594 / 638
連載
641 おおよそ予想通り
冒険者ギルド内に足を踏み入れると、配置こそ変わらないが中の壁は新緑色に塗り替えられていて、木の温もりが優しい感じのカウンターテーブルや椅子などと合うオシャレなカフェのようになっている。
「お、おお……すごい。冒険者ギルドじゃないみたいだ」
その変わりように呆然とする俺だが、カウンターの受付場所やら解体場所やらには依頼を終えた冒険者達で溢れていて、内装とは真逆で酷く違和感がある。
でもよく見る荒くれ者の冒険者や大騒ぎをする粗野な冒険者などの姿はあまり見かけない。
「これも職員達の意見でか?」
「そうですね。最終決定はもちろんギルマスですが、おおむねこのような系統の色が希望されてました」
アークがラミエルに聞くと、そう返事が返ってきた。
「でも分かる気がする。緑とか青系って心を落ち着かせて冷静にさせる色らしいよ。反対に赤系は攻撃性が増すらしい。気合いを入れるのにはいいかもしれないけど興奮しちゃうと色々とね」
「……ああ、冒険者が興奮すると大変だよな」
ただでさえ攻撃的な冒険者が更にヤバいことになっちゃうもんね。それで言ったら前回のドピンクはやっぱりよくなかったんだな。
「あとはまあ、壁塗り替えの費用がそこそこかかってますので、破損などあったらギルマスが、ね」
「怒らせると怖いよね」
カフカの怖さはこれまでの前ギルマスへの制裁で周知されているからね。睨まれただけで動けなくなりそう。
まあカフカの場合は睨む前に先に手が出るだろうけど。
そんな感じでわりと品行方正な冒険者達の列を縫って進むラミエル。ラミエルも通りがけに避けられているから、こっちも怖い人認知されているんだろう。
ギルドのトップツーが舐められていなくてよかった。
ラミエルはカフカのいるギルマスの執務室に俺達を案内すると、ノックと同時に扉を開く。
「ラミエル、返事を待ってから開けなさい」
「どうせ誰が来たか分かってるんですからいいでしょう」
執務室に書類の山を築いているカフカが顔を上げて溜め息をつく。
「本音と立て前! ──こほん。ようこそいらっしゃいました、アルカンシエル殿にノア殿。どうぞソファにおかけください。本日はフェンリルのヴァン殿はご一緒じゃないので?」
「スラスラと立て前の口上ありがとう。いつも通りにしてくれ。ヴァンは後発隊にいる。あと数日で来るんじゃないかな」
カフカが書類の山の上に今しがた終わらせた書類を置くと、席を立ってこちらに歩いてきて俺達にソファを勧めた。ラミエルはお茶を淹れている。
アークはアルカイックスマイルでサラッと受け流し、普段通りにしろと突っ込む。『箱庭の迷宮』事件で散々素が出てたから、今更だよね。
「まあいい。それで? まどろっこしいのは面倒だし時間の無駄だ。単刀直入に聞く。俺達にどうしてほしいんだ」
カフカが渋い顔で聞いてくる。俺はラミエルが淹れてくれたお茶を飲み、アークはニヤリと笑った。
「どうせ二人で独自に調査しているんだろう? 俺達はその情報がほしい」
「うわ、マジかよ、やっぱりそうじゃん! この間の通信で匂わせといて、俺達に探らせやがって!」
──ん?
「匂わせ?」
「ああ、そうだよ。意味深に言うから、こっちが気になり勝手に情報収集してたんだよ。おかげであらかたの内容は分かった。それが目的だったろう!」
俺が首を傾げるとカフカはブスッとしながらそう言った。アークを見るとにっこり笑うだけで否定も肯定もしない。ということは合ってるんだろう。
やっぱりそういうところはアークが上手いよね。助かる。
俺はにこにこと笑い、ラミエルは貼り付けたような愛想笑いの読めない表情でお茶のお代わりを淹れてくれる。
ヴァンかルドヴィカがいれば『何このカオスな空間』とツッコミが入るだろう。だがあいにくここには誰もツッコミ役はいなかった。
「じゃあ、その情報とやらを教えてもらおうか」
アークは相変わらずニヤリと笑い、カフカは更に渋い顔になる。
「……そちらもきちんと情報を寄越せよ」
「もちろん」
こうして俺達はようやくお互いの情報を教え合うことになる。
※午前中に一話更新済みで、本日二度目の更新です。ご注意ください。
「お、おお……すごい。冒険者ギルドじゃないみたいだ」
その変わりように呆然とする俺だが、カウンターの受付場所やら解体場所やらには依頼を終えた冒険者達で溢れていて、内装とは真逆で酷く違和感がある。
でもよく見る荒くれ者の冒険者や大騒ぎをする粗野な冒険者などの姿はあまり見かけない。
「これも職員達の意見でか?」
「そうですね。最終決定はもちろんギルマスですが、おおむねこのような系統の色が希望されてました」
アークがラミエルに聞くと、そう返事が返ってきた。
「でも分かる気がする。緑とか青系って心を落ち着かせて冷静にさせる色らしいよ。反対に赤系は攻撃性が増すらしい。気合いを入れるのにはいいかもしれないけど興奮しちゃうと色々とね」
「……ああ、冒険者が興奮すると大変だよな」
ただでさえ攻撃的な冒険者が更にヤバいことになっちゃうもんね。それで言ったら前回のドピンクはやっぱりよくなかったんだな。
「あとはまあ、壁塗り替えの費用がそこそこかかってますので、破損などあったらギルマスが、ね」
「怒らせると怖いよね」
カフカの怖さはこれまでの前ギルマスへの制裁で周知されているからね。睨まれただけで動けなくなりそう。
まあカフカの場合は睨む前に先に手が出るだろうけど。
そんな感じでわりと品行方正な冒険者達の列を縫って進むラミエル。ラミエルも通りがけに避けられているから、こっちも怖い人認知されているんだろう。
ギルドのトップツーが舐められていなくてよかった。
ラミエルはカフカのいるギルマスの執務室に俺達を案内すると、ノックと同時に扉を開く。
「ラミエル、返事を待ってから開けなさい」
「どうせ誰が来たか分かってるんですからいいでしょう」
執務室に書類の山を築いているカフカが顔を上げて溜め息をつく。
「本音と立て前! ──こほん。ようこそいらっしゃいました、アルカンシエル殿にノア殿。どうぞソファにおかけください。本日はフェンリルのヴァン殿はご一緒じゃないので?」
「スラスラと立て前の口上ありがとう。いつも通りにしてくれ。ヴァンは後発隊にいる。あと数日で来るんじゃないかな」
カフカが書類の山の上に今しがた終わらせた書類を置くと、席を立ってこちらに歩いてきて俺達にソファを勧めた。ラミエルはお茶を淹れている。
アークはアルカイックスマイルでサラッと受け流し、普段通りにしろと突っ込む。『箱庭の迷宮』事件で散々素が出てたから、今更だよね。
「まあいい。それで? まどろっこしいのは面倒だし時間の無駄だ。単刀直入に聞く。俺達にどうしてほしいんだ」
カフカが渋い顔で聞いてくる。俺はラミエルが淹れてくれたお茶を飲み、アークはニヤリと笑った。
「どうせ二人で独自に調査しているんだろう? 俺達はその情報がほしい」
「うわ、マジかよ、やっぱりそうじゃん! この間の通信で匂わせといて、俺達に探らせやがって!」
──ん?
「匂わせ?」
「ああ、そうだよ。意味深に言うから、こっちが気になり勝手に情報収集してたんだよ。おかげであらかたの内容は分かった。それが目的だったろう!」
俺が首を傾げるとカフカはブスッとしながらそう言った。アークを見るとにっこり笑うだけで否定も肯定もしない。ということは合ってるんだろう。
やっぱりそういうところはアークが上手いよね。助かる。
俺はにこにこと笑い、ラミエルは貼り付けたような愛想笑いの読めない表情でお茶のお代わりを淹れてくれる。
ヴァンかルドヴィカがいれば『何このカオスな空間』とツッコミが入るだろう。だがあいにくここには誰もツッコミ役はいなかった。
「じゃあ、その情報とやらを教えてもらおうか」
アークは相変わらずニヤリと笑い、カフカは更に渋い顔になる。
「……そちらもきちんと情報を寄越せよ」
「もちろん」
こうして俺達はようやくお互いの情報を教え合うことになる。
※午前中に一話更新済みで、本日二度目の更新です。ご注意ください。
あなたにおすすめの小説
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。