583 / 638
連載
633 報告は大事 1
立ち話もなんだからということで執務室の隣にある応接室に移動した俺達は、俺のインベントリから出したお茶とお茶請けを摘まみながらこれまでの経緯を話した。
「──つまり、問題のそのヘクセという魔導具師(仮)がラグナロク・ニヴルヘイム殿の縁者らしいと?」
眉間にシワを寄せ、こめかみを人差し指でグリグリしながら呻るように呟くウラノス義父様と、遠い目をするリオライトおじ様。
ウラノス義父様がヘクセを(仮)と呼ぶのは、これまでの様々な内容から想像するに、すでに魔導具師かどうか怪しくなっているからだそうだ。
確かにただの魔導具師ができる範疇を越えている。そこにきてラグ爺さんの関係者かもしれないとなると、俺みたいな魔導師か錬金術師の可能性も視野に入れないといけないかもしれない。
大賢者という二つ名持ちだったラグ爺さんの血筋の人なら、きっと魔力もすごくて魔法も魔導具製作のセンスもすごいに違いない。
俺はその血を引いてはいないけど、その素晴らしい技術を教わって今は色々と魔法も錬金も調薬もできるようになった。それくらいラグ爺さんはすごい人だったわけだし。
でもヘクセは誰に教わったんだろう。もしかしてラグ爺さんが生前、俺を拾う前に教えていたのかな。
もしそうなら、ヘクセを捕まえたときに俺の知らないラグ爺さんの昔話とか聞けるかな、なんて思ってしまう。だってラグ爺さんという共通の人物を直接知る人は数少ないから。
「陛下にも報告しないとマズい案件だけど、報告したらしたで政務そっちのけで張り切りそうで怖い」
「あー、そうだな。アークのときもそうだったが、最近の陛下はノアちゃん関係は特に激しいからな」
続くウラノス義父様の言葉に同意して溜め息をつくリオライトおじ様も大祖父様のことをよく分かっているようだ。
そういえばリンデン父さんを封印するときに大祖父様もラグ爺さんと会ってるんだよね? それって大祖父様からラグ爺さんのことが何か聞けるかもしれないってことで。
そうなると、さすがの俺も大祖父様が暴走しそうだって分かる。それを止める側近の方々や近衛騎士達の苦労がよく分かるよ。
「だが、ここで呻っていても仕方ない。すぐに謁見の手配をしよう。ルーシィ、いるか?」
「──はい、どうされました?」
そう言って不意にリオライトおじ様が扉の向こうに向かって声をかける。すると今までなかった気配が現れて、一拍遅れて返事が返ってきた。
低くて穏やかな声だ。誰だろう。人払いはしてるんだよね。
「大至急、陛下に謁見の許可を取ってくれ。ノアちゃんの件だと言えばすぐにでも許可が下りるとは思うが──」
「畏まりました。すぐに話を通して参ります」
扉越しにそんな会話を交わすと、向こうの人の気配が消え、再び静かになる。ウラノス義父様とアークは相手が誰か分かっているらしく、平然としている。俺だけ首を傾げていると、それに気づいたリオライトおじ様がハッとして教えてくれる。
「ああ、すまない。先ほどの彼は私の補佐で護衛も兼ねている者で、ルーシィ・エヴァンズという。戻ってきたら紹介するよ」
「そういえばさっきは人払いしていていなかったね。私とアークは知っているから、紹介するのを忘れていたよ」
「そうなんですね。分かりました」
リオライトおじ様とウラノス義父様がそう言ってくれたので、俺は頷いて大人しく待つ。
それから五分ほどで戻ってきたルーシィさんは、ノックのあと扉越しにリオライトおじ様に許可が下りたと告げる。
「ありがとう、ルーシィ。こちらに入ってきてくれるか。ノアちゃんに紹介したい」
「は、畏まりました。失礼致します」
リオライトおじ様に促されて入室してきた宰相補佐だというルーシィさんは、護衛も兼ねているという言葉通りの体格だった。アークよりも背が高くてガッチリした筋肉質の身体。服越しでもむっちりしているのが分かる。腰まである水色の髪を三つ編みしている。
身体は厳ついけど、琥珀色の瞳はやや垂れ目で、優しく甘い顔立ちのおかげか怖さはない。さっきの声も穏やかで、声だけだったら想像できない体格だ。
聞けば実年齢は三〇〇歳だとか。見た目は人族でいう三〇代。やっぱり長命の種族は年齢が分かりづらいな。
俺は自分も二〇〇歳越えに見えないということを棚に上げてそんなことを思うのだった。
「──つまり、問題のそのヘクセという魔導具師(仮)がラグナロク・ニヴルヘイム殿の縁者らしいと?」
眉間にシワを寄せ、こめかみを人差し指でグリグリしながら呻るように呟くウラノス義父様と、遠い目をするリオライトおじ様。
ウラノス義父様がヘクセを(仮)と呼ぶのは、これまでの様々な内容から想像するに、すでに魔導具師かどうか怪しくなっているからだそうだ。
確かにただの魔導具師ができる範疇を越えている。そこにきてラグ爺さんの関係者かもしれないとなると、俺みたいな魔導師か錬金術師の可能性も視野に入れないといけないかもしれない。
大賢者という二つ名持ちだったラグ爺さんの血筋の人なら、きっと魔力もすごくて魔法も魔導具製作のセンスもすごいに違いない。
俺はその血を引いてはいないけど、その素晴らしい技術を教わって今は色々と魔法も錬金も調薬もできるようになった。それくらいラグ爺さんはすごい人だったわけだし。
でもヘクセは誰に教わったんだろう。もしかしてラグ爺さんが生前、俺を拾う前に教えていたのかな。
もしそうなら、ヘクセを捕まえたときに俺の知らないラグ爺さんの昔話とか聞けるかな、なんて思ってしまう。だってラグ爺さんという共通の人物を直接知る人は数少ないから。
「陛下にも報告しないとマズい案件だけど、報告したらしたで政務そっちのけで張り切りそうで怖い」
「あー、そうだな。アークのときもそうだったが、最近の陛下はノアちゃん関係は特に激しいからな」
続くウラノス義父様の言葉に同意して溜め息をつくリオライトおじ様も大祖父様のことをよく分かっているようだ。
そういえばリンデン父さんを封印するときに大祖父様もラグ爺さんと会ってるんだよね? それって大祖父様からラグ爺さんのことが何か聞けるかもしれないってことで。
そうなると、さすがの俺も大祖父様が暴走しそうだって分かる。それを止める側近の方々や近衛騎士達の苦労がよく分かるよ。
「だが、ここで呻っていても仕方ない。すぐに謁見の手配をしよう。ルーシィ、いるか?」
「──はい、どうされました?」
そう言って不意にリオライトおじ様が扉の向こうに向かって声をかける。すると今までなかった気配が現れて、一拍遅れて返事が返ってきた。
低くて穏やかな声だ。誰だろう。人払いはしてるんだよね。
「大至急、陛下に謁見の許可を取ってくれ。ノアちゃんの件だと言えばすぐにでも許可が下りるとは思うが──」
「畏まりました。すぐに話を通して参ります」
扉越しにそんな会話を交わすと、向こうの人の気配が消え、再び静かになる。ウラノス義父様とアークは相手が誰か分かっているらしく、平然としている。俺だけ首を傾げていると、それに気づいたリオライトおじ様がハッとして教えてくれる。
「ああ、すまない。先ほどの彼は私の補佐で護衛も兼ねている者で、ルーシィ・エヴァンズという。戻ってきたら紹介するよ」
「そういえばさっきは人払いしていていなかったね。私とアークは知っているから、紹介するのを忘れていたよ」
「そうなんですね。分かりました」
リオライトおじ様とウラノス義父様がそう言ってくれたので、俺は頷いて大人しく待つ。
それから五分ほどで戻ってきたルーシィさんは、ノックのあと扉越しにリオライトおじ様に許可が下りたと告げる。
「ありがとう、ルーシィ。こちらに入ってきてくれるか。ノアちゃんに紹介したい」
「は、畏まりました。失礼致します」
リオライトおじ様に促されて入室してきた宰相補佐だというルーシィさんは、護衛も兼ねているという言葉通りの体格だった。アークよりも背が高くてガッチリした筋肉質の身体。服越しでもむっちりしているのが分かる。腰まである水色の髪を三つ編みしている。
身体は厳ついけど、琥珀色の瞳はやや垂れ目で、優しく甘い顔立ちのおかげか怖さはない。さっきの声も穏やかで、声だけだったら想像できない体格だ。
聞けば実年齢は三〇〇歳だとか。見た目は人族でいう三〇代。やっぱり長命の種族は年齢が分かりづらいな。
俺は自分も二〇〇歳越えに見えないということを棚に上げてそんなことを思うのだった。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます
青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。
藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。
溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。
その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。
目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。
前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。
リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。
アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。
当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。
そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。
ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。
彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。
やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。
これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。