月の至高体験

エウラ

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本編

56 嵐の前触れ(side風紀委員長)


「全く、何処からこんなに湧いてくるんだか」

風紀委員長のイルミナがぼやく。

目の前にはたった今捕縛した曲者が5人転がっている

毎年、風紀委員は野外授業は免除なのだ。
何故なら、総出で安全確保の対策をしなくてはならないからだ。

少なくない人数が在籍していてもこの野外授業は範囲が広大で人手が足りない。
なので毎年この時期になると学園側から冒険者ギルドに生徒の護衛依頼を出しているのだが。

今年は皇国の公爵家のハルキ達が入学早々トラブルを起こし、兄であるサクヤを廃嫡にするという前代未聞の騒ぎを起こしていた。

その為、今回は念入りに冒険者の為人をチェックして厳選したのだが、それ以外の輩が、報酬に釣られて後から後から隠れて森に忍び込んで湧いて出るのだ。

「俺達は暇じゃないんだがなあ」

『委員長、こちらも3人確保致しました』
『こちらは4名です』
『第一チェックポイントで6名確保』

次々届く内容に深い溜息を吐く。
耳にはサクヤが前もって付加してくれた記録媒体のイヤーカフが鈍い光を放っている。

防御魔法のほかに通信機能も付けてくれているお陰で、互いの連絡がスムーズで手に取るように分かる。

ただ、捕縛した人数が今回は半端ないんだが。

「いくら何でも多過ぎだろう。まだ序盤だぞ」

そうぼやいている間にもどんどん通信が入ってくる。
少しして、皇族お抱えの影と騎士団員が到着した。今年は、普通なら関わることのない二つの組織が学園の為に行動を共にしてくれる。

養子になって第二皇子殿下となったサクヤがいるからだ。
今回は、例の問題児・ハルキがサクヤを亡き者にしようとしているとの情報を皇族の影から得て、万全の体制で臨む事になっているのだ。

それに他の生徒達が巻き込まれたら、サクヤならば絶対に己を責める。
そんな事態にならぬようにと検討した結果、影と騎士団の配置になった。

「ご苦労様です、ケイス公爵子息殿」

影が声をかけてきた。

「そちらこそご苦労。あと、学園内ではイルミナでいい」
「畏まりました。イルミナ様、こちらはこの者だけで?」
「ああ、他の委員からも連絡がいっていると思うが、あちらこちらから少なくない数が報告されている。大変だろうがよろしく頼む」

頭は下げられんが、言葉で礼を尽くす。

・・・サクヤならば平気で頭を下げてそうだが。
上に立つ者は簡単には頭を下げてはいかんのだ。

さて、引き取って貰ったので少し休憩をして。
第二チェックポイントに向かうと、ちょうどスオウとサクヤが無双していた。

いや、もうなんて言えばいいのか・・・。

魔物を倒す方が片手間のように見えるが・・・。
影では賊と化した冒険者がサクヤの魔法で淡々と拘束されていく。

パラライズによって痺れた所にバインドで拘束している。正確な上に早い。

20分足らずでチェックポイントに着いたのには驚いた。
同じように影達に回収を頼む。

他のルートを担当した者達も捕縛を完了していた。

『各々、軽食を取って休みつつ、もう少し頼むぞ』
『了解』

さて、俺もサクヤに貰った菓子を食べて少し休憩するか。





ーーーこの後の光景を俺は忘れないだろう。

第三チェックポイントに向かう一本道に足を踏み入れた瞬間のサクヤとスオウの行動が早い。

サクヤは無詠唱で一瞬に冒険者全員を捕縛。

すでに戦力外と化した他のメンバーと2,3年をガチガチに固めた結界で覆い、安全確保をしてからの公爵家の影共との手合わせ。

スオウも3人を相手にしているが余裕そうだ。
サクヤは7人と交戦しているが、こちらも淡々として攻撃を往なしている。

本気の戦闘状態のサクヤをハッキリと見たのは初めてだが、どこか既視感を覚えた。

・・・・・・そう言えば、とふと思い出す。

皇国の冒険者で『夜叉姫』の通り名を持つ正体不明、年齢不詳の輩の話を・・・


・・・・・・まさか。

この時、偶然にも公爵家の影も同じ考えに至っていたとは思うまい。

ほんの一瞬の隙が命取りになる状況で、なんの躊躇もないサクヤの攻撃はまさに熟練者のソレだった。


あっという間に対峙していた影を全員捕縛したサクヤのあの台詞・・・。


『物足りない』
『つまらない』
『ベヒモスの方がよっぽど戦える』


・・・・・・お前、実は戦闘狂だったんだな・・・。


ちょっと手合わせをして貰おうかと思っていたが、まだ死にたくないので諦めよう・・・・・・。





感想 57

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