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11 海老で鯛を釣る? 1
結局俺が泣き止んだのはお昼休憩が終わる頃で、すでに食堂には俺達以外誰もいなくなっていた。
アディス達は食器を戻して、アルヴァは俺を縦抱っこしながら合同訓練のための訓練場に移動した。
「結局、アレは何の茶番だったの?」
いや実際、アルヴァが竜人だってことも知らなかったけどあの場でやることじゃなかったよね?
そう俺がぼそっと呟くと、アディスがいい笑顔で振り返った。
「海老で鯛を釣るんだよ。予定外だったが大物が釣れそうだ」
「・・・・・・? 意味がよく・・・・・・?」
ていうかその言い回し、コッチの世界にもあるんかーい!?
「セラは気にしなくて大丈夫。このあとの合同訓練で思いっきり発散しようね?」
「? うん」
「あちこち修復不可にしないで下さいよ?」
「そこはほら、私とセラがいるから! 一応結界も張るし、修復魔法の威力もバッチリ!」
「・・・・・・ヤる気満々ですね」
「・・・・・・・・・・・・」
何かカーティス補佐官の『ヤる気』が『殺る気』に聞こえたのは俺だけ?
アルヴァ、だから顔色悪いよ、大丈夫?
「・・・・・・・・・・・・大丈夫だ」
「ホントに? 無理しないでね?」
そう言ってチュッと頬にキスを贈った。
するとみるみるうちに赤くなるアルヴァにほんわかと和む。
こうして今、冷静になって改めて思ったけど、さっきのアレってつまりアルヴァが俺のこと好きだったってことだよな?
めっさ嬉しいんだけど!
だってずっと俺の片想いで、噂のせいで距離を取られて嫌われてると思ってたところに誤解が解けていつも以上に構って貰えて。
でもそれもきっとこの休暇中だけだと思って色々我慢して、今日、仕事に復帰したのに。
まさかの竜人で番い!
いやまあ、番いのことは正直よく知らないけど、ようは俺だけ愛してくれるってことだよな?
そう思い至った俺は、ニコニコでアルヴァの首にぎゅっと抱きついたのだった。
アルヴァがデレッとしたあとアディスの殺気に顔を青くさせていたことに気付かずに。
カーティス補佐はふふふ、と和やかに笑っていた。
そして到着した訓練場。
アルヴァに縦抱っこされて現れた俺を見てギョッとする魔導師と騎士達に顔が赤くなる。
俺は見てくれが15歳くらいだから大柄なアルヴァに抱っこされると大人と子供くらい差があるんだよ。
「セラ、セラータ。そんな顔をアイツらに見せるな」
そう言ってアルヴァが俺の頬にチュッとキスをした。当然俺の顔は更に火が出るのかと思うほど熱くなって涙目だ。
「ななな何してっ! はっはっ恥ずかしいだろー!」
「・・・・・・団長。俺、セラと抜けてもいいですかね?」
「駄目に決まってるだろう、アホ」
「ようやく恋が成就したんですねぇ。よかったよかった。でもそれとこれとは別」
俺の動揺っぷりにアルヴァがそんなことを真顔で言い、速攻で団長と団長補佐官にツッコまれた。
うん、アルヴァ、言ってる意味が分からん。恥ずかしいけど仕事は仕事。一週間休んだんだから働かないと!
「アルヴァ、下ろして。俺、魔導師団員達の方に行かないと・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チッ」
俺が下ろせと言ったら、めちゃくちゃ渋い顔で沈黙した後、舌打ちした。・・・・・・ん?
「舌打ち!? 今アルヴァ舌打ちした!?」
「してない。ほら、気を付けて」
「もうなんなん!? 俺で遊んでない!?」
「してないしてない。ダスク師団長が待ってる、ほら行け」
急にアルヴァに適当にあしらわれて、俺はムッとして副師団長の顔が外れ、無意識に何時もの口調と態度で話してた。
仕事中はアディスのこと『師団長』呼びなのに、つい・・・・・・。
「───っ父様! 俺、今日は殲滅魔法ガンガン撃っていい!? 結界も頑丈なの張るから!」
「もちろんいいよ。私もそういう気分だからねぇ」
「・・・・・・アイツら、俺達でストレス発散する気満々じゃねえかよ」
「アルヴァに朝、伝言貰った時点で分かってただろ?」
さっきの大食堂でのやり取りを見ていた者は俺とアルヴァの竜人の番い関係を知って、訳知り顔で『痴話喧嘩かー』みたいな生暖かい目で見ていたが、それを知らない他の魔導師や騎士は何事かと唖然としていた。
それくらい俺達の仲は最近冷めていたからね。
エリアス団長とディート補佐官は呆れたように、こちらも素に戻ってブツブツ言っていた。
俺達の会話を聞いたアルヴァはまたもや顔色が悪くなったけど。
こうしてわちゃわちゃな合同訓練が始まるのだった。
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