拾われた俺、最強のスパダリ閣下に全力で溺愛されてます 迷い子の月下美人

エウラ

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652 予想外の展開

俺は思わず無言になって凝視する。

声をかけてきたヴィンはローブのフードをしっかりと被っているうえに付与されている認識阻害魔法のせいで、至近距離なのに俺達にも素顔が分からない。すごいな。

「あの、相席……」

俺がジッと見ていることに戸惑い、再び声をかけるヴィン。
俺はハッとしてヴィンから視線を外してアークを見る。アークは俺の言いたいことを察して、ちらりと周りを見渡すと頷いた。

「構わないぜ。他の席は埋まってるようだしな」

アークの言葉に俺も慌てて周りを見れば、なるほど、あそこでスイーツを買ってここで食べるつもりの人達ですでにいっぱいだった。

「あ、食べるのに夢中で気づかなかった。あの、相席どうぞ」
「ありがとう。俺はヴィン。冒険者だよ。ごめんね、二人でラブラブなところにお邪魔しちゃって」

ヴィンは軽く自己紹介をしてアークとは反対側の俺の右隣に座る。どうやらさっきの「あーん」のあたりから見られていたようだ。俺はヴィンの言葉にちょっと動揺しながらも自己紹介をする。

「ラブッ……コホン。俺はノア。彼はアルカンシエル。俺達も冒険者だけど、番い同士だしラブラブに見えても仕方ないかも」

俺がそう言えばフードの中でクスッと笑うようなヴィンの声が聞こえて、思わず顔を向ける。するとヴィンは慌てたように言った。

「あ、ごめん、変な意味じゃなくて。見たところ竜人の旦那さんみたいだから、番い至上主義で大丈夫だなと思って」
「えーと、何が大丈夫なの?」

ヴィンの言葉の意味がよく分からなくて、俺は首を傾げる。するとヴィンはずっと被っているフードを何でもないようにずらしてその顔を俺達に見せた。

そこには認識阻害魔法を解除したヴィンの素顔があった。
藍色の緩いくせ毛の髪の後ろを三つ編みにしている。アーモンド型の大きめの瞳はアイスブルーの色だ。身長はさっき見た感じ一七〇センチメートルあるかなってくらいで細い身体。

ちょっときつめで、でも可愛い顔だ。でも何であんなに頑なに認識阻害しているのに、俺達に素顔を見せてくれたんだ?

「あの、顔を見せて大丈夫なの?」

俺はあまりにも気になって思わずそう聞いていた。するとキョトンとしたあと、にっこり笑った。

「二人にはね。だって竜人の番い同士なんでしょ? それなら二人とも俺に秋波を送らないって分かるから」
「それはもちろん、そうだけど」

なんせ、お互いがお互いしか愛していないからね。これだけは断言できる。
そう思って即答すればヴィンはうんうんと頷いた。
それからその可愛い顔からは想像できない口調で話し出した。俺は思わずこのテーブルの周辺に防音の魔法を張る。

「俺さ、自惚れって言われるかもしれないけどこの容姿のせいで変態とか変質者とか痴漢とか! 昔からウンザリするほど寄ってきて不愉快なんだよ」
「あー、確かにの輩には好かれそうな見た目だな」

ヴィンの叫びにアークが苦笑する。でもの輩って何?

「そうなんだよ! 細くて童顔ぽいから合法ショタだの、変な性癖のヤツらとかストーカーとか!」
「そ、そうなんだ? 大変だね。だからすごい認識阻害魔法を付与したローブを常に身に着けているんだね」

その手の輩ってそういう……苦労してるんだね。俺は避けられる方だったけど、変な輩に群がられるのも大変なんだね。
俺がそう同情すると、ヴィンは我が意を得たりという感じで俺に詰め寄ってきた。

「分かる!? 分かってくれる!? まあ認識阻害は他にも理由があるんだけど。でもこのローブのすごさが分かるなんて嬉しい!」

ちょっと勢いがすごくて引いちゃったけど、あれ? 何かこの子……

「うん、分かるよ。それ、ヴィンが魔法付与したんでしょう。俺、参考にしたいって思ってさ」
「えっ、そこまで? 俺もノアの付与魔法とか錬金術とかすげえって思ってて! あの、そういう話、してもいいか?」

俺との会話で目がキラキラしているヴィンを見て確信する。

──ヴィンは魔導師だけど錬金術師でもあって、そして俺と同類だ。錬金術とかの話になると周りが見えなくなるやつ。少し前のリンクスと同じ反応だ。

ちらりとアークを見ると、ちょっと頭を抱えて渋い顔をしていた。
そしてヴィンとのやりとりが長かったおかげでジェラートはすっかり溶けてしまったのだった。


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