拾われた俺、最強のスパダリ閣下に全力で溺愛されてます 迷い子の月下美人

エウラ

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154 その頃のヴァルハラ大公家


新しい年が明けた。

今頃は辺境地ノーザンクロスで新年を迎えているだろうアルカンシエルとその番いのノアに思いを馳せる。


ひと月ほど前、要塞都市ライズからルドヴィカがもたらしたアルカンシエルとノアの情報に狂喜乱舞したのは記憶に新しい。

出来ればさっさと連れ帰ってきて紹介して貰い、ヴァルハラ家で新年を一緒に迎えたかったが・・・。

蜜月を2人で過ごしたいアルカンシエルの気持ちも痛いほど分かる。


こんなに早く、息子達の中で一番最初に番いに出逢えるとは夢にも思わなかった。
だがしかし、冒険者となって世界中を旅している事を考えれば当然と言えるのかも知れない。

上の2人は貴族として活動をしているから、アルカンシエルよりも行動範囲が狭い。
出逢いは必然的に少ないだろう。

だがまあ、先が長い竜人だからそこまで焦ってはいないが。
番いに対する執着はまだまだ理解出来ないだろうな・・・。

「やっぱりアークは帰って来なかったね」

アンジェリクが苦笑しながら言った。
その顔はやはり私と同じく、少し残念そうで、だが蜜月では仕方ないという諦めの顔だった。

「まあねえ。予想は出来たけど・・・あの子がねえ・・・」

普段は無表情で淡々としていて、他人には貴族らしいアルカイックスマイルで感情を読ませない。
・・・・・・私達が構い過ぎたせいでもあるが。


アークが生まれたのは上の2人が立て続けに生まれてからおよそ200年後。
子が出来にくい竜人だから3人目はかなり珍しかった。

年の差も相まって、末っ子のアルカンシエルを溺愛し、猫可愛がりした。
小さい頃は愛くるしく愛想も良かったが、上の兄達も加わって構い倒していると、思春期に入る頃、ついに我慢の限界だったようでキレられた。

『いい加減にして下さい!』
『鬱陶しい!』
『一人にして!!』

そうして、乳兄弟のルドヴィカと護衛達の目を盗んでは度々街中に繰り出すようになった。
まあ、遠目からこっそりと影が護衛してはいたのだが。

ルドヴィカはといえば、やはり私達の溺愛にかなり引いていたようで。

『アルカンシエル様がああなるのも分かります。ウザいです。寧ろ今まで良く堪えていたなと』

私達に遠慮なく暴露して、乳母である母親に拳骨を貰っていたが。

・・・・・・そうか、ウザがられていたのか・・・。

だがしかし!!
よくぞ真っ直ぐな性根で育ってくれた!
普通なら我が儘で不遜で傲慢に育つだろうに・・・。

『・・・反面教師じゃないですか?』
『---ルドヴィカ?! お前・・・主様になんてことを!』

それを聞いたルドヴィカの母親は大慌てだ。

『違う違う! ほら、以前、お茶会で会ったミズーリ侯爵令息!! 一人っ子で甘やかされて、自分が世界の中心みたいな性格の!!』
『---ああ、あの方!! ・・・・・・確かに、アルカンシエル様は見るからに軽蔑の眼差しでしたね。なるほど』

それを聞いてホッとしながらも納得する母親。
あの令息は愚者と言える。
それくらい鼻つまみ者だった。
知らぬは本人ばかりなりってね。

『彼を反面教師にしてたと思いますよ』

アークに限らず、ほとんどの子息は反面教師にしてたな。
なるほど、まあそのお陰でアークはいい子に育ったんだな。

・・・しかし、急に溺愛は止められないもので。
出来るだけ、構うのを控えよう・・・。
ど、努力はしよう・・・ウン。


そうして暫く様子を窺っていると、ある日、不意に大賢者の事を聞いてきた。

何だ?
何かあるのか?
まさか200で何か・・・?

顔には出さなかったが、そう勘繰ってしまいそうになった。
・・・・・・大丈夫、は極一部の者しか知らぬ事。

そう思って素知らぬ顔で話を聞く。

『街で冒険者達が大賢者様の事を話していました。引退したらしいと。大賢者様とはどのような方でしたか? どうして引退したのかご存知ないですか?』

---ああ、噂を聞いただけか・・・。

ほっとした私は、確か曖昧に笑って言葉を濁したな。

アークも少し怪訝そうだったが、すぐに忘れたようだった。


---その話を、何故、今になって思いだしたんだろう?


「---ウラノス?」
「・・・ああいや、何でもない」

アンジェリクに声をかけられ、ハッとする。
いかん、思考の海に沈みそうだった。

「アンジェ、せっかくの新年だ。私とのんびり過ごすかい?」
「・・・したいけど、新年のパーティーがあるからねえ。面倒臭いけど仕方ない。代わりに終わったら目一杯イチャイチャしようね」

渋々と返事をするアンジェリクに苦笑すると、気持ちを切り替える。

「その案に賛成だ。よーし、頑張るぞ!」
「「父上達---! 早く支度して下さい!! 遅れますよ!」」
「「今行く!」」

息子達に急かされて、王城の新年会に向かう。



---この時は思ってもみなかった・・・。

およそ一月後、アルカンシエルとノアが我が家に来て、2人の話を聞くまでは、想像すらしなかったのだ・・・。




※負傷した指がだいぶ良くなりました。ご心配おかけしております。
遅れましたが、何とか投稿出来ました。
時間が取れないのもあってちょっと次も遅れるかもです。





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