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643 情報交換 2
「……おいおい、マジかよ」
カフカの驚いたような呆れたような、何とも言えない声が静まり返る執務室に響き渡る。
でも俺達だってカフカと同じ気持ちだ。まさか冒険者ギルドにいるとは思っていなかったんだから。
「ノア殿、さっき集中すればヘクセの魔力を感じとれると言ってましたよね。それ、今やってみてくれません?」
「あっ、そうか。うん、早速やってみる」
呆然とした俺にラミエルが声をかけてきて、ハッとする。そうだよ、こういうときこそコレの出番!
気合いを入れて集中すれば、やっぱり魔力の気配は一階のギルド内から読み取れた。
「やっぱり感じるよ。ねえ、まさかとは思うけど、ここのギルド職員なんてことは──」
「ねえよ! ここ最近雇った職員もいねえし、そもそもラミエルが裏でガッツリ身辺調査をしたヤツしか雇っていねえ」
カフカが被せるように叫ぶのでラミエルを見ると真顔で頷く。うん、裏でっていうのは気になるけど、職員ではなさそうだ。
あと考えられるのは──
「じゃあ、たまたま今依頼を持ち込んできた一般人か、もしくは冒険者本人?」
可能性としては魔導具製作などで使う素材を冒険者に採取依頼しに来たというのが一番高いけど、すでにヘクセが純粋な魔導具師かどうか分からないから判断がつかない。
どうしようか。
こうなったら一階まで下りるか? それを皆に相談すれば──
「とりあえず階段付近の踊り場で一階が見渡せるから、そこからこっそり確認しよう。下手に接触して逃げられてもマズい」
カフカがそう提案してきたので、俺は頷く。アークもラミエルも同意見のようだから、それじゃあと皆に認識阻害の魔法をかけて執務室から移動する。
「ああ、こういうときに影の人達の隠密スキルがあればなぁ」
そうすれば完璧に裏で動けるのに。ないものねだりなのは分かっているけど、欲しい。
「やっぱり魔導具で再現したい」
俺が真剣な顔で呟いているとカフカがアークにボソッと何かを聞いている。
「……隠密スキルが欲しいって、アーク殿、しつこすぎてノア殿に距離を置かれそうなのか?」
「違うわ!」
それに対してアークが即座に否定しているが、何を話しているんだろう?
「何事もほどほどの距離を保つことが夫夫円満の秘訣らしいぞ」
何かを囁いてドヤ顔のカフカにアークがニヤリと笑い、小さい声で言い返す。
「アンタだってしつこいんじゃないのか? たまにラミエルが腹を壊すほど注いでいるらしいじゃないか」
「アレはっ、ラミエルが許容してくれるから──」
今度は逆転したようで、カフカが焦っている。一体何を話しているんだ? 俺はヘクセの魔力に集中していてよく聞こえないんだけど。
「……彼らは放っておいて大丈夫ですよ。それよりも早く行きましょう。対象に移動されたら面倒ですし」
「そうだね。じゃあ静かに行こうか」
ラミエルが何でもないという顔でそう言うので、俺は何かを言い合っている二人を放ってラミエルと先に階段付近の踊り場に移動する。
そこは五メートルほどの幅のテラスのようになっていて欄干があり、雑談用なのか小さめの椅子とテーブルが置いてある。欄干から下をのぞき込めば一階が見渡せるようになっているようだ。
テラスの真下はギルド職員達の仕事のスペースらしい。
いつも執務室に直行してたから気にしてなかったけど、前からこんなのあったっけ?
「以前はありませんでしたよ。これは最近増設したもので、何かあればすぐに状況把握ができるので重宝している場所なんですよ」
「確かに便利だね」
俺の言いたいことに気づいたラミエルが教えてくれた。うん、全体が見渡せていいね。
俺は認識阻害魔法を使ってはいるが、気持ち的にコソコソしながら一階を見た。
探知した魔力で位置が分かっているのでその場所を確認すれば、解体の受付に佇む真っ黒いローブ姿の人物が見えた。
「……あれだ、あの人。認識阻害魔法を付与した真っ黒いローブでフードを被っている、俺くらいの背の人。ラミエル、知ってる?」
俺は後ろにいるラミエルに聞いてみた。するといつの間にか来ていたカフカの声で返事があった。
「彼は最近魔人国の冒険者ギルドに戻ってきた冒険者だな。ギルドタグに登録されている名前は『ヴィン』。確か魔導師でAランク冒険者だったはずだ」
「ええ、だいぶ前にこの冒険者ギルドで登録をしています。しばらく姿を見せていませんでしたが、最近ふらっと来ては依頼を受けたり個人で採集をしていますね」
カフカのあとにラミエルが情報を補足してくれる。それを聞いた俺とアークは顔を見合わせて頷いた。
これは来て早々にビンゴかもしれない。
カフカの驚いたような呆れたような、何とも言えない声が静まり返る執務室に響き渡る。
でも俺達だってカフカと同じ気持ちだ。まさか冒険者ギルドにいるとは思っていなかったんだから。
「ノア殿、さっき集中すればヘクセの魔力を感じとれると言ってましたよね。それ、今やってみてくれません?」
「あっ、そうか。うん、早速やってみる」
呆然とした俺にラミエルが声をかけてきて、ハッとする。そうだよ、こういうときこそコレの出番!
気合いを入れて集中すれば、やっぱり魔力の気配は一階のギルド内から読み取れた。
「やっぱり感じるよ。ねえ、まさかとは思うけど、ここのギルド職員なんてことは──」
「ねえよ! ここ最近雇った職員もいねえし、そもそもラミエルが裏でガッツリ身辺調査をしたヤツしか雇っていねえ」
カフカが被せるように叫ぶのでラミエルを見ると真顔で頷く。うん、裏でっていうのは気になるけど、職員ではなさそうだ。
あと考えられるのは──
「じゃあ、たまたま今依頼を持ち込んできた一般人か、もしくは冒険者本人?」
可能性としては魔導具製作などで使う素材を冒険者に採取依頼しに来たというのが一番高いけど、すでにヘクセが純粋な魔導具師かどうか分からないから判断がつかない。
どうしようか。
こうなったら一階まで下りるか? それを皆に相談すれば──
「とりあえず階段付近の踊り場で一階が見渡せるから、そこからこっそり確認しよう。下手に接触して逃げられてもマズい」
カフカがそう提案してきたので、俺は頷く。アークもラミエルも同意見のようだから、それじゃあと皆に認識阻害の魔法をかけて執務室から移動する。
「ああ、こういうときに影の人達の隠密スキルがあればなぁ」
そうすれば完璧に裏で動けるのに。ないものねだりなのは分かっているけど、欲しい。
「やっぱり魔導具で再現したい」
俺が真剣な顔で呟いているとカフカがアークにボソッと何かを聞いている。
「……隠密スキルが欲しいって、アーク殿、しつこすぎてノア殿に距離を置かれそうなのか?」
「違うわ!」
それに対してアークが即座に否定しているが、何を話しているんだろう?
「何事もほどほどの距離を保つことが夫夫円満の秘訣らしいぞ」
何かを囁いてドヤ顔のカフカにアークがニヤリと笑い、小さい声で言い返す。
「アンタだってしつこいんじゃないのか? たまにラミエルが腹を壊すほど注いでいるらしいじゃないか」
「アレはっ、ラミエルが許容してくれるから──」
今度は逆転したようで、カフカが焦っている。一体何を話しているんだ? 俺はヘクセの魔力に集中していてよく聞こえないんだけど。
「……彼らは放っておいて大丈夫ですよ。それよりも早く行きましょう。対象に移動されたら面倒ですし」
「そうだね。じゃあ静かに行こうか」
ラミエルが何でもないという顔でそう言うので、俺は何かを言い合っている二人を放ってラミエルと先に階段付近の踊り場に移動する。
そこは五メートルほどの幅のテラスのようになっていて欄干があり、雑談用なのか小さめの椅子とテーブルが置いてある。欄干から下をのぞき込めば一階が見渡せるようになっているようだ。
テラスの真下はギルド職員達の仕事のスペースらしい。
いつも執務室に直行してたから気にしてなかったけど、前からこんなのあったっけ?
「以前はありませんでしたよ。これは最近増設したもので、何かあればすぐに状況把握ができるので重宝している場所なんですよ」
「確かに便利だね」
俺の言いたいことに気づいたラミエルが教えてくれた。うん、全体が見渡せていいね。
俺は認識阻害魔法を使ってはいるが、気持ち的にコソコソしながら一階を見た。
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「……あれだ、あの人。認識阻害魔法を付与した真っ黒いローブでフードを被っている、俺くらいの背の人。ラミエル、知ってる?」
俺は後ろにいるラミエルに聞いてみた。するといつの間にか来ていたカフカの声で返事があった。
「彼は最近魔人国の冒険者ギルドに戻ってきた冒険者だな。ギルドタグに登録されている名前は『ヴィン』。確か魔導師でAランク冒険者だったはずだ」
「ええ、だいぶ前にこの冒険者ギルドで登録をしています。しばらく姿を見せていませんでしたが、最近ふらっと来ては依頼を受けたり個人で採集をしていますね」
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これは来て早々にビンゴかもしれない。
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