615 / 641
連載
658 ティンバー達がやって来た 1
自業自得の散々な朝を迎えた。いやもう昼過ぎだった。
当たり前のように世話を焼かれアークに食事を給餌されたあと、ふと思い出す。
「そういえばそろそろヴァンやティンバー達が魔人国につく頃じゃない?」
俺達が魔人国に着いてから今日で四日目だから、ゆっくりと歩いてもいい加減到着するだろう。
まあ、それはヴァンがチョロチョロと寄り道をしなければなんだけど。ヴァンはよく『獲物ー! 肉ー!』と狩りに行くからなあ。
でも今回はティンバーが一緒だし、手綱を握ってくれていると思いたい。
「ああ、それなんだが、今朝ラミエルが宿に来て教えてくれた。距離的に今日の午後三時過ぎには到着しそうだと」
「そうなの? 来たの全然気づかなかった。そういえばラミエルは影があれば結構な距離があっても移動できるから、ティンバー達のところにも潜れるんだね」
特殊な夢魔だし、それでいろんな場所に潜入して情報収集しているらしい。今回もその情報収集の腕を見込んで協力要請したんだしね。
「よく考えたらラミエルって偉いよね。こんなスキル持ってたら普通、暗殺とか機密情報で脅すとかできるよね。でもせいぜい俺達を驚かせたり、こういうときの情報収集くらいでしょ」
裏黒いことにいくらでも役立つスキルなのに、それをしないんだもの。ちょっといたずらが過ぎるけど根はいい人だよね。
「あーうん、そうだな。まああれはカフカ第一だから他には無関心なだけなんじゃないか」
「うん、何か言った?」
アークの呟きが小さくてよく聞こえなかったから聞き返したら、アークは首を振った。
「何でもない。カフカとラミエルが番い同士で、俺達の側でよかったなって」
「そうだね。俺もあの二人のことは好きだよ」
カフカも何だかんだと文句を言いつつ俺達に協力してくれて、真面目な性格なんだと思う。
それにリンデン父さんやラグ爺さんと臨時のパーティーを組んだりするくらいだもの。それだけでいい人だと思う。
「そういえば父さんやラグ爺さんのことを聞きそびれていたな」
父さん達のことを思い出していて、ふとカフカ達に聞きそびれていたことも思い出した。
「ああ、あのときはヘクセがヴィンらしいと分かって混乱したからな。まああとで情報共有のときにでも聞けばいいだろう」
「うん」
とりあえずティンバー達が来たら一緒に話を聞こう。
そうして昼食後にまったりと過ごしてから、ティンバー達が来そうな時間に冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに入るとギルド職員の一人が近づいてきたので、出入りの邪魔にならないようにそちらに寄って行く。
「ノア様、アルカンシエル様、こんにちは。すみませんがギルマスが執務室でお二人をお待ちしているので向かっていただけますか」
ちょっと申し訳なさそうにそう告げる職員に俺達は微笑んで応える。
「こんにちは。どうせ行くつもりだったので大丈夫です。ありがとう」
「わざわざありがとうな」
「いえ、とんでもないです。あの、ヴァン様関係かと……」
お礼を言うと、照れながらもヴァンのことを教えてくれた。なるほど、先に到着していたようだ。
職員と別れて俺達はカフカの執務室に向かう。
「ヴァン、大人しくしているといいんだけど」
「ティンバーに任せておけば大丈夫だろう。それか食べ物を与えておけば静かだ」
「確かに言えてる」
執務室に入ると、すでにカフカと仔狼姿のヴァンを膝に乗せたティンバーがソファに座っていて、ラミエルはカフカの後ろに、第四小隊長のアオはティンバーの後ろに立っている。
あと名前は知らないけど、前に獣人国の王都で偽装魔導具探索時に見かけた騎士団員の二人もアオに並んでティンバーの後ろに立っている。
「こんにちは」
「邪魔するぞ」
俺達は軽く挨拶をする。カフカも座ったまま軽く手を上げるに留める。堅苦しい挨拶だの立て前だのは面倒だから気楽に接してもらう。
「ああ、呼び出そうと思っていたがそちらから来てくれて助かる。ちょうど彼らが到着したので、情報共有をしたいと思ってな」
勝手知ったる他人の家のごとく、遠慮なく空いている二人掛けのソファに座るアークと、その膝の上に座る俺。
もちろん誰も突っ込まない──
「え、竜人ってアレがデフォルトなの?」
「膝抱っこにそこからの給餌とか当たり前じゃん」
「へええ、俺、初めて見たわ」
いや、ここに突っ込む人がいた。名前を知らない騎士団員二人の会話だ。
こういうの見るの初めてなんですかね。
「カフカもラミエルを膝抱っこしてあげたらどうだ?」
アークがニヤリと笑ってそう言うと、カフカは反射的に返した。
「そりゃ、いつでもしてやりたいが仕事中はな──じゃなくてだな!」
「えっ、するの!? されるんじゃなくて!?」
「おい、馬鹿!」
それに騎士団員の片方の人が思わずという感じで声を上げて、もう片方の人が突っ込む。
うん、見た目詐欺だよね。こう見えてもカフカが夫だから。でもラミエルの膝に乗っているときもあるから、二人にとってはどっちでもいいんじゃない?
それよりもその二人の紹介をしてほしいな。
当たり前のように世話を焼かれアークに食事を給餌されたあと、ふと思い出す。
「そういえばそろそろヴァンやティンバー達が魔人国につく頃じゃない?」
俺達が魔人国に着いてから今日で四日目だから、ゆっくりと歩いてもいい加減到着するだろう。
まあ、それはヴァンがチョロチョロと寄り道をしなければなんだけど。ヴァンはよく『獲物ー! 肉ー!』と狩りに行くからなあ。
でも今回はティンバーが一緒だし、手綱を握ってくれていると思いたい。
「ああ、それなんだが、今朝ラミエルが宿に来て教えてくれた。距離的に今日の午後三時過ぎには到着しそうだと」
「そうなの? 来たの全然気づかなかった。そういえばラミエルは影があれば結構な距離があっても移動できるから、ティンバー達のところにも潜れるんだね」
特殊な夢魔だし、それでいろんな場所に潜入して情報収集しているらしい。今回もその情報収集の腕を見込んで協力要請したんだしね。
「よく考えたらラミエルって偉いよね。こんなスキル持ってたら普通、暗殺とか機密情報で脅すとかできるよね。でもせいぜい俺達を驚かせたり、こういうときの情報収集くらいでしょ」
裏黒いことにいくらでも役立つスキルなのに、それをしないんだもの。ちょっといたずらが過ぎるけど根はいい人だよね。
「あーうん、そうだな。まああれはカフカ第一だから他には無関心なだけなんじゃないか」
「うん、何か言った?」
アークの呟きが小さくてよく聞こえなかったから聞き返したら、アークは首を振った。
「何でもない。カフカとラミエルが番い同士で、俺達の側でよかったなって」
「そうだね。俺もあの二人のことは好きだよ」
カフカも何だかんだと文句を言いつつ俺達に協力してくれて、真面目な性格なんだと思う。
それにリンデン父さんやラグ爺さんと臨時のパーティーを組んだりするくらいだもの。それだけでいい人だと思う。
「そういえば父さんやラグ爺さんのことを聞きそびれていたな」
父さん達のことを思い出していて、ふとカフカ達に聞きそびれていたことも思い出した。
「ああ、あのときはヘクセがヴィンらしいと分かって混乱したからな。まああとで情報共有のときにでも聞けばいいだろう」
「うん」
とりあえずティンバー達が来たら一緒に話を聞こう。
そうして昼食後にまったりと過ごしてから、ティンバー達が来そうな時間に冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに入るとギルド職員の一人が近づいてきたので、出入りの邪魔にならないようにそちらに寄って行く。
「ノア様、アルカンシエル様、こんにちは。すみませんがギルマスが執務室でお二人をお待ちしているので向かっていただけますか」
ちょっと申し訳なさそうにそう告げる職員に俺達は微笑んで応える。
「こんにちは。どうせ行くつもりだったので大丈夫です。ありがとう」
「わざわざありがとうな」
「いえ、とんでもないです。あの、ヴァン様関係かと……」
お礼を言うと、照れながらもヴァンのことを教えてくれた。なるほど、先に到着していたようだ。
職員と別れて俺達はカフカの執務室に向かう。
「ヴァン、大人しくしているといいんだけど」
「ティンバーに任せておけば大丈夫だろう。それか食べ物を与えておけば静かだ」
「確かに言えてる」
執務室に入ると、すでにカフカと仔狼姿のヴァンを膝に乗せたティンバーがソファに座っていて、ラミエルはカフカの後ろに、第四小隊長のアオはティンバーの後ろに立っている。
あと名前は知らないけど、前に獣人国の王都で偽装魔導具探索時に見かけた騎士団員の二人もアオに並んでティンバーの後ろに立っている。
「こんにちは」
「邪魔するぞ」
俺達は軽く挨拶をする。カフカも座ったまま軽く手を上げるに留める。堅苦しい挨拶だの立て前だのは面倒だから気楽に接してもらう。
「ああ、呼び出そうと思っていたがそちらから来てくれて助かる。ちょうど彼らが到着したので、情報共有をしたいと思ってな」
勝手知ったる他人の家のごとく、遠慮なく空いている二人掛けのソファに座るアークと、その膝の上に座る俺。
もちろん誰も突っ込まない──
「え、竜人ってアレがデフォルトなの?」
「膝抱っこにそこからの給餌とか当たり前じゃん」
「へええ、俺、初めて見たわ」
いや、ここに突っ込む人がいた。名前を知らない騎士団員二人の会話だ。
こういうの見るの初めてなんですかね。
「カフカもラミエルを膝抱っこしてあげたらどうだ?」
アークがニヤリと笑ってそう言うと、カフカは反射的に返した。
「そりゃ、いつでもしてやりたいが仕事中はな──じゃなくてだな!」
「えっ、するの!? されるんじゃなくて!?」
「おい、馬鹿!」
それに騎士団員の片方の人が思わずという感じで声を上げて、もう片方の人が突っ込む。
うん、見た目詐欺だよね。こう見えてもカフカが夫だから。でもラミエルの膝に乗っているときもあるから、二人にとってはどっちでもいいんじゃない?
それよりもその二人の紹介をしてほしいな。
あなたにおすすめの小説
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
家に帰ったら、妻は冷たくなっていた。突然シングルファザーになった勇者パーティーの治癒師は家族を修復したい
八朔バニラ
ファンタジー
勇者パーティーに所属し、魔王討伐した治癒師(ヒーラー)のゼノスは街の人々の歓声に包まれながら、3年ぶりに家に帰った。家族が出迎えてくれると思ったが、誰も出迎えてくれない。ゼノスは不満に思いながら家に入ると、妻の身体は冷たくなっていた。15歳の長男ルミナスはゼノスの代わりに一家の柱として妹を守り抜き、父に深い拒絶のこもった瞳を向けていた。そして、8歳の長女ミリアは父の顔も忘れていた。
ゼノスは決意する。英雄の肩書きを捨て、一人の不器用な父親として、バラバラになった家族の心を繋ぎ合わせることを。
これは世界最強の治癒師が家族を修復する物語である。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
外れ伯爵家の三女、領地で無双する
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。
だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。
そして思い出す――
《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。
市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。
食料も、装備も、資金も――すべてが無限。
最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。
これは――
ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。