【完結】暁の騎士と宵闇の賢者

エウラ

文字の大きさ
11 / 40

11 海老で鯛を釣る? 1


結局俺が泣き止んだのはお昼休憩が終わる頃で、すでに食堂には俺達以外誰もいなくなっていた。

アディス達は食器を戻して、アルヴァは俺を縦抱っこしながら合同訓練のための訓練場に移動した。

「結局、アレは何の茶番だったの?」

いや実際、アルヴァが竜人だってことも知らなかったけどあの場でやることじゃなかったよね?
そう俺がぼそっと呟くと、アディスがいい笑顔で振り返った。

「海老で鯛を釣るんだよ。予定外だったが大物が釣れそうだ」
「・・・・・・? 意味がよく・・・・・・?」

ていうかその言い回し、コッチの世界にもあるんかーい!?

「セラは気にしなくて大丈夫。このあとの合同訓練で思いっきり発散しようね?」
「? うん」
「あちこち修復不可にしないで下さいよ?」
「そこはほら、私とセラがいるから! 一応結界も張るし、修復魔法リペアの威力もバッチリ!」
「・・・・・・ヤる気満々ですね」
「・・・・・・・・・・・・」

何かカーティス補佐官の『ヤる気』が『る気』に聞こえたのは俺だけ?
アルヴァ、だから顔色悪いよ、大丈夫?

「・・・・・・・・・・・・大丈夫だ」
「ホントに? 無理しないでね?」

そう言ってチュッと頬にキスを贈った。
するとみるみるうちに赤くなるアルヴァにほんわかと和む。

こうして今、冷静になって改めて思ったけど、さっきのアレってつまりアルヴァが俺のこと好きだったってことだよな?
めっさ嬉しいんだけど!

だってずっと俺の片想いで、噂のせいで距離を取られて嫌われてると思ってたところに誤解が解けていつも以上に構って貰えて。
でもそれもきっとこの休暇中だけだと思って色々我慢して、今日、仕事に復帰したのに。

まさかの竜人で番い!
いやまあ、番いのことは正直よく知らないけど、ようは俺だけ愛してくれるってことだよな?

そう思い至った俺は、ニコニコでアルヴァの首にぎゅっと抱きついたのだった。

アルヴァがデレッとしたあとアディスの殺気に顔を青くさせていたことに気付かずに。
カーティス補佐はふふふ、と和やかに笑っていた。


そして到着した訓練場。

アルヴァに縦抱っこされて現れた俺を見てギョッとする魔導師と騎士達に顔が赤くなる。
俺は見てくれが15歳くらいだから大柄なアルヴァに抱っこされると大人と子供くらい差があるんだよ。

「セラ、セラータ。そんな顔をアイツらに見せるな」

そう言ってアルヴァが俺の頬にチュッとキスをした。当然俺の顔は更に火が出るのかと思うほど熱くなって涙目だ。

「ななな何してっ! はっはっ恥ずかしいだろー!」
「・・・・・・団長。俺、セラと抜けてもいいですかね?」
「駄目に決まってるだろう、アホ」
「ようやく恋が成就したんですねぇ。よかったよかった。でもそれとこれとは別」

俺の動揺っぷりにアルヴァがそんなことを真顔で言い、速攻で団長と団長補佐官にツッコまれた。
うん、アルヴァ、言ってる意味が分からん。恥ずかしいけど仕事は仕事。一週間休んだんだから働かないと!

「アルヴァ、下ろして。俺、魔導師団員達の方に行かないと・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チッ」

俺が下ろせと言ったら、めちゃくちゃ渋い顔で沈黙した後、舌打ちした。・・・・・・ん?

「舌打ち!? 今アルヴァ舌打ちした!?」
「してない。ほら、気を付けて」
「もうなんなん!? 俺で遊んでない!?」
「してないしてない。ダスク師団長が待ってる、ほら行け」

急にアルヴァに適当にあしらわれて、俺はムッとして副師団長の顔が外れ、無意識に何時もの口調と態度で話してた。
仕事中はアディスのこと『師団長』呼びなのに、つい・・・・・・。

「───っ父様! 俺、今日は殲滅魔法ガンガン撃っていい!? 結界も頑丈なの張るから!」
「もちろんいいよ。私もそういう気分だからねぇ」
「・・・・・・アイツら、俺達でストレス発散する気満々じゃねえかよ」
「アルヴァに朝、伝言貰った時点で分かってただろ?」

さっきの大食堂でのやり取りを見ていた者は俺とアルヴァの竜人の番い関係を知って、訳知り顔で『痴話喧嘩かー』みたいな生暖かい目で見ていたが、それを知らない他の魔導師や騎士は何事かと唖然としていた。
それくらい俺達の仲は最近冷めていたからね。

エリアス団長とディート補佐官は呆れたように、こちらも素に戻ってブツブツ言っていた。
俺達の会話を聞いたアルヴァはまたもや顔色が悪くなったけど。

こうしてわちゃわちゃな合同訓練が始まるのだった。







感想 64

あなたにおすすめの小説

【完結】ダンスパーティーで騎士様と。〜インテリ俺様騎士団長α×ポンコツ元ヤン転生Ω〜

亜沙美多郎
BL
 前世で元ヤンキーだった橘茉優(たちばなまひろ)は、異世界に転生して数ヶ月が経っていた。初めこそ戸惑った異世界も、なんとか知り合った人の伝でホテルの料理人(とは言っても雑用係)として働くようになった。  この世界の人はとにかくパーティーが好きだ。どの会場も予約で連日埋まっている。昼でも夜でも誰かしらが綺麗に着飾ってこのホテルへと足を運んでいた。  その日は騎士団員が一般客を招いて行われる、ダンスパーティーという名の婚活パーティーが行われた。  騎士という花型の職業の上、全員αが確約されている。目をぎらつかせた女性がこぞってホテルへと押しかけていた。  中でもリアム・ラミレスという騎士団長は、訪れた女性の殆どが狙っている人気のα様だ。  茉優はリアム様が参加される日に補充員としてホールの手伝いをするよう頼まれた。  転生前はヤンキーだった茉優はまともな敬語も喋れない。  それでもトンチンカンな敬語で接客しながら、なんとか仕事をこなしていた。  リアムという男は一目でどの人物か分かった。そこにだけ人集りができている。  Ωを隠して働いている茉優は、仕事面で迷惑かけないようにとなるべく誰とも関わらずに、黙々と料理やドリンクを運んでいた。しかし、リアムが近寄って来ただけで発情してしまった。  リアムは茉優に『運命の番だ!』と言われ、ホテルの部屋に強引に連れて行かれる。襲われると思っていたが、意外にも茉優が番になると言うまでリアムからは触れてもこなかった。  いよいよ番なった二人はラミレス邸へと移動する。そこで見たのは見知らぬ美しい女性と仲睦まじく過ごすリアムだった。ショックを受けた茉優は塞ぎ込んでしまう。 しかし、その正体はなんとリアムの双子の兄弟だった。パーティーに参加していたのは弟のリアムに扮装した兄のエリアであった。 エリアの正体は公爵家の嫡男であり、後継者だった。侯爵令嬢との縁談を断る為に自分だけの番を探していたのだと言う。 弟のリアムの婚約発表のお茶会で、エリアにも番が出来たと報告しようという話になったが、当日、エリアの目を盗んで侯爵令嬢ベイリーの本性が剥き出しとなる。 お茶会の会場で下民扱いを受けた茉優だったが……。 ♡読者様1300over!本当にありがとうございます♡ ※独自のオメガバース設定があります。 ※予告なく性描写が入ります。

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

神子様のお気に入り!

荷稲 まこと
BL
異世界に召喚された主人公、百瀬瑠衣。 そこは女性が存在しないBLゲームの世界だった。 『神子様』と呼ばれイケメンたちにちやほやされる瑠衣であったが、彼はどうも不満そうで…。 長編の合間の息抜きに書きました。 ふわっと設定なのでふわわっと読んでください。 すけべシーンには※が付いてます。

【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました! ありがとうございました!! いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い <あらすじ> 魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。 見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。 いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。 ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。 親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。 ※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。 └性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

歳上公爵さまは、子供っぽい僕には興味がないようです

チョロケロ
BL
《公爵×男爵令息》 歳上の公爵様に求婚されたセルビット。最初はおじさんだから嫌だと思っていたのだが、公爵の優しさに段々心を開いてゆく。無事結婚をして、初夜を迎えることになった。だが、そこで公爵は驚くべき行動にでたのだった。   ほのぼのです。よろしくお願いします。 ※ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

俎上の魚は水を得る

円玉
BL
前作「釣った魚、逃した魚」の番外・後日談です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/546817982/116507482  番外編なのに長くなりそうなので別タイトルでアップすることにしました。   本編を読んでないと、伝わりきらないところが有ると思います。 厳密に言えば、後日談と言っても本編のラストシーンよりは少し前に遡ります。 建国の儀の翌年となります。 二人の生活を楽しんでいた召喚神子・三倉貴史(タカ)と護衛騎士であり伴侶のマクミラン。 マクミランがうっかり漏らした神子の誕生日を耳にした王家が、それを放っておくはずも無く。 『神子様生誕祭』を執り行うことに。 次第に大仰になっていく事に引き気味だったが、王家の計らいで温泉地が貰えることになったタカは、俄然発奮することに。 ただひたすらラブ語りなだけで、さほどの危機が訪れることもなく、メリハリ的には薄目です。 どちらかと言えばコメディ寄りかなと思います。 本編「釣った魚、逃した魚」は終始マクミラン目線(攻目線)でしたが、 本作では、神子様・タカ目線(受目線)になります。 本編「釣った魚、逃した魚」では崇拝恋慕しているマクミラン目線だったので、大分神子様が神秘的に美化されています。 今回、神子様本人目線なので、所詮は今時の日本人。そこそこ俗です。 あと、一応、今回も調子に乗らないように文字数2300以下の縛りを設けてみました。 ですが、連載回数を30話で締めたかったので、 ラスト近くの回から、文字数2300を越えてしまいました。 予約投稿にて、毎日更新します。 ムーンライトさんにも投稿しています。