632 / 641
連載
672 箱庭の迷宮に行こう 2
宿でティンバー達と合流したあと、冒険者ギルドに向かう道すがら雑談をする。
「そういえば食材って、迷宮に行かなくてもたくさんあるだろう。どうしてヴィンを迷宮探索に誘ったんだ」
アークはそこに疑問を持っていたらしい。なので俺はあのときに思ったことを話す。
「あれね、ヴィンが少しでも俺達に気を遣わないようにってこともあるけど、ヴィンの冒険者としての腕を見たかったんだ」
俺がそう言うと、皆も報告書の内容を思い出す。
「ソロでAランクなんだよな」
「そう。攻撃魔法は不得手、武器はメイスで撲殺メイン。解体場で見せてもらった魔物は的確に仕留められてるから、どういう戦闘かなと気になっててさ」
「確か竜人も混じってるんだよな。ということはやっぱり腕力がすごいのかな」
アルフレートの言葉に俺は頷く。
「そうだと思うよ。俺ほどじゃなくてもカフカくらいのギャップはありそう」
細くて力持ち。初見じゃまず分からない。
「あー、あのギルマスね。本当に見た目詐欺だよね。口も悪いし中身は男前だし」
「だからこそ飄々としているサブギルマスを抑えられるんだろうな」
「いい番い同士だよね」
そんな話をしていると冒険者ギルドに到着。
中に足を踏み入れれば、たくさんの冒険者達が依頼を受けようとひしめき合っていた。もう少し時間を空ければよかったかな。
ギルド内をぐるっと見渡せば、食堂兼酒場の方に気配を消したヴィンが所在なさげに立っているのが見えたので俺達は人混みを避けて近づいていく。
ヴィンもこちらに気づいて雰囲気が明るくなった。
「ヴィン、おはよう。待った?」
「ううん、さっき来たところ。この時間ってあんまり来ないから人に酔っちゃって」
ああ、普段は自分の採集くらいだから混み合う時間帯には来ないんだろう。依頼を受けるときくらいしか寄りつかないんだろうな。
「その気持ちは分かる。俺もずっとボッチで引き篭もりで人見知りだったから、今もたまに震えてアークの影に隠れちゃうもん」
未だに、見ず知らずの大勢の人の中にいるのは少しの時間でも辛い。知人だったら平気だけど。
「えっ、ノアって引き篭もりだったの?」
ヴィンは俺のことをあまり知らないようで、すごく驚いた。何かこんな反応、新鮮だな。
「そうだよ。養父が亡くなってからアークと出会って番いになって、それからはこうして旅をしてるけど」
「あの、養父って……ノアは──いや、昨日今日に知り合ったばかりでプライベートなことに突っ込んじゃダメだよな。ごめん」
俺の養父発言で俺の素性が気になったのか、ヴィンがちょっと聞きづらそうに言ってからハッとして止めた。
俺としては全然気にしないけど、ヴィンも詮索されることで嫌な思いをしてきたんだろう。そう謝ってきた。
「いや全然平気だけど。あのね、俺、拾われっ子だったんだ。だから両親の顔は全然知らないの。でも養父がちゃんと愛してくれたから今の俺がある」
本当にラグ爺さんからはたくさんのことを教わったし、愛してくれたから。
「そっか、幸せだったんだな」
「うん。だから別に気を遣わなくて大丈夫だから。答えられることなら話すよ。無理なときはちゃんと言うし」
「分かった。俺も話せることはノアにちゃんと言うからな」
「ありがとう」
俺の答えに納得したのか、気持ちを切り替えたヴィンはそう言った。
「よし、早速迷宮探索に──と言いたいところだけど、ギギルル兄弟は?」
「そういや、まだ来ていないな。まあ約束は八時だし、まだ五分前だし」
そういえば見ていないな、と呟けばアークも気がついたように周りを見回した。そこにギルドの出入り口で騒ぐ声が聞こえる。
「お兄! 急いで」
「はあっ、ギリギリセーフ!」
ついで扉を押し開く音が聞こえる。
うん、ギギルル兄弟だ。
「おう、待たせたな!」
「遅くなってごめん。収穫がギリギリで」
「朝からお疲れ様。……やっぱりゴーレム増やした方がいいかな」
うちに二人借りてるし、お店も農園も人手不足だよね。
それなら今日は迷宮で錬金用の素材も集めよう。
アークが俺の呟きに気づいて小さな溜息を漏らしたけど、気にしない。
そうだ、ゴーレム錬成のときにヴィンも呼んだら喜ぶかな。
迷宮探索を前にしてすでにウキウキの俺だった。
「そういえば食材って、迷宮に行かなくてもたくさんあるだろう。どうしてヴィンを迷宮探索に誘ったんだ」
アークはそこに疑問を持っていたらしい。なので俺はあのときに思ったことを話す。
「あれね、ヴィンが少しでも俺達に気を遣わないようにってこともあるけど、ヴィンの冒険者としての腕を見たかったんだ」
俺がそう言うと、皆も報告書の内容を思い出す。
「ソロでAランクなんだよな」
「そう。攻撃魔法は不得手、武器はメイスで撲殺メイン。解体場で見せてもらった魔物は的確に仕留められてるから、どういう戦闘かなと気になっててさ」
「確か竜人も混じってるんだよな。ということはやっぱり腕力がすごいのかな」
アルフレートの言葉に俺は頷く。
「そうだと思うよ。俺ほどじゃなくてもカフカくらいのギャップはありそう」
細くて力持ち。初見じゃまず分からない。
「あー、あのギルマスね。本当に見た目詐欺だよね。口も悪いし中身は男前だし」
「だからこそ飄々としているサブギルマスを抑えられるんだろうな」
「いい番い同士だよね」
そんな話をしていると冒険者ギルドに到着。
中に足を踏み入れれば、たくさんの冒険者達が依頼を受けようとひしめき合っていた。もう少し時間を空ければよかったかな。
ギルド内をぐるっと見渡せば、食堂兼酒場の方に気配を消したヴィンが所在なさげに立っているのが見えたので俺達は人混みを避けて近づいていく。
ヴィンもこちらに気づいて雰囲気が明るくなった。
「ヴィン、おはよう。待った?」
「ううん、さっき来たところ。この時間ってあんまり来ないから人に酔っちゃって」
ああ、普段は自分の採集くらいだから混み合う時間帯には来ないんだろう。依頼を受けるときくらいしか寄りつかないんだろうな。
「その気持ちは分かる。俺もずっとボッチで引き篭もりで人見知りだったから、今もたまに震えてアークの影に隠れちゃうもん」
未だに、見ず知らずの大勢の人の中にいるのは少しの時間でも辛い。知人だったら平気だけど。
「えっ、ノアって引き篭もりだったの?」
ヴィンは俺のことをあまり知らないようで、すごく驚いた。何かこんな反応、新鮮だな。
「そうだよ。養父が亡くなってからアークと出会って番いになって、それからはこうして旅をしてるけど」
「あの、養父って……ノアは──いや、昨日今日に知り合ったばかりでプライベートなことに突っ込んじゃダメだよな。ごめん」
俺の養父発言で俺の素性が気になったのか、ヴィンがちょっと聞きづらそうに言ってからハッとして止めた。
俺としては全然気にしないけど、ヴィンも詮索されることで嫌な思いをしてきたんだろう。そう謝ってきた。
「いや全然平気だけど。あのね、俺、拾われっ子だったんだ。だから両親の顔は全然知らないの。でも養父がちゃんと愛してくれたから今の俺がある」
本当にラグ爺さんからはたくさんのことを教わったし、愛してくれたから。
「そっか、幸せだったんだな」
「うん。だから別に気を遣わなくて大丈夫だから。答えられることなら話すよ。無理なときはちゃんと言うし」
「分かった。俺も話せることはノアにちゃんと言うからな」
「ありがとう」
俺の答えに納得したのか、気持ちを切り替えたヴィンはそう言った。
「よし、早速迷宮探索に──と言いたいところだけど、ギギルル兄弟は?」
「そういや、まだ来ていないな。まあ約束は八時だし、まだ五分前だし」
そういえば見ていないな、と呟けばアークも気がついたように周りを見回した。そこにギルドの出入り口で騒ぐ声が聞こえる。
「お兄! 急いで」
「はあっ、ギリギリセーフ!」
ついで扉を押し開く音が聞こえる。
うん、ギギルル兄弟だ。
「おう、待たせたな!」
「遅くなってごめん。収穫がギリギリで」
「朝からお疲れ様。……やっぱりゴーレム増やした方がいいかな」
うちに二人借りてるし、お店も農園も人手不足だよね。
それなら今日は迷宮で錬金用の素材も集めよう。
アークが俺の呟きに気づいて小さな溜息を漏らしたけど、気にしない。
そうだ、ゴーレム錬成のときにヴィンも呼んだら喜ぶかな。
迷宮探索を前にしてすでにウキウキの俺だった。
あなたにおすすめの小説
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
家に帰ったら、妻は冷たくなっていた。突然シングルファザーになった勇者パーティーの治癒師は家族を修復したい
八朔バニラ
ファンタジー
勇者パーティーに所属し、魔王討伐した治癒師(ヒーラー)のゼノスは街の人々の歓声に包まれながら、3年ぶりに家に帰った。家族が出迎えてくれると思ったが、誰も出迎えてくれない。ゼノスは不満に思いながら家に入ると、妻の身体は冷たくなっていた。15歳の長男ルミナスはゼノスの代わりに一家の柱として妹を守り抜き、父に深い拒絶のこもった瞳を向けていた。そして、8歳の長女ミリアは父の顔も忘れていた。
ゼノスは決意する。英雄の肩書きを捨て、一人の不器用な父親として、バラバラになった家族の心を繋ぎ合わせることを。
これは世界最強の治癒師が家族を修復する物語である。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
外れ伯爵家の三女、領地で無双する
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。
だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。
そして思い出す――
《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。
市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。
食料も、装備も、資金も――すべてが無限。
最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。
これは――
ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。