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連載
253 消えたノア 1
しおりを挟む取り急ぎギルドに戻ったアーク達は、ズカズカと遠慮なくギルマスのカフカがいる執務室にまっすぐ向かった。
時刻は昼前。
迷宮に入ってから3時間足らず。
ちなみに迷宮から冒険者ギルドへの移動は行きと違い、文字通り翔んで帰った。
もちろん時間短縮の為だ。
城下街やギルド周辺が騒がしかったが、そんな事に構ってる時間が今は惜しい。
「邪魔するぞ!」
ノックと共にそう言ってレオニードが扉を開く。
ノックの意味が無いが、カフカとラミエルもレオニード達が来る事を知っているので驚いた様子は無い。
「御足労頂きありがとうございます。どうぞお掛け下さい」
「---ああ、すまんな」
レオニードが座って、アーク達も続く。
アークはもの凄く不機嫌なのを隠そうともしないでドカッと座った。
粗雑な行動なのに妙に品が良いのはさすが大公家、なんてヘンな事を考えるギギルル兄弟も座る。
ヴァンは翔ぶ前に仔狼サイズになって定番の位置に収まって静かにしている。
「早速だが、先に連絡した通り、ノアが迷宮内で消えた。いや、そういって良いのか・・・攫われた、という方が正しいかな」
「ええ、窺った話ではそうですね」
「俺達は元々記録媒体の魔導具を身に着けているが、今回、ノアが更に高性能な魔導具を錬成してくれたので、それを各自、身に着けて潜っていたんだ。だから話すよりも先にそちらを見て貰った方が早いし正確だと思ってな・・・。今から時間、あるか?」
「迷宮が最優先ですので、構いません」
レオニードの言葉にカフカが即答し、ラミエルは返事よりも早く動いていた。
執務室の灯りを少し落として暗くしたので、レオニード達はめいめいに魔導具を外して見せたいところをチェックしていく。
皆の視点が微妙に違うので誰から見るかという事になったが・・・。
「・・・・・・俺も落ち着いて見たいから、レオンから頼む。俺のは最後で良い・・・」
感情を押し殺したような声でアークがそう言ったので、レオニードのモノから順番に見ることになった。
---そうして見始まった記録媒体の映像は酷く違和感があった。
通常、記録媒体の映像は魔導具が映した映像や音声を偽りなくそのまま記録し、改変できない仕様だ。
それとは別に、今回ノアは、身に付けた者の視点を記録する魔導具を錬成した。
それもただの視点じゃ無い。
ただの視点だったら、耳に付けてもさほど記録範囲は変わらないからだ。
ノアの錬成した魔導具は身に付けた者の意識に連動する。
この『箱庭の迷宮』で今回言われているのが、『夢を見ていたようだ』ということ。
目の前や周りが変化したように見えていたという。
それも皆が同じ景色を見ていたのではなく、個人個人が望むモノやイヤなこと、あるいは記憶の奥に沈んで忘れていたようなモノまで見ていた。
しかし、記録媒体を持っていた冒険者の映像はただの『箱庭の迷宮』を映していただけだったのだ。
その冒険者の声は、ソコとは違う場所でいないはずの親兄弟や恋人に語りかけていたのだから・・・。
だから周りを変化させたのではなく、冒険者の心に作用して幻覚を見せているのだろうとアタリをつけて。
そしてそれは当たっていたようで---。
レオニードの記録媒体の映像は普通の迷宮を記録し、ノア特製の記録媒体の映像はレオニードがシェイラに求婚しているものだった。
---幸せ絶頂のようなシェイラが映し出されていた。
・・・・・・次の瞬間にはただの迷宮に切り替わる。
一瞬にして正気に戻ったのだろう。
そしてそれはシェイラやギギルル兄弟も同じだった。
強く揺さぶられたときの記憶が主だった。
最後のアークの記録媒体はノアを一瞬見失っている映像で、だがすぐにノアに意識を集中したのか、元に戻っていた。
この後のノアを映した映像が続く。
「・・・・・・この時、俺達はすぐに元に戻ったがノアだけが声がけするまで、ぼうっとしていて心ここにあらず、という感じだったんだ」
ヴァンやルルも頷く。
「・・・・・・だから、心に深い傷を持っていたりするヤツが惑わされやすいんじゃ無いかと思う。・・・・・・ノアは感情を面に出しにくいから本人は気付かないが、心は、人一倍傷付いていて、酷く脆い・・・」
アークはそう言って項垂れた。
「---手を離さないって、言ったのに・・・!」
・・・・・・今、どうしてるんだ・・・・・・ノア・・・。
※遅くなりました。
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―――
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※別名義で連載していた作品になります。
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