409 / 641
連載
472 役に立つフェンリルと精霊王 1
ココは古の森の裾野。
冒険者や、少ないが一般人も立ち入れる数少ない森の浅いところだ。
今ヴァンがいる場所は獣人国の王都付近の森だ。
連日この王都付近の森を駆けずり回って例の毒の元となった草を探していた。
───自慢の鼻を頼りに。
しかし、コレが思った以上に難しかった。
いかなフェンリルの嗅覚でも、精製された毒と草に含まれる微量の臭いを嗅ぎ分けるのとでは難易度が違った。
それに浅いところだといえどもその範囲は広大で、例えるならば、それこそ山盛りの砂地に落ちた砂粒サイズの砂金を探すようなモノ。
精霊王の住処に帰るたび、しょげかえるヴァンをノアが慰める日々が続いていた。
『ええい! いい加減我も手がかりの一つも、ノアに持ち帰らねば! 幻獣の矜持が折れそうだ。それにノアに褒めて貰いたい!』
気を取り直して歩き出したヴァンは、ふと、何時もとは違う匂いを感じて首を傾げた。
『向こうは、最初の頃に見廻って以降、気にしていなかったな』
ヴァンは一番最初に、冒険者達が良く足を踏み入れるその場所を調査していたが、幾ら嗅いでもあの毒の臭いがしなかったため早々に切り上げていたのだ。
しかし今、微かにあの臭いも感じる。
『確認が必要だな』
そう言って向かった先には、やはり覚えのある臭いが微かに残っていた。
ヴァンが鼻を地面に擦り付けるくらい近づけると、間違いなく臭った。
『───ココで何かあったな?』
ヴァンが辺りを見回すと、不自然に千切られた草が目に入った。
臭いを嗅ぐと、やはり微かに臭う。
『───っ! コレか』
素早く鑑定をすると、一見何もおかしな所の無い草だったが---。
『コレじゃあ気付かんわ・・・・・・』
ガックリ、というように項垂れるヴァンは、少ししてガバッと頭をあげると前脚で丁寧に土を掘り起こし、千切れた草と綺麗な状態の草を採取してマジックバッグに収納した。
そして改めて周りの状況を確認する。
『・・・・・・キッカケは分からんが、どうやら誰かがこの草を食って吐き戻したんだろう。浄化から僅かに漏れたモノが我の嗅覚に引っかかったんだな』
おかげで見つけられた。
ソイツには申し訳ないが感謝だな。
この先の森を出た辺りの場所に視線を送ると意味深に笑った。
そしてヴァンは古の森のノアの元へといそいそと帰って行くのだった。
ヴァンが思った通り、そこはカガシとチャリオンが薬草採取に訪れた場所だった。
そこでチャリオンが誤ってあの草を口にし、その場でカガシに処置をされて移動。
そして森の外れのテントで今まさに追加の処置を施されている真っ最中であった。
さて、ウキウキでノアの元へと駆けていったヴァンは早速あの草を取り出し、見つけた経緯をザッと話した。
「なるほど。そりゃあさすがに全部の草に鑑定をする訳にいかないモンねえ。でも凄い偶然。良かったね、ヴァン。良く頑張った。偉い偉い!」
『うむ。我、頑張った! ノアが喜んでくれて嬉しいぞ!』
ノアはヴァンの首筋にぎゅっと抱き付いてすりすり。
ヴァンは土埃が舞うほど尻尾をバッサバッサと振り回した。
「・・・・・・お前ら、マジで飼い主とイッヌだな」
何時もヤキモチ妬いてヴァンから引き剥がすアークも、いい加減諦めつつあるようだ。
「・・・・・・良いの? アレ」
一人で短時間だがソファに座れるくらいには体力の戻ったメーレが心配そうにアークに声をかけた。
竜人の番い至上主義を知っているからだろう。
だがアークの返事は意外なモノだった。
「あー、アレね。最近は慣れた。最初は目くじら立てて怒ったが、あのもふもふもノアの精神安定剤だから番いの為に諦めた」
「・・・・・・ふふふ。結局はノアの為、なんだね」
若干納得いかない顔のアークにクスクスと笑うメーレ。
だいぶ顔色が良くなってニコニコ笑うようになった。
コレにはノアもアークもホッと一安心した。
「アーク! これで薬の事が捗りそうだよ!」
ウキウキワクワクなノアに、アークは苦笑した。
「また寝食忘れて没頭するなよ?」
「えっ?! えーと、気を付けマス」
「アーク、しっかり見ててあげないとね」
「え、メーレまで?!」
わいわいがやがやと騒いでいると、精霊王が姿を現した。
《楽しそうだの。うん? ヴァン、珍しいな。もう戻ったのか?》
『おう! 例のアレ、やっと見つけたのよ!』
《おお、アレか。その事で朗報があるぞ》
エレフも何やらワクワクしている。
どうしたのだろうかと皆が注目した。
《我の所の精霊がな、珍しい獣人を見つけたのよ》
「珍しい獣人?」
ノアが首を傾げて、アークも怪訝な顔になった。
《うむ。蛇獣人なのだがね、どうやら体内で色んな薬を生成出来るスキル持ちらしい。精霊がその現場をちょうど覗いていたようで、その時は解毒薬を作っていたそうだよ》
それを聞いたノアは、先程のヴァンからの情報と併せてピンときたようだ。
「その解毒薬って、あの草の毒のヤツだよね、たぶん」
「───おそらく。しかしそんなスキル持ちなんて聞いたこと無いな。・・・・・・父上に調べて貰うか」
それが本当なら色々とヤバい事になるだろう。
現にノアは瞳をキラキラさせている。
コレは絶対、興味持ったな。
アークは頭を抱えて深く溜息を吐いた。
※長らくお待たせいたしました!
ぼちぼち再始動します。また滞るかもしれませんが気長にお付き合い下さいませ。
あなたにおすすめの小説
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
家に帰ったら、妻は冷たくなっていた。突然シングルファザーになった勇者パーティーの治癒師は家族を修復したい
八朔バニラ
ファンタジー
勇者パーティーに所属し、魔王討伐した治癒師(ヒーラー)のゼノスは街の人々の歓声に包まれながら、3年ぶりに家に帰った。家族が出迎えてくれると思ったが、誰も出迎えてくれない。ゼノスは不満に思いながら家に入ると、妻の身体は冷たくなっていた。15歳の長男ルミナスはゼノスの代わりに一家の柱として妹を守り抜き、父に深い拒絶のこもった瞳を向けていた。そして、8歳の長女ミリアは父の顔も忘れていた。
ゼノスは決意する。英雄の肩書きを捨て、一人の不器用な父親として、バラバラになった家族の心を繋ぎ合わせることを。
これは世界最強の治癒師が家族を修復する物語である。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
外れ伯爵家の三女、領地で無双する
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。
だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。
そして思い出す――
《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。
市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。
食料も、装備も、資金も――すべてが無限。
最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。
これは――
ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。