拾われた俺、最強のスパダリ閣下に全力で溺愛されてます 迷い子の月下美人

エウラ

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668 ヴィンの近況報告 3

「とりあえずは俺とラグ爺さんの関係は秘密にしておいたほうがいいかな。もちろんヴィンのほうから話を振られたら素直に答えるつもりだけど」
「その方がいいだろう。それにノアも忖度なしの友達でいたいもんな」

俺の考えを伝えると、アークが俺の頭を撫でながらそう言ってくれた。
何となくヴィンはそんなことをしないと思うけど、大賢者の養い子なんて色眼鏡で見られるのは悲しいから。

「えーと、そういう訳でヴィンとは気軽に連絡を取れる状況でもある。だからもしどこかに隠れたり逃げたりしてもすぐに見つけられるから安心してね」

偶然とはいえ、仲よくなれて超ラッキー。

「うーん、何だろう、いつの間にかこんなに囲い込まれていて、逃げられなくなっている状況を知らないヴィンが可哀想というか」
「そうだねぇ」
「俺達にとってはいいことなんだけどな」

ゼルダとアルフレートとアオが何かぼやいているけど聞き流す。

「それでヴィンに偽装魔導具を作らせた黒幕も分かっているんでしょ?」
「もちろん、抜かりなく。ふふふ、この私にかかればチョロいものです」

ラミエルにズバッと聞けば、とてもいい笑顔で話し出した。うん、ラミエル怖い。

「ヘクセヴィンテルを探してここまで来たときに知り合ったとある貴族から持ちかけられた取引のようです」
「この頃には正体不明だが腕のいい魔導具師として名が知れていたから、ヘクセという名で気づいたらしい」

うん、確かに魔導具師でヘクセと聞けば、本名と素性を知っている人からすればバレやすいよね。
ヘクセ本人もまさかここまで二〇〇年も追いかけてくるなんて思わなかったんだろうし、仕方ない。

「それでその貴族から記録媒体魔導具の粗悪品を作ることを依頼されて、落ちぶれていた元父は金欲しさに飛びついたわけです」
「ちなみにその貴族のことはすでに魔王陛下に、いや宰相閣下に報告済みだから俺達は関わらなくていい」
「そういうことなら、了解」

粗悪品の件はそっちで好きに処理してもらおう。俺達はヘクセヴィンテルを捕まえに来ただけだし。

それにしても、この流れでいくとヘクセヴィンテルの元父も悪事に加担したことになって、いろいろと問題が出てくるんじゃ?

「もしかしてヴィンはそこまで考えて行動していたのかな」
「うん? どうしたノア」

俺の呟きにアークが反応したので、俺は自分が今思ったことを話した。

「なるほどな。もしかすると元父達への復讐も絡んでいるかも、と言いたいんだな」
「うん。すでに商会はだいぶ落ちぶれているようだけど、ここで再起不能にしてやれ、みたいな?」
「あー、先日の様子だけでは何とも言えないな。確かに時々翳りのある目をしてはいたが……」

そうなんだよね。時々ふと昏い目をしていたけど、根は素直だし、悪巧みをするようには見えなかったから。だからこれは俺の思い過ごしかもしれないけど。

「何にしても、こんなこと知っちゃったら俄然ヴィンの味方をしたくなった」

俺の言葉に全員が頷き、これからの各自の動きを確認し合う。

「俺とノアはこのまま普段通りに過ごしていれば自然と接触できるから、特に行動を起こすつもりはない」

アークがそう言うとティンバー達が了承の意味で頷く。

「私達は普通の冒険者として動きます。その中でヴィンと接触できればいいのですが、こればかりはどうなるか分かりませんね」
「うん、無理に動かなくても大丈夫だと思うよ。はすでに無理があると思うから」
「え、何故ですか?」

ティンバーの言葉に俺とアークとカフカとラミエルは微妙な顔になる。
ティンバーは意味が分からずに首を傾げ、アオとアルフレートとゼルダはすぐに察したようで渋い顔になった。

俺はティンバーの問いに答える。

「いやだって、スリングにヴァンを抱えて入国したんだよね。そのまま街中を歩いて冒険者ギルドに来たんだよね」
「そうですね」

ここまで言っても気づかないのはある意味大物なのか、ただの天然なのか。

「あのね、冒険者の間ではヴァンは俺達の従魔って知れ渡っている。そんなヴァンを腹に抱えて街中を練り歩いていれば、俺達の関係者だとバレる。いやもうバレているだろう」
「はあ……あっ、そういうことですか」

ようやく合点がいったティンバーがポンと手を打つ。

「つまり、もう目立ちまくっているのでノア殿達の知り合いだということは隠さずに、でもなるべく邪魔にならないように動きます」
「いや別に邪魔じゃないけど。そういう訳で逆に俺達と一緒に行動していても疑問に思われないからいいんじゃないかなってこと」

だからヴィンと一緒にいるときにティンバー達が近くにいても不自然じゃないから、逆にやりやすいと思う。

「そういう訳で、できれば本人のほうからこちらの手に落ちてきてほしいので、それを第一の目標に頑張ろう!」
「おー!」

俺のかけ声に勢いよく応えたのはアルフレートだけで、他は微笑ましげに見つめながら頷いていた。

子供っぽい?
べっ、別にいいでしょ。アルフレートという仲間もいるし。

そしてようやく情報共有が終わって冒険者ギルドを出たときには、すでに日も暮れて黄昏時。

「ティン、えっとティグ達は宿は取った?」
「いえ、いやまだだ。これからなんだが、どこかにいいところはあるか?」

そうそう、さっき執務室を出る前に冒険者として行動するのだから冒険者登録の名前で敬語なし、呼び捨てしようと決めたんだ。
ちょっと慣れるまで名前間違えそうになるから気をつけないと。
ティンバーも敬語を使いそうになって、慌てて言い直す。

「俺達の泊まっている宿って、部屋空いてるかな」

できれば同じ宿だと連絡も取りやすいし。

「とりあえず行ってみようぜ。無理そうなら別の宿を紹介してもらおう。そのあとは皆で『ファームの焔』に夕飯食べに行くか」
「さんせーい!」
「どんな店なんで、いや店なんだ?」
「それは行ってからのお楽しみ!」

まだまだギクシャクした言葉遣いながら和気あいあいに街中を歩く俺達は、かなりの注目を浴びていた。
普段ならアークの影に隠れて震えているけど、たくさんの仲間がいるからか平気みたい。

魔人国って陽気な性格の人が多いようで、それに感化されているのかもしれない。
魔導具師ヘクセの捕縛という目的がある中で不謹慎かもしれないけど、俺はちょっと気分が高揚していた。

こうやって大勢で出かけるのって楽しいな。


    
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