623 / 641
連載
665 報告中休み
「……いやこれ、不憫すぎるだろ」
思わず漏らしたのだろう、アルフレートの呟きが静まり返った執務室に響いた。
全員同じことを思っただろう。
あと俺が一番疑問に思ったことがあって、おそらく聞いても教えてはもらえないと思うけど聞かずにはいられなかったので言う。
「この報告書、かなり過去なのに実際に見聞きしたように詳細なんだけど、どうやって調べたの?」
調査した本人であるラミエルに直球で尋ねると、ラミエルは真顔からいつもの胡散臭い笑顔になった。
あ、これはまた『秘密です』のパターンかな。まあ別に俺はそれでもいいけど──
「様々なツテと私のスキルですね」
「え、まさかの返答」
俺が思っていたのとちょっと違ってて驚いた。
まじまじとラミエルを見つめていると、カフカがラミエルを見たあと小さく溜息をつく。
「ラミエルの情報収集に差し支えるので詳しくは言えないが、そういう能力があるということだ」
「それを心に留めおいて、皆様もゆめゆめ油断なさらぬように」
「ひえっ」
カフカの言葉にラミエルがにっこり笑う。アルフレートが小さく悲鳴を上げてゼルダにしがみ付くのを見て、満足そうなラミエル。
アークがカフカに聞いた。
「いいのか、そんな重要なことを俺達に漏らして」
「これくらいはな。何でも全部隠していては信頼は得られない。それにこれを聞いたら俺達を簡単に裏切れないだろう?」
「確かに、手のひらを返したら報復がヤバそうだ。まあ俺達はあんた達が敵に回らないなら手は出さないから安心しろ」
カフカの言葉にアークも納得する。もちろん裏切るとかそんな気持ちは微塵もないけど、生きていれば何が起こるか分からないからね。
俺がうんうんと頷いていると、カフカが渋い顔で言った。
「俺達から裏切るとかあり得ねえよ。ノア殿を敵に回したら俺達どころか国一つ軽く滅びるわ」
「一つで済めばいいですけどねぇ」
何故かラミエルも遠い目をしている。
アークも溜息をついた。
「えーと、箱庭の迷宮の大暴れのことなら、そこまで被害はなかったよね?」
そんな爆弾みたいに思われるのが心外で、俺がそう確認すれば──
「いや、精霊王が魔力を注いだからあれで済んだわけで。迷宮内は迷宮の核が無事なら原状回復するから破壊し尽くしても外に影響はないからな」
『外の世界でアレをやったら回復できん。ノアが本気を出したら世界が滅ぶ』
「ええ? 滅ぼさないよ。そうなったら大好きな迷宮探索も調薬も錬金術もできなくなっちゃうじゃん」
ヴァンの言葉に思わずムッとしてそう言い返すと、アークが噴き出す。
「ぶふっ……そんな理由で滅ぼさないのか。ノアは相変わらずだな」
「平和ですね」
「ノア殿がノア殿である限り、世界は存続の危機に陥らなさそうで嬉しいよ」
ラミエルが呆れたように呟き、カフカも苦笑しながらそう言った。
「じゃあ、ここからはヴィンの近況報告となります。よろしいですか?」
ほのぼのとした空気が流れて皆が笑いに包まれたあと、そう言ってラミエルが仕切り直す。
俺達は再び気を引き締めるのだった。
思わず漏らしたのだろう、アルフレートの呟きが静まり返った執務室に響いた。
全員同じことを思っただろう。
あと俺が一番疑問に思ったことがあって、おそらく聞いても教えてはもらえないと思うけど聞かずにはいられなかったので言う。
「この報告書、かなり過去なのに実際に見聞きしたように詳細なんだけど、どうやって調べたの?」
調査した本人であるラミエルに直球で尋ねると、ラミエルは真顔からいつもの胡散臭い笑顔になった。
あ、これはまた『秘密です』のパターンかな。まあ別に俺はそれでもいいけど──
「様々なツテと私のスキルですね」
「え、まさかの返答」
俺が思っていたのとちょっと違ってて驚いた。
まじまじとラミエルを見つめていると、カフカがラミエルを見たあと小さく溜息をつく。
「ラミエルの情報収集に差し支えるので詳しくは言えないが、そういう能力があるということだ」
「それを心に留めおいて、皆様もゆめゆめ油断なさらぬように」
「ひえっ」
カフカの言葉にラミエルがにっこり笑う。アルフレートが小さく悲鳴を上げてゼルダにしがみ付くのを見て、満足そうなラミエル。
アークがカフカに聞いた。
「いいのか、そんな重要なことを俺達に漏らして」
「これくらいはな。何でも全部隠していては信頼は得られない。それにこれを聞いたら俺達を簡単に裏切れないだろう?」
「確かに、手のひらを返したら報復がヤバそうだ。まあ俺達はあんた達が敵に回らないなら手は出さないから安心しろ」
カフカの言葉にアークも納得する。もちろん裏切るとかそんな気持ちは微塵もないけど、生きていれば何が起こるか分からないからね。
俺がうんうんと頷いていると、カフカが渋い顔で言った。
「俺達から裏切るとかあり得ねえよ。ノア殿を敵に回したら俺達どころか国一つ軽く滅びるわ」
「一つで済めばいいですけどねぇ」
何故かラミエルも遠い目をしている。
アークも溜息をついた。
「えーと、箱庭の迷宮の大暴れのことなら、そこまで被害はなかったよね?」
そんな爆弾みたいに思われるのが心外で、俺がそう確認すれば──
「いや、精霊王が魔力を注いだからあれで済んだわけで。迷宮内は迷宮の核が無事なら原状回復するから破壊し尽くしても外に影響はないからな」
『外の世界でアレをやったら回復できん。ノアが本気を出したら世界が滅ぶ』
「ええ? 滅ぼさないよ。そうなったら大好きな迷宮探索も調薬も錬金術もできなくなっちゃうじゃん」
ヴァンの言葉に思わずムッとしてそう言い返すと、アークが噴き出す。
「ぶふっ……そんな理由で滅ぼさないのか。ノアは相変わらずだな」
「平和ですね」
「ノア殿がノア殿である限り、世界は存続の危機に陥らなさそうで嬉しいよ」
ラミエルが呆れたように呟き、カフカも苦笑しながらそう言った。
「じゃあ、ここからはヴィンの近況報告となります。よろしいですか?」
ほのぼのとした空気が流れて皆が笑いに包まれたあと、そう言ってラミエルが仕切り直す。
俺達は再び気を引き締めるのだった。
あなたにおすすめの小説
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
家に帰ったら、妻は冷たくなっていた。突然シングルファザーになった勇者パーティーの治癒師は家族を修復したい
八朔バニラ
ファンタジー
勇者パーティーに所属し、魔王討伐した治癒師(ヒーラー)のゼノスは街の人々の歓声に包まれながら、3年ぶりに家に帰った。家族が出迎えてくれると思ったが、誰も出迎えてくれない。ゼノスは不満に思いながら家に入ると、妻の身体は冷たくなっていた。15歳の長男ルミナスはゼノスの代わりに一家の柱として妹を守り抜き、父に深い拒絶のこもった瞳を向けていた。そして、8歳の長女ミリアは父の顔も忘れていた。
ゼノスは決意する。英雄の肩書きを捨て、一人の不器用な父親として、バラバラになった家族の心を繋ぎ合わせることを。
これは世界最強の治癒師が家族を修復する物語である。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
外れ伯爵家の三女、領地で無双する
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。
だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。
そして思い出す――
《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。
市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。
食料も、装備も、資金も――すべてが無限。
最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。
これは――
ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。