月の至高体験

エウラ

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本編

14 オクタヴィア家の面々

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サクヤが涙を零したのを見て、リオウは空気を読んでその場から下がった。

サクヤの悲痛な声を、戻ったリオウと共に大公家の面々は黙って聞いていた。

実はリオウの案内であちこち見て回っていたサクヤを、解散と言いながら皆、こっそり後を追いかけていた。

もちろん見つからないように。

でもまあ、サクヤは鈍いが、そういう気配には敏感だから気付いてはいるだろうが。

害がないので放って置かれてる感じだ。

終始、魔力の花を撒き散らしながら歩く姿は、無表情なのが信じられないくらい楽しそうで。
このまま問題なく過ごせそうかな?と気が弛んだその時。

不意に気配が変わった。

藤棚の庭だ。

彼の琴線に触れたのだろう。

スオウが声をかけた時には、すでに涙を零していた。
スオウがサクヤを抱きしめて更に声をかけると、堪えきれなくなったようで、心の声を吐露しだした。

・・・・・・その内容が余りにも酷くて、その場にいた全員、一瞬だが殺気が漏れた。
たった15才の子供がする事じゃないし、体験する事でもない。
そもそも、5年前にはすでにその状況だったはず。
そうすると10才程の子供だ。

有り得ないだろう。

たった10才の子供にそんな重責を押しつけて周りの大人は知らんぷりとか。

それが未だ続いているなんて・・・。

「クズだな」
「クズですわね」
「塵芥だね」
「同感です」
『是』

全員一致で意見が纏まった。

「如何してくれようか」
と、無表情の父。
普段穏やかな分、怒らせると恐い。

「公爵様は手を出せませんわ。夫人と陽希様をぎゃふんと言わせたいですわ」
と、朗らかに言う母。
だが、目が笑ってない。この人も普段おっとりしているが、その実、社交界での酸いも甘いもかみ分ける強かさを持つ。

「まずは徹底的に情報を集めて精査しないとね」
そう言う兄は言わずもがな。人の良い微笑みで腹の中は真っ黒け。誰が言ったか『深淵の闇』の二つ名を持つらしい。

「僕はサクヤお兄様を思いっきり甘やかしたいです」
末の弟は自分の可愛さをよく分かっている。
如何すればサクヤの気を引けるかを早速実行していた。

『我々はより一層サクヤ様をお護り致します』
影一同及び使用人も一致団結した。

大公家の皆が完全にサクヤを身内として受け入れた瞬間だった。




オクタヴィア家の皆がそんな会話をしている頃、スオウは黙々とサクヤを甘やかしていた。

やや表情が崩れてきたサクヤの顔を、抵抗しないのをいいことに額から始まって目尻の涙を口づけですくい、頬にも口づけて瞼にも。
そのうち口元にもキスをして、最終的にはバードキスになった。

崩れていた顔は、最後は蕩けたような目になり、スオウが理性をぎりぎり保っていた頃に泣き疲れて寝てしまった。

本当にぎりぎりだった。

あと少し遅れたら、もしくはサクヤが何かリアクションをしていたら、がっつりディープなキスをしていただろう。

もしかしたらその先まで・・・。

しかし、スオウは踏みとどまった。

(だって、閨の事何にも知らないんだぞ。そんなヤツに、無知をいいことにやりたい放題なんて・・・鬼畜だろう!!)

こっそり覗いていた皆は、耐えたスオウに拍手を送った。
もしあれ以上の事をしたら半殺しにしていただろう。

後にそう言われたスオウは。

「俺、よく耐えた!!!」
と、安堵したらしい。

大公家もかなりヤバい方々です。

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