拾われた俺、最強のスパダリ閣下に全力で溺愛されてます 迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
592 / 638
連載

639 再びの魔人国 2

ティンバー率いる第二騎士団の探索隊編成が終わったことを聞いた翌日の朝に、俺とアークは獣人国から出立した。

久しぶりの徒歩での移動だが、いかんせん道中のんびりと行く用件ではないので俺達は休憩もそこそこに距離を稼ぎ、普通なら二泊する旅程を一泊で済ませて夕刻には魔人国に入国した。

まあ翔んで行けばもっと早いけど、目立つからね。

王都の高い塀に囲まれた門にいる門衛達は、少し前の迷宮騒動で俺達のことを知っていたようで口々に声をかけてきた。

「アルカンシエル殿、ノア殿、お久しぶりです」
「お変わりないようですね」
「また迷宮に潜りに来たんですか?」

などなど、気さくである。俺はちょっと人見知りが出たが、悪意がないことは分かるので、すぐに落ち着いた。

「そんなところだ。あとは魔王陛下がご懐妊だと聞いたので、様子が気になってな」

本当の理由を言うわけにもいかないので、アークが上手いこと嘘と本当を混ぜて応える。実際、迷宮も魔王陛下も気になるし。

門衛達は納得して仕事に戻る。

「街の様子は変わらないね」
「ああ。ただ、あの騒ぎ以降『箱庭の迷宮』に潜る冒険者が増えているらしい」
「ええ? あそこって特にすごい魔物がいるとか目立つ採取物とかなかった気がするけど」

あの騒動のときは迷宮の支配者ダンジョンマスターがいたから特殊だっただけで、そんなに冒険者が詰めかけるような要素はなかったと思う。
でも俺はすぐにダンダリアンに攫われてしまって、あんまりあの迷宮のことは分からないんだよね。

「もしかして、アレのせいで何か変化が……?」
「アーク?」
「あ、いや。まあ折を見て潜ってみるのもありかなと」
「そうだね、時間があれば潜りたいね!」

アークがちょっと思案してボソッと呟いたので聞き返したら、何でもないという感じで応えたので、俺は時間に余裕があれば潜りたいと告げる。

今回の目的はヘクセだからね。

「じゃあ、先に宿を探そう。できれば以前に泊まった『火の鳥』がいいけど、冒険者が増えているなら空いていないかな」
「うーん、空いてるといいけど、別にどこでもいいよ。アークと一緒ならね」

そう言って笑えば、アークは破顔した。

「そうだな。俺もノアがいれば安宿でも気にはしないが──そういうところは得てして壁が薄いからな」
「うん?」

壁が薄いと壊れやすいってことかな?

「いくら防音結界魔法を張っても、ノアとの睦みごとを万が一見られでもしたら──」
「──あっ!? そそ、そういうこと!?」

いやいや、いくら俺でもそんな宿に泊まったらシません! 何ならテント出して中でシます! いやそうじゃなくてぇー!

アークの言葉の意味に気づいて焦る俺を可愛い可愛いと撫でるアーク。そのあと俺を片腕に縦抱っこすると、夕刻の慌ただしい人並みの中をすいすいと進んでいく。

俺はフードをしっかり被ってアークにしがみ付くと、フードの下から辺りを見渡す。
ヘクセの顔が分からないから見ただけじゃ全然分からないし、だからってここで魔導具を使って探索もできないからなぁ。

ただラグ爺さんに似た魔力だって確信してからは、何となく気配というか魔力が分かるから、王都内にはいると思う。

アークにユラユラと揺られながら、俺はぼんやりとそう思った。



感想 1,584

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい

歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、 裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会 ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った 全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。 辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。

本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます

青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。 藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。 溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。 その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。 目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。 前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。 リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。 アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。 当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。 そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。 ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。 彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。 やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。 これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。