30 / 130
本編
27 生徒会の面々(side生徒会長)
しおりを挟む
『皇陽希は要注意人物』
それは副会長、オクタヴィア・ガオウからもたらされた情報がきっかけだった。
生徒会会長である俺、ミュラー・アルフレッドはSクラスの3学年。
帝国の公爵家の一つミュラー家の嫡男だ。
副会長は言わずもがな、皇兄を父に持つオクタヴィア大公家嫡男のガオウ。
書記と会計は俺と同じ3学年で、フォーミル公爵家の双子で次男のルイスと三男ルーク。
一卵性双生児で見た目がそっくりだが、性格は違う。
兄ルイスが穏やかなのに対して弟ルークは快活で少し羽目を外す事が多い。
ただ、わざとそっくりな様子を出して、相手を油断させる事もする策士だ。
庶務のスターリング・レックスは侯爵家次男でガオウと同学年。
よくガオウと一緒にいる。
人好きな優しい顔の裏でガオウと同じく腹黒だ。
そんな一癖も二癖もあるメンバーは全員Sクラスなので、当然寮も同じ。
頻繁に行き来しての情報収集に余念がない。
新年度が始まる前の春休み期間。生徒会にとっては休みなど関係ないとばかりに様々な雑務が転がり込んでくる。
否、年中無休の状態なので生徒会に所属しているものは授業免除の特典がある。
それもSクラスで、各テストをクリアした者にだが。この生徒会にヘマをするヤツはいないので大丈夫だ。
今日もそんな感じで、各々が仕事を捌いている中、ガオウがやって来て告げたのだ。
「うちの弟、次席だって!」
自責、自席・・・・・・?
ーーー次席?!!
「はあああああぁーーー?!」
生徒会室の皆が一斉に叫んだ。
だってそうだろう。
ガオウの弟と言えば神童の呼び声高いスオウだぞ?!
アイツが首席以外有り得ないと皆が皆思っていた。
しかも一般入試ではなく、推薦入試だぞ。
それが蓋を開けてみれば、次席。
「じゃあ、誰が首席だったの?」
レックスがガオウに聞いた。
「それがさ、皇朔夜って、ジパング皇国の公爵家嫡男」
「・・・誰?」
双子が思わずといった感じで聞き返す。
俺も名前しか知らない。
情報が全くない人物で、病弱との噂もある。
おそらく誰も顔を知らない。
「・・・ですよねぇ? 僕も知らない人。一緒に試験を受けたスオウによると、黒髪黒瞳の中性的な美人で、終始無言、無表情だったそうです」
「・・・それだけ?」
「そう。どうやって試験会場に来たのか、急に現れて、終わったら声をかける間もなく消えてたそうです。あのスオウが気配すら追えなかったと」
「その子が首席なのは間違いないんだな?」
「ええ、もちろん不正防止に、試験会場は魔法が使えない仕様ですし、そもそも厳しい学園長達が見逃しません」
それに・・・・・・と前置きしてから。
「その子、満点合格ですから」
「・・・・・・は?」
推薦入試だぞ?
めちゃくちゃ難しい問題だぞ?
それを満点って・・・・・・。
「人外?」
「僕もそれを疑いましたが、人間です」
「ええ・・・? 化け物か」
「人間・・・の、はず。まぁ、スオウも父達も凄く興味を持ったのでこちらで警戒しつつ情報を集めますので。・・・ただ・・・」
ガオウが少し躊躇っていた。
「何だ? 気になる事が?」
「その、母が皇国の出身でその子の乳母をしていたという女性と親友なのだそうで、手紙のやり取りをしているらしく」
「・・・それで?」
「朔夜殿は生家では居ない者のように扱われ、世話人の一人もなく、離れで一人生活をしていると・・・。乳母は5年前に体調を崩して解雇され、少なくともその頃からずっと自分の事は自分でしていると思われます」
皆が唖然としている。
「ぇ? だって、皇公爵家って、確か皇弟の・・・ええ? 嫡男なんでしょ?!」
思わずといった感じでルークが呟く。
「・・・・・・双子の弟を猫可愛がりして兄は放置らしいです。二卵性双生児で弟は可愛らしい容姿で母親似とか。その母親が朔夜殿を無視しているそうなので」
使用人も右に倣うか。
「その情報を元にスオウには人となりを見極めるように伝えてあります。それで厄介なのが弟の陽希の方です。甘やかされて誰も諫めないため、やりたい放題で我が儘らしいです。母親に倣って兄を蔑んでいるようです」
なので、こちらの方こそ厳戒態勢をお願いします。
そう言って一旦帰って行った。
嵐のようだった。
ガオウが去った後の生徒会室は妙に静かだった。
そしてそれは嵐の前の静けさのようだった。
それは副会長、オクタヴィア・ガオウからもたらされた情報がきっかけだった。
生徒会会長である俺、ミュラー・アルフレッドはSクラスの3学年。
帝国の公爵家の一つミュラー家の嫡男だ。
副会長は言わずもがな、皇兄を父に持つオクタヴィア大公家嫡男のガオウ。
書記と会計は俺と同じ3学年で、フォーミル公爵家の双子で次男のルイスと三男ルーク。
一卵性双生児で見た目がそっくりだが、性格は違う。
兄ルイスが穏やかなのに対して弟ルークは快活で少し羽目を外す事が多い。
ただ、わざとそっくりな様子を出して、相手を油断させる事もする策士だ。
庶務のスターリング・レックスは侯爵家次男でガオウと同学年。
よくガオウと一緒にいる。
人好きな優しい顔の裏でガオウと同じく腹黒だ。
そんな一癖も二癖もあるメンバーは全員Sクラスなので、当然寮も同じ。
頻繁に行き来しての情報収集に余念がない。
新年度が始まる前の春休み期間。生徒会にとっては休みなど関係ないとばかりに様々な雑務が転がり込んでくる。
否、年中無休の状態なので生徒会に所属しているものは授業免除の特典がある。
それもSクラスで、各テストをクリアした者にだが。この生徒会にヘマをするヤツはいないので大丈夫だ。
今日もそんな感じで、各々が仕事を捌いている中、ガオウがやって来て告げたのだ。
「うちの弟、次席だって!」
自責、自席・・・・・・?
ーーー次席?!!
「はあああああぁーーー?!」
生徒会室の皆が一斉に叫んだ。
だってそうだろう。
ガオウの弟と言えば神童の呼び声高いスオウだぞ?!
アイツが首席以外有り得ないと皆が皆思っていた。
しかも一般入試ではなく、推薦入試だぞ。
それが蓋を開けてみれば、次席。
「じゃあ、誰が首席だったの?」
レックスがガオウに聞いた。
「それがさ、皇朔夜って、ジパング皇国の公爵家嫡男」
「・・・誰?」
双子が思わずといった感じで聞き返す。
俺も名前しか知らない。
情報が全くない人物で、病弱との噂もある。
おそらく誰も顔を知らない。
「・・・ですよねぇ? 僕も知らない人。一緒に試験を受けたスオウによると、黒髪黒瞳の中性的な美人で、終始無言、無表情だったそうです」
「・・・それだけ?」
「そう。どうやって試験会場に来たのか、急に現れて、終わったら声をかける間もなく消えてたそうです。あのスオウが気配すら追えなかったと」
「その子が首席なのは間違いないんだな?」
「ええ、もちろん不正防止に、試験会場は魔法が使えない仕様ですし、そもそも厳しい学園長達が見逃しません」
それに・・・・・・と前置きしてから。
「その子、満点合格ですから」
「・・・・・・は?」
推薦入試だぞ?
めちゃくちゃ難しい問題だぞ?
それを満点って・・・・・・。
「人外?」
「僕もそれを疑いましたが、人間です」
「ええ・・・? 化け物か」
「人間・・・の、はず。まぁ、スオウも父達も凄く興味を持ったのでこちらで警戒しつつ情報を集めますので。・・・ただ・・・」
ガオウが少し躊躇っていた。
「何だ? 気になる事が?」
「その、母が皇国の出身でその子の乳母をしていたという女性と親友なのだそうで、手紙のやり取りをしているらしく」
「・・・それで?」
「朔夜殿は生家では居ない者のように扱われ、世話人の一人もなく、離れで一人生活をしていると・・・。乳母は5年前に体調を崩して解雇され、少なくともその頃からずっと自分の事は自分でしていると思われます」
皆が唖然としている。
「ぇ? だって、皇公爵家って、確か皇弟の・・・ええ? 嫡男なんでしょ?!」
思わずといった感じでルークが呟く。
「・・・・・・双子の弟を猫可愛がりして兄は放置らしいです。二卵性双生児で弟は可愛らしい容姿で母親似とか。その母親が朔夜殿を無視しているそうなので」
使用人も右に倣うか。
「その情報を元にスオウには人となりを見極めるように伝えてあります。それで厄介なのが弟の陽希の方です。甘やかされて誰も諫めないため、やりたい放題で我が儘らしいです。母親に倣って兄を蔑んでいるようです」
なので、こちらの方こそ厳戒態勢をお願いします。
そう言って一旦帰って行った。
嵐のようだった。
ガオウが去った後の生徒会室は妙に静かだった。
そしてそれは嵐の前の静けさのようだった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
1,033
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる