627 / 641
連載
閑話 ノアズアーク隊は見た!
本日の穏やかな昼下がり。
サブギルマスのラミエル様から密かに我々冒険者ギルド職員一同にお達しがあった。
「本日、おそらく午後三時頃に獣人国から冒険者に扮した第二騎士団長とその部下の騎士達三人、合計四人プラス一頭が入国します」
「あの、ラミエル様! 騎士達は冒険者に扮しているとのことですが、冒険者っぽくしているだけですか? あとプラス一頭とは何でしょう?」
すかさず職員Dが質問をする。するとラミエル様は和やかな顔で答えた。
「いえ、実際に冒険者登録をしていて団長と部下の一人はAランク、他二人はBランクですね。登録名はこちらです。それぞれ確認しておいてください。それと一頭とはヴァン殿のことです」
「分かりました。──えっ? そういえば今回はノア様達とご一緒ではなかったですね。その騎士様達はノア様達のお知り合いですか?」
ラミエル様が近くの職員Eに書類を手渡しながら話を続ける。
「ええ。彼らはノア殿達の関係者ですが、ノア殿達から特に通達がないうちは通常の冒険者と同じ対応をしてください」
「はい」
「貴方達はここの優秀なギルド職員ですので分かっているでしょうが、くれぐれも彼らを本名や役職名では呼ばないように」
「分かりました」
こうしてラミエル様は他にいくつかの注意事項を伝えると職務に戻っていった。
「とりあえずその人達が冒険者ギルドに来るのは決定事項のようですし、書類を確認して来訪を待ちましょう」
「そうですね」
「どんな人達だろうね」
「ちょっと楽しみ」
そんなことを言いながら、各自、仕事をこなして予定時刻の午後三時頃。
静かに冒険者ギルドの扉が開いた。
僕達職員やギルド内にいた冒険者達が一斉に注目する。
そこには肩から胸元に大きな袋のような布を下げた眩しいほどの金色の髪と瞳の狼獣人とふわふわの白髪に金色の垂れ目の瞳の羊獣人、黒髪に薄い水色の瞳の狼獣人、薄い茶髪にくりくりの黒い瞳のフェネック獣人が立っていた。
「……彼らがラミエル様の言っていた人達?」
「らしいね。何か狼に羊にフェネックって意外な組み合わせというか……あれ、ヴァン様は?」
「そういえばいない──?」
僕達がそう囁いていると、金狼獣人のお腹の布が何やらもぞもぞと動き出し──
『ぷはぁ……おん? 着いたのか?』
「はい、お目覚めですか。ここは冒険者ギルドです」
……いた。ちょっと予想外のところにいた。あれ、ヴァン様を収納してたんだ。
仔狼サイズとはいえ、よもやそんなところにいるとは誰も思うまい。
職員達は皆、そう思っただろう。
「あれさあ、普通に子連れの狼獣人に見えるよね」
「幼子を連れて冒険者稼業で頑張って養う、的な」
「何かすごく優しくていいパパに見える。理想の父親」
「いや、あれは母親のほうだろう」
「ていうか、マーキングすごくない? あれ、ヴァン様の匂いだよね」
「あの布、どうなっているんだろう。僕も子供の抱っこ用にすごく欲しい。どこで手に入れたのか聞いてみたい」
仕事中なのでものすごく小さく話す。まあ皆で一斉に喋るのであまりこっそりとはなっていなかったけど。
その一風変わった集団は、受付窓口に気づいてこちらに向かってきた。僕は慌てて対応する。
「いらっしゃいませ。どうされましたか」
「すまないが、こちらに数日前にノア殿とアルカンシエル殿が来たと思うのだが──」
「は──いっ!?」
「ええ、いらっしゃってますよ」
「──っと、貴方は?」
金の狼獣人さんの問いかけに答えかけて、彼らの背後ににゅっと現れてそう答えたラミエル様に驚いて、僕は変な声を出してしまった。毎回、心臓に悪いよ。
それなのに金の狼獣人さん達はさほど驚いていない。さすがは事前の情報通りの騎士様達だ。落ち着いている。
振り向いた金の狼獣人さんにラミエル様がにっこり笑う。
「失礼しました。当ギルドのサブギルドマスターのラミエルと申します。執務室にてギルドマスターのカフカがお待ちですのでこちらへどうぞ」
「ああはい、分かりました」
軽く頷いてラミエル様のあとに付いていく金の狼獣人さん達を見送っていると、彼の胸元の布からヴァン様の声が聞こえた。
『相変わらずいろんな輩を驚かせて遊んでいるのか』
「失礼な。効率的に移動しているだけですよ」
『嘘をつけ』
ヴァン様、その通りですよ。もっと言ってやってください。
「ふふっ、だってあなた方はちっとも驚いてくれないんですもの」
「いえ、あのちょっとは驚きましたよ」
「それは嬉しいです」
あまり驚いていなさそうな金の狼獣人さんの言葉に笑い、それでも嬉しそうに言うラミエル様。
冒険者でも驚く人がいるんだから、一般人の僕達職員が驚くのは当然。だからほどほどにしてほしい。
それさえなければ前のギルマスと比べたら遥かに働きやすくなったんだけど、それ以前からのイタズラだから直らないんだろうな。
「ラミエル様は本当に神出鬼没だよね」
「でもそれですごい情報を集めてくるらしいからあまり文句も言えないんだけど」
「ホントそれな。『ノアズアーク隊』の情報よりも早いし詳しい。悔しいけどデキるサブギルマス」
「でも僕達の情報網だって負けないぞ。各国の冒険者ギルドと繋がっているし!」
何よりもノア様とアルカンシエル様を見守り愛でることがこの隊本来の主旨だから。
「久しぶりの魔人国滞在なんだから、しっかり見守るぞ!」
「おー!」
それから少ししてノア様達がいらして、ギルマスの執務室に籠もることしばらく。
ノア様達と金の狼獣人さん達は和気あいあいと冒険者ギルドをあとにした。
「何か楽しそうだったね、ノア様」
「いいことでもあったのかな?」
「悪いことが大半でしたけど」
「うひいっ!?」
「ララララミエル様!?」
ぽそぽそと小声で話す僕達の背後からラミエル様の声が聞こえて、皆して飛び上がる。
「やっぱりこれくらい反応がほしいですよね」
「止めてくださいよ! 心臓がいくつあっても足りませんてば!」
「ふふふ」
あ、これは絶対に止めないな。
「ああ、あなた達にはもう一仕事お願いしようと思います。このクズ共の竜王国での状況を確認してください」
不意に真顔になったラミエル様から渡された一枚の書類を見る。
そこには大まかだが、ノア様の敵となる輩の名が連なっていた。
「『ノアズアーク隊』ならばすぐにできますよね。お願いします」
「もちろんです。お任せください!」
「頼みますよ」
再び胡散臭い笑顔になったラミエル様に即答する僕達。
ノア様達の敵は僕達の敵。速やかに伝達の上、迅速に、しかし正確に情報を集めますとも。
僕達は通常業務の合間に忙しく動き出すのだった。
※職員は特に名前がないのでアルファベットを使用しています。
サブギルマスのラミエル様から密かに我々冒険者ギルド職員一同にお達しがあった。
「本日、おそらく午後三時頃に獣人国から冒険者に扮した第二騎士団長とその部下の騎士達三人、合計四人プラス一頭が入国します」
「あの、ラミエル様! 騎士達は冒険者に扮しているとのことですが、冒険者っぽくしているだけですか? あとプラス一頭とは何でしょう?」
すかさず職員Dが質問をする。するとラミエル様は和やかな顔で答えた。
「いえ、実際に冒険者登録をしていて団長と部下の一人はAランク、他二人はBランクですね。登録名はこちらです。それぞれ確認しておいてください。それと一頭とはヴァン殿のことです」
「分かりました。──えっ? そういえば今回はノア様達とご一緒ではなかったですね。その騎士様達はノア様達のお知り合いですか?」
ラミエル様が近くの職員Eに書類を手渡しながら話を続ける。
「ええ。彼らはノア殿達の関係者ですが、ノア殿達から特に通達がないうちは通常の冒険者と同じ対応をしてください」
「はい」
「貴方達はここの優秀なギルド職員ですので分かっているでしょうが、くれぐれも彼らを本名や役職名では呼ばないように」
「分かりました」
こうしてラミエル様は他にいくつかの注意事項を伝えると職務に戻っていった。
「とりあえずその人達が冒険者ギルドに来るのは決定事項のようですし、書類を確認して来訪を待ちましょう」
「そうですね」
「どんな人達だろうね」
「ちょっと楽しみ」
そんなことを言いながら、各自、仕事をこなして予定時刻の午後三時頃。
静かに冒険者ギルドの扉が開いた。
僕達職員やギルド内にいた冒険者達が一斉に注目する。
そこには肩から胸元に大きな袋のような布を下げた眩しいほどの金色の髪と瞳の狼獣人とふわふわの白髪に金色の垂れ目の瞳の羊獣人、黒髪に薄い水色の瞳の狼獣人、薄い茶髪にくりくりの黒い瞳のフェネック獣人が立っていた。
「……彼らがラミエル様の言っていた人達?」
「らしいね。何か狼に羊にフェネックって意外な組み合わせというか……あれ、ヴァン様は?」
「そういえばいない──?」
僕達がそう囁いていると、金狼獣人のお腹の布が何やらもぞもぞと動き出し──
『ぷはぁ……おん? 着いたのか?』
「はい、お目覚めですか。ここは冒険者ギルドです」
……いた。ちょっと予想外のところにいた。あれ、ヴァン様を収納してたんだ。
仔狼サイズとはいえ、よもやそんなところにいるとは誰も思うまい。
職員達は皆、そう思っただろう。
「あれさあ、普通に子連れの狼獣人に見えるよね」
「幼子を連れて冒険者稼業で頑張って養う、的な」
「何かすごく優しくていいパパに見える。理想の父親」
「いや、あれは母親のほうだろう」
「ていうか、マーキングすごくない? あれ、ヴァン様の匂いだよね」
「あの布、どうなっているんだろう。僕も子供の抱っこ用にすごく欲しい。どこで手に入れたのか聞いてみたい」
仕事中なのでものすごく小さく話す。まあ皆で一斉に喋るのであまりこっそりとはなっていなかったけど。
その一風変わった集団は、受付窓口に気づいてこちらに向かってきた。僕は慌てて対応する。
「いらっしゃいませ。どうされましたか」
「すまないが、こちらに数日前にノア殿とアルカンシエル殿が来たと思うのだが──」
「は──いっ!?」
「ええ、いらっしゃってますよ」
「──っと、貴方は?」
金の狼獣人さんの問いかけに答えかけて、彼らの背後ににゅっと現れてそう答えたラミエル様に驚いて、僕は変な声を出してしまった。毎回、心臓に悪いよ。
それなのに金の狼獣人さん達はさほど驚いていない。さすがは事前の情報通りの騎士様達だ。落ち着いている。
振り向いた金の狼獣人さんにラミエル様がにっこり笑う。
「失礼しました。当ギルドのサブギルドマスターのラミエルと申します。執務室にてギルドマスターのカフカがお待ちですのでこちらへどうぞ」
「ああはい、分かりました」
軽く頷いてラミエル様のあとに付いていく金の狼獣人さん達を見送っていると、彼の胸元の布からヴァン様の声が聞こえた。
『相変わらずいろんな輩を驚かせて遊んでいるのか』
「失礼な。効率的に移動しているだけですよ」
『嘘をつけ』
ヴァン様、その通りですよ。もっと言ってやってください。
「ふふっ、だってあなた方はちっとも驚いてくれないんですもの」
「いえ、あのちょっとは驚きましたよ」
「それは嬉しいです」
あまり驚いていなさそうな金の狼獣人さんの言葉に笑い、それでも嬉しそうに言うラミエル様。
冒険者でも驚く人がいるんだから、一般人の僕達職員が驚くのは当然。だからほどほどにしてほしい。
それさえなければ前のギルマスと比べたら遥かに働きやすくなったんだけど、それ以前からのイタズラだから直らないんだろうな。
「ラミエル様は本当に神出鬼没だよね」
「でもそれですごい情報を集めてくるらしいからあまり文句も言えないんだけど」
「ホントそれな。『ノアズアーク隊』の情報よりも早いし詳しい。悔しいけどデキるサブギルマス」
「でも僕達の情報網だって負けないぞ。各国の冒険者ギルドと繋がっているし!」
何よりもノア様とアルカンシエル様を見守り愛でることがこの隊本来の主旨だから。
「久しぶりの魔人国滞在なんだから、しっかり見守るぞ!」
「おー!」
それから少ししてノア様達がいらして、ギルマスの執務室に籠もることしばらく。
ノア様達と金の狼獣人さん達は和気あいあいと冒険者ギルドをあとにした。
「何か楽しそうだったね、ノア様」
「いいことでもあったのかな?」
「悪いことが大半でしたけど」
「うひいっ!?」
「ララララミエル様!?」
ぽそぽそと小声で話す僕達の背後からラミエル様の声が聞こえて、皆して飛び上がる。
「やっぱりこれくらい反応がほしいですよね」
「止めてくださいよ! 心臓がいくつあっても足りませんてば!」
「ふふふ」
あ、これは絶対に止めないな。
「ああ、あなた達にはもう一仕事お願いしようと思います。このクズ共の竜王国での状況を確認してください」
不意に真顔になったラミエル様から渡された一枚の書類を見る。
そこには大まかだが、ノア様の敵となる輩の名が連なっていた。
「『ノアズアーク隊』ならばすぐにできますよね。お願いします」
「もちろんです。お任せください!」
「頼みますよ」
再び胡散臭い笑顔になったラミエル様に即答する僕達。
ノア様達の敵は僕達の敵。速やかに伝達の上、迅速に、しかし正確に情報を集めますとも。
僕達は通常業務の合間に忙しく動き出すのだった。
※職員は特に名前がないのでアルファベットを使用しています。
あなたにおすすめの小説
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
家に帰ったら、妻は冷たくなっていた。突然シングルファザーになった勇者パーティーの治癒師は家族を修復したい
八朔バニラ
ファンタジー
勇者パーティーに所属し、魔王討伐した治癒師(ヒーラー)のゼノスは街の人々の歓声に包まれながら、3年ぶりに家に帰った。家族が出迎えてくれると思ったが、誰も出迎えてくれない。ゼノスは不満に思いながら家に入ると、妻の身体は冷たくなっていた。15歳の長男ルミナスはゼノスの代わりに一家の柱として妹を守り抜き、父に深い拒絶のこもった瞳を向けていた。そして、8歳の長女ミリアは父の顔も忘れていた。
ゼノスは決意する。英雄の肩書きを捨て、一人の不器用な父親として、バラバラになった家族の心を繋ぎ合わせることを。
これは世界最強の治癒師が家族を修復する物語である。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
外れ伯爵家の三女、領地で無双する
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。
だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。
そして思い出す――
《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。
市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。
食料も、装備も、資金も――すべてが無限。
最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。
これは――
ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。