術は素晴らしい。もちろん偽装はよくないことだが。

だから余計に、こんな犯罪を自ら犯すような人物には思えない。それくらい一つ一つ丁寧に作られている。

例えば角を削って丸めて触ったときに怪我をしないようにとか、身に着けるときに不快にならないサイズだとか、使う側があまり気にも留めないようなところまでとても気を遣って作られているんだ。
そんな細やかな作業をする人が本当に悪人なんだろうか。

きっと何か理由があるんだと思う。

「これだけの腕前で職人気質かたぎのような仕事ぶりを見るに、俺はヘクセが悪意を持ってこの偽装魔導具を作ったようには思えないんだ」
「そうだな。裏で仕事を頼んだ輩がいる可能性もある。そもそもこの偽装魔導具でヘクセが得をすることはなさそうだし、その辺りも探索と平行して調べよう」
「うん、お願いします」

一番いいのは本人を捕まえて確認することだけど、そこは俺達が竜王国に行ってこのことを報告してからどうするか考えよう。

「じゃあ、お昼ご飯のあとは竜王国に帰るから、何かあればヴァルハラ大公家か竜王国の宰相様に連絡をお願いします」
「ああ、もうそんな時間か。分かった。私達も昼休憩しよう。ノア殿達も一緒にどうだい?」

リオラルに昼食を誘われて、俺はアークに聞いてみる。

「アーク、皆と一緒でもいい?」
「構わない。それにヴァンがティンバーから離れないから彼も一緒でいいか?」

アークの言葉にリオラルを初めとする全員がティンバーを見る。ヴァンをモフりながら幸せそうに微笑んでいたティンバーは、油断していたのかその視線を浴びてビクッと肩を揺らせた。
それを見てリオラルが思わずという感じで噴き出す。

「ふっ、もちろん。グレイ騎士団長も構わないな?」
「あっ、はい、大丈夫です」

照れたようにリオラルに返事をするティンバーに、全員が笑う。
こうしてほんわかしながら食堂に移動し、王族専用の個室に通されて食事をする。
ヴァンももちろん美味しそうな料理を出されてペロリと平らげたあとは、もはや定位置のようにティンバーの膝の上に乗って寛いでいた。

「ねえ、ヴァン。昔はラグ爺さんや父さんと旅をしてたんだよね。その頃にラグ爺さんの家族構成とか聞かなかった?」
『うーん……、我がいるときには聞いたことがないな。強いて言えば、ずっと独り身で恋人がいた様子もない。だからおそらく彼奴の子孫ではないだろうな』

寛ぐヴァンに俺はラグ爺さんのことを聞いてみるが、そういう返答があっただけ。

そっか、ラグ爺さんは一生涯独身だったかぁ。もしかしたら俺を拾う前に誰かとの子供がいたんじゃないかと思ったけど、違うかもしれない。

大体、伴侶や子供がいたら俺なんか引き取って育てたりしないか。それに物心ついた頃に、ラグ爺さんが子育てなんかしたことないって言ってたような気がする。確かに俺の抱っことかぎこちなかったな。

そんなことを振り返って、ちょっと笑う。これも今思えば幸せな思い出だな。

「ヴァンは知らないんだ。じゃあこのあとの竜王国の帰省には付いてこなくても大丈夫かな。ねぇアーク、このままティンバーにお願いして留守番しててもらおうか」
「そうだな。大賢者の情報はこれ以上聞いても出なさそうだし、向こうにいても暇かもしれないな。どうだ、ヴァン。ティンバーもそれでいいか?」
「私は構いません」
『我もそれでいいぞ』

俺の提案にアークも乗ってきてヴァンとティンバーに聞くと、二人はすぐに頷く。

「ティンバーが見ててくれるなら安心だね。ヴァンも大人しくしててよ」
『今のところ我の出番はないだろうから大丈夫だ。このあとは昼寝をする』

念のためにヴァンに釘を刺すとそう言われた。このあとはゴロゴロする予定らしい。じゃあ心配ないかな。

「ティンバー、申し訳ないけどヴァンをよろしくね」
「お任せください」

頼もしいティンバーの返事に頷いて食堂をあとにした俺とアークは、エレフを喚んで竜王国のヴァルハラ大公家のアークの部屋に予定通り転移してもらうのだった。




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