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連載
667 ヴィンの近況報告 2
いや、実際には殺れないけどさ。たぶん殺気と威圧で失神させる自信はある。
そんな皆が殺る気満々の中、一応冷静っぽいラミエルが続ける。
「殺るかどうかはさておいて、ともかく母親の所在も突き止めて脅迫したわけです」
「でも母親のセレンさんには確かケンタウロス獣人の人がついているんじゃなかったですか? 今の恋人なんですよね?」
「そうだ、さっきの報告書にあったその人が守ってくれているんじゃないの?」
アルフレートと俺が疑問に思ったことに答えてくれたのはアークだ。
「ケンタウロス獣人もかなり力が強い種族だが、相手に混血とはいえ竜人の血が入っていれば数倍以上は力量に差が出る。よくて半死、最悪は死ぬだろう」
言われてみれば確かに俺もアークみたいに力は強いな。これも兎人よりも竜人の特性が強いせいなんだろうけど。
「ということは、たとえケンタウロス獣人が何十人と束になっても蹴散らされちゃうってことか」
「うわあ……馬鹿に権力とか力を持たせちゃいけないやつだ、これ」
いろいろと想像したのか、アルフレートとゼルダが身体を震わせる。
この力は本当にクズに持たせちゃいけない。
「まあ、そういう訳で渋々やらされたようですが、言うことを聞いたから見逃してくれるなんてことはないですよね」
「当然だな」
ラミエルの言葉にアークも即座に応える。そりゃあクズはクズだよね。でもそれだと……
「もしかして、お母さんは──」
俺は最悪を想像してしまったが──
「いや、無事だそうだ。冒険者のヴィンが素性を隠して元父や破落戸達を蹴散らしたらしい。彼は夢魔の特性が強いが竜人の血も混じっているから力は強い」
「そもそもヴィンは長年冒険者として鍛えていますからね。その点、クズは竜人の混血とはいえ戦闘に関しては素人同然ですし。本当に宝の持ち腐れですね」
よかった。カフカとラミエルの言葉に俺はホッとした。
「救出したあと、母親は速やかにケンタウロス獣人の恋人とともに恋人の集落に身を隠しました。彼が認識阻害魔法や結界魔法を付与した魔導具を二人に持たせて送り出したということです」
「ああ、彼の魔導具師としての腕は相当なものだから、ひと安心だね。俺のお墨付きだよ」
俺がそう言えばアークも頷いてくれた。
「ノアとヴィンは魔導具や錬金術でかなり盛り上がっていたものな」
「え、どういうことですか? ノア殿、ヴィンとすでに面識があるのですか?」
今まで静かに話を聞いていたティンバーが戸惑うように俺に聞いてきて、ハッとする。
「あ、そうだった。実は先日、ヴィンと友達になったんだ」
「……は?」
「え?」
「調査対象者と友達?」
「いや、意外すぎるでしょう」
俺がにこにこ顔でそう言えば、ティンバー、アオ、アルフレート、ゼルダの順でそんな反応が返ってきた。
「ええと、ギルマス達はご存じだったので?」
ティンバーがカフカ達に聞くと、二人は頷いた。
「最初にラミエルから報告を受けたときは何をやっているんだと頭を抱えたよ」
「ヘクセヴィンテルのほうから接触しに行ってますからね。最初はいろいろとバレたのかと警戒しました」
あの時のことはラミエルも影からしっかりと確認していたようで、俺達が伝える前に知っていたもんね。
「でも結局、ただ単に錬金術の話で盛り上がりたかっただけなんだよね。たぶん俺が大伯父の義息子って知らないんだと思う」
いろいろと話していたけど、ラグ爺さんと俺との関係性に気づいている様子はなかった。
アークがふと思いだしたように呟く。
「そういえば、ヘクセヴィンテルは今、二一八歳なのか?」
「報告書を見るとそうみたい。俺よりも少し年下だね」
見た目は可愛いし実年齢も俺より年下だけど、二〇〇年寝てた俺よりも人生経験はかなり上だよね。その大半が過酷過ぎるけど。
「だとすると、ヘクセヴィンテルが生まれたときには大賢者はすでに引退して姿をくらましている。さらに六年前に亡くなっているから彼の中で情報更新はされていないんだろう」
「そもそも俺自身がラグ爺さん=大賢者だということを知ったのがアークと出会ってからだし。今思うとラグ爺さんも実弟との確執によるトラブルを避けていたのかも」
「あり得るな」
今までの報告で、それは確信に近いものがあると思う。
俺もラグ爺さんに愛され、護られていたんだな。
そんな皆が殺る気満々の中、一応冷静っぽいラミエルが続ける。
「殺るかどうかはさておいて、ともかく母親の所在も突き止めて脅迫したわけです」
「でも母親のセレンさんには確かケンタウロス獣人の人がついているんじゃなかったですか? 今の恋人なんですよね?」
「そうだ、さっきの報告書にあったその人が守ってくれているんじゃないの?」
アルフレートと俺が疑問に思ったことに答えてくれたのはアークだ。
「ケンタウロス獣人もかなり力が強い種族だが、相手に混血とはいえ竜人の血が入っていれば数倍以上は力量に差が出る。よくて半死、最悪は死ぬだろう」
言われてみれば確かに俺もアークみたいに力は強いな。これも兎人よりも竜人の特性が強いせいなんだろうけど。
「ということは、たとえケンタウロス獣人が何十人と束になっても蹴散らされちゃうってことか」
「うわあ……馬鹿に権力とか力を持たせちゃいけないやつだ、これ」
いろいろと想像したのか、アルフレートとゼルダが身体を震わせる。
この力は本当にクズに持たせちゃいけない。
「まあ、そういう訳で渋々やらされたようですが、言うことを聞いたから見逃してくれるなんてことはないですよね」
「当然だな」
ラミエルの言葉にアークも即座に応える。そりゃあクズはクズだよね。でもそれだと……
「もしかして、お母さんは──」
俺は最悪を想像してしまったが──
「いや、無事だそうだ。冒険者のヴィンが素性を隠して元父や破落戸達を蹴散らしたらしい。彼は夢魔の特性が強いが竜人の血も混じっているから力は強い」
「そもそもヴィンは長年冒険者として鍛えていますからね。その点、クズは竜人の混血とはいえ戦闘に関しては素人同然ですし。本当に宝の持ち腐れですね」
よかった。カフカとラミエルの言葉に俺はホッとした。
「救出したあと、母親は速やかにケンタウロス獣人の恋人とともに恋人の集落に身を隠しました。彼が認識阻害魔法や結界魔法を付与した魔導具を二人に持たせて送り出したということです」
「ああ、彼の魔導具師としての腕は相当なものだから、ひと安心だね。俺のお墨付きだよ」
俺がそう言えばアークも頷いてくれた。
「ノアとヴィンは魔導具や錬金術でかなり盛り上がっていたものな」
「え、どういうことですか? ノア殿、ヴィンとすでに面識があるのですか?」
今まで静かに話を聞いていたティンバーが戸惑うように俺に聞いてきて、ハッとする。
「あ、そうだった。実は先日、ヴィンと友達になったんだ」
「……は?」
「え?」
「調査対象者と友達?」
「いや、意外すぎるでしょう」
俺がにこにこ顔でそう言えば、ティンバー、アオ、アルフレート、ゼルダの順でそんな反応が返ってきた。
「ええと、ギルマス達はご存じだったので?」
ティンバーがカフカ達に聞くと、二人は頷いた。
「最初にラミエルから報告を受けたときは何をやっているんだと頭を抱えたよ」
「ヘクセヴィンテルのほうから接触しに行ってますからね。最初はいろいろとバレたのかと警戒しました」
あの時のことはラミエルも影からしっかりと確認していたようで、俺達が伝える前に知っていたもんね。
「でも結局、ただ単に錬金術の話で盛り上がりたかっただけなんだよね。たぶん俺が大伯父の義息子って知らないんだと思う」
いろいろと話していたけど、ラグ爺さんと俺との関係性に気づいている様子はなかった。
アークがふと思いだしたように呟く。
「そういえば、ヘクセヴィンテルは今、二一八歳なのか?」
「報告書を見るとそうみたい。俺よりも少し年下だね」
見た目は可愛いし実年齢も俺より年下だけど、二〇〇年寝てた俺よりも人生経験はかなり上だよね。その大半が過酷過ぎるけど。
「だとすると、ヘクセヴィンテルが生まれたときには大賢者はすでに引退して姿をくらましている。さらに六年前に亡くなっているから彼の中で情報更新はされていないんだろう」
「そもそも俺自身がラグ爺さん=大賢者だということを知ったのがアークと出会ってからだし。今思うとラグ爺さんも実弟との確執によるトラブルを避けていたのかも」
「あり得るな」
今までの報告で、それは確信に近いものがあると思う。
俺もラグ爺さんに愛され、護られていたんだな。
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