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10 偽釣書で釣り上げる
魔導師団員と騎士団員が全員揃って食事をしても余裕があるくらい大きい食堂だが、さすがに時間をずらして食べにくるため、席は半分埋まっていればいいくらいかな。
そんな中、専用の部屋があるにも関わらず一般団員用のこのテーブルの一角で食事を摂りながら差し出された、見た目が釣書風の履歴書。
「・・・・・・何です?」
「やだなあ。見ての通りだよ」
「この中で気に入った方を一人・・・・・・いえ何なら二、三人選んで下さって結構ですが」
「今更要らないんですけど?」
胡乱げにアディスを見てそう言うとカーティス補佐官がしれっと応える。
いや冗談抜きで要らない。邪魔。
「いやだって、そろそろ(補佐を)・・・・・・ねえ?」
「いい加減、(補佐を)誰かに決めないとですよね?」
「(補佐は)要らないってば。今のまま気楽な(補佐なし)のがいいの!」
アディス達がしつこくて思わず台パンして叫んでしまい、周りから一斉に視線が集まる。
「何で今更? 別に誰かに絞らなくていいじゃないですか。その方が好きに(仕事)やれるし」
「───何が『好きにヤれるし』なんだ?」
「ひいっ!?」
不意に後ろから何時にも増して不機嫌な低い声でアルヴァにそう言われてビクッと肩が跳ねた。
「───あああアルヴァ!? いいい何時の間に!? てか脅かさないでよ、びっびっびっくりしたじゃないか!」
ていうか、言葉のニュアンスが何か違ってない!?
後ろを振り向きどもりながら抗議するが、仁王立ちで腕組みしているアルヴァは無表情なまま俺を見つめて、それからテーブルの上のいくつもの表紙だけ見れば釣書っぽい履歴書を見て言った。
「俺という者がいながら浮気とは、いい度胸だな」
「・・・・・・・・・・・・は?」
浮気? いやこれ、見た目釣書だけどただの履歴書だよ? ていうか俺という者がって何?
俺はアルヴァが好きだけど、アルヴァにとっては俺って単なる幼馴染みじゃあ・・・・・・?
そんな疑問が顔に出てたのか、向かいに座っているアディスが溜息を吐きながら行儀悪くフォークで俺を指して言った。
「あのねぇ、セラ。ただの幼馴染みはあんな口吻はしないし、膝上に乗せて手ずから『あーん』なんてしないよ?」
「子供の頃なら一緒にお風呂も入るでしょうが、成人済みの大人はお風呂でイチャイチャしないでしょうね。それこそそういう関係でもなければ」
「団員達だって大浴場に普通に入ってるでしょ。イチャイチャしないよね?」
「いやそんな大勢の中でそもそもイチャイチャ出来ないでしょーが!」
アディスに続いてカーティス補佐官も、何故か休暇中の俺とアルヴァのアレコレやお風呂事情を知っていて焦る。
「ま、そういうことだ。セラ、ずいぶん前・・・いや最初からアルヴァのこと好きだったろう?」
アディスにニヤリと笑われて、俺は顔が熱くなるのを感じた。
え? それってつまり、俺の気持ちとっくにバレてるってこと!?
じゃあ、アルヴァにも───!?
思わず振り返ればアディスみたいにニヤリと笑うアルヴァがいた。
「俺も鈍かったが、セラは輪をかけて鈍かったんだな。竜人の番いの話は知らないのか? つまり、お前は俺の番いだ」
「は? え? 番い? え? アルヴァって竜人だったの!? じゃあ、あーんも世話焼きもその番いのせいだったってこと!?」
最初からアレだったからこれが普通だと思ってた。
「・・・・・・まさかセラ、俺が竜人って知らなかったのか?」
「え、マジ?」
「・・・・・・まさか、あんなに賢いのに、そこ?」
アルヴァ、アディス、カーティス補佐官の順で唖然とされて、俺は憮然とした。
「だって誰も教えてくれなかった! デカいだけで見た目普通に人じゃん!」
「あー、そういえばドーン公爵家が竜人の家系だって当たり前すぎて誰も言わなかったかも。あの頃からセラ賢くて、てっきりもう知ってるものだと・・・・・・ごめんね?」
アディスがそう言って申し訳なさそうに呟く。
「だから俺は悪くない! 悪くないったら悪くないの! ───ぅわーん!」
「あっあっ、泣くなセラ! 俺達が悪かった!」
俺は21歳の大人なのに、癇癪を起こした子供のようにえぐえぐ泣いて、アルヴァに膝の上に抱っこされてお昼休憩中ずっと宥められていた。
おかげでお昼ご飯食べそこなった。くそう。
───で? 結局何だったんだっけ?
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