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6 宝物 1 sideルキウス
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──休暇をもらった翌日には、俺は俺達のいる人族の国と魔人国の国境に広がる森に来ていた。
国境と言っても全てを囲うように壁があるわけじゃない。今世の魔王陛下が張ったという、よく見ないと分からない結界魔法があって、どうやっているのか分からないが魔人国に害なす輩を選別しているとのこと。
その逆も然りで、他種族に害をなした魔人族は魔人国から弾かれたり、粛清されるらしい。
俺も魔人族の討伐に向かった先で何度か目にしたことがあるが、聖騎士でも入れる者と見えない壁に阻まれる者がいるので、ちゃんと機能しているのだろう。
聖騎士も一人の人間だ。魔人国に悪感情を持っていてもおかしくはない。
……そういえば、少し前に両親を魔人族に殺されたという少女を神殿で保護したが、案の定、結界魔法に阻まれて喚き散らしていたな。
その少女は、一時的に保護したあと職場を斡旋されて神殿から追い出され、その後も監視していた聖騎士からの連絡で、職場を抜け出して一人で国境沿いに向かったと聞き、密かに現場に向かって様子を窺っていた。そのときに……
『何で入れないのよ! 原作にはないでしょ、こんな展開知らないわよ! 大体、神殿にいれば攻略対象者達にちやほやされて逆ハーだったはずなのに追い出されちゃうし。何で皆、あたしに塩対応なのよ!』
などと、意味の分からないことを言っていたが。魔王陛下の結界魔法は一般人にはあまり知られていなくてもおかしくはないが、はて、攻略対象者とは?
それ以外にも何だっけか……。
そうだ、あれは魔人族の討伐で数日不在にしていて、討伐を終えて神殿に戻ってきたあと。
家族を殺され、神殿に一人保護された少女がいるとの知らせを受けて、従騎士のキエルとともに少女の元に向かっているとき。
『あたしはヒロインなのよ! 誰からも愛されるべき存在なの! なのに何で今、ルキウスがいないの!? アルベルトやセレンも何であたしとイチャイチャしてくれないのよ!』
廊下で一人、俺の名前を呼び捨てでそう叫んでいたのを耳にし、従騎士とともに咄嗟に柱の陰に隠れて様子を窺ったのだが。
俺の他に聖騎士でも上位の先輩方の名前を平然と呼び捨てていて、しかもイチャイチャ? って、どういうことだと気配を消しながら声をひそめてキエルに尋ねる。
「おい、キエル。アレは一体何だ?」
「それが……保護をした一昨日から、許しも得ていないのになれなれしく聖騎士様方のお名前を呼び、人目をはばからずに擦り寄るのです」
「はあ? まさか家族を喪って気が触れたとか?」
俺は眉間に深いシワを寄せつつ、目の前で身内が殺されたなら然もありなんと思い、キエルに問い質す。
しかしキエルは困惑顔で言った。
「いえ、いたって正常です。ただ言動がおかしいだけで。それで今はルキウス様がご不在のせいなのか、ああして騒いで暴れておりまして……その、万が一、ルキウス様のお知り合いだったら対応が変わりますので、ご確認をと」
「いや、全く知らん。はあ……正常だが頭のイカレたお子様かよ。付き合ってらんねーわ」
キエルもそうだが、聖騎士達は俺の口の悪さを知っているから、神殿内では砕けた態度をとっている。
気の休まる時間は誰しも必要だからな。外ではもちろん猫を被るけど。
「他の聖騎士様方も面識はないそうなので、このあと彼女は通例通りに大部屋に移されたあと、職場を斡旋されてここを出るでしょう」
「あ? まさか今までは特別室(個室)に入れてたのか?」
あそこはある程度の身分やワケありが一時的に入る個室だ。故にプライベートのために防音対策もされている。
「はい。彼女は国の辺境の出で王都には初めてのはずなのに、何故か初対面の聖騎士様方のことを詳しくご存じでした。それで監視の意味も兼ねてお入りいただいてました」
「それは正解だわ。怪しいし、あんなのが初日から大部屋で騒いでいたら他のヤツらの迷惑だし、あらぬ噂をまき散らされそうだ」
面識のない俺達のことを詳しく知っているだなんて、どこかの組織の間諜でハニートラップ関係か。
しかしやっていることが目立つし怪しすぎて、逆に疑いの目を向けられていることに気づいていない。バカなのか、それとも本命か何かから目を逸らさせるための捨て駒なのか。
まあ、どちらにせよ、俺には関係ないな。もう顔を合わすつもりもない。このままこれからも会わないようにしよう。
「行くぞ、キエル。アレに構う必要はない。何か聞かれても無視していいぞ。どうせあと数日もすれば、職場を斡旋されて神殿から出されるだろう?」
「はい、そうですね。……ごねずに出て行ってくれるといいんですけど」
キエルが困り顔で言う。うん。あの様子を見てからだと、それもすんなりいきそうにないかもな。
「あー、そのときは神官の他に誰か聖騎士を付けて職場まで送り届けてやればいい。聖騎士には向こうに押し付けてサッサと帰れって言っておけ」
俺が淡々とそう告げると、キエルは苦笑した。
「はは、相変わらず塩対応ですね、ルキウス様は」
「悪いか。俺はあの方以外に心は許さないって決めてるからな」
「ふふ、そういうところ、尊敬します」
俺はあのときから、あの方だけのためにここまで頑張ってきたんだ。脇目も振らずにな。
だからあんなワケの分からんヤツに拘っている暇なんかないんだよ。
──そういうことがあったあとに再会した第七王子は、綺麗で可愛くて、俺の癒しになった。
※ちょっと時系列が今イチ分かりづらいかもしれませんが、今はうまく修正できないので、このまま行きます。すみません。
ルキウスが休暇で森に来る→おかしな少女のことを回想→森でウトに出会うという感じです。
もう一話、ルキウス視点の予定。
国境と言っても全てを囲うように壁があるわけじゃない。今世の魔王陛下が張ったという、よく見ないと分からない結界魔法があって、どうやっているのか分からないが魔人国に害なす輩を選別しているとのこと。
その逆も然りで、他種族に害をなした魔人族は魔人国から弾かれたり、粛清されるらしい。
俺も魔人族の討伐に向かった先で何度か目にしたことがあるが、聖騎士でも入れる者と見えない壁に阻まれる者がいるので、ちゃんと機能しているのだろう。
聖騎士も一人の人間だ。魔人国に悪感情を持っていてもおかしくはない。
……そういえば、少し前に両親を魔人族に殺されたという少女を神殿で保護したが、案の定、結界魔法に阻まれて喚き散らしていたな。
その少女は、一時的に保護したあと職場を斡旋されて神殿から追い出され、その後も監視していた聖騎士からの連絡で、職場を抜け出して一人で国境沿いに向かったと聞き、密かに現場に向かって様子を窺っていた。そのときに……
『何で入れないのよ! 原作にはないでしょ、こんな展開知らないわよ! 大体、神殿にいれば攻略対象者達にちやほやされて逆ハーだったはずなのに追い出されちゃうし。何で皆、あたしに塩対応なのよ!』
などと、意味の分からないことを言っていたが。魔王陛下の結界魔法は一般人にはあまり知られていなくてもおかしくはないが、はて、攻略対象者とは?
それ以外にも何だっけか……。
そうだ、あれは魔人族の討伐で数日不在にしていて、討伐を終えて神殿に戻ってきたあと。
家族を殺され、神殿に一人保護された少女がいるとの知らせを受けて、従騎士のキエルとともに少女の元に向かっているとき。
『あたしはヒロインなのよ! 誰からも愛されるべき存在なの! なのに何で今、ルキウスがいないの!? アルベルトやセレンも何であたしとイチャイチャしてくれないのよ!』
廊下で一人、俺の名前を呼び捨てでそう叫んでいたのを耳にし、従騎士とともに咄嗟に柱の陰に隠れて様子を窺ったのだが。
俺の他に聖騎士でも上位の先輩方の名前を平然と呼び捨てていて、しかもイチャイチャ? って、どういうことだと気配を消しながら声をひそめてキエルに尋ねる。
「おい、キエル。アレは一体何だ?」
「それが……保護をした一昨日から、許しも得ていないのになれなれしく聖騎士様方のお名前を呼び、人目をはばからずに擦り寄るのです」
「はあ? まさか家族を喪って気が触れたとか?」
俺は眉間に深いシワを寄せつつ、目の前で身内が殺されたなら然もありなんと思い、キエルに問い質す。
しかしキエルは困惑顔で言った。
「いえ、いたって正常です。ただ言動がおかしいだけで。それで今はルキウス様がご不在のせいなのか、ああして騒いで暴れておりまして……その、万が一、ルキウス様のお知り合いだったら対応が変わりますので、ご確認をと」
「いや、全く知らん。はあ……正常だが頭のイカレたお子様かよ。付き合ってらんねーわ」
キエルもそうだが、聖騎士達は俺の口の悪さを知っているから、神殿内では砕けた態度をとっている。
気の休まる時間は誰しも必要だからな。外ではもちろん猫を被るけど。
「他の聖騎士様方も面識はないそうなので、このあと彼女は通例通りに大部屋に移されたあと、職場を斡旋されてここを出るでしょう」
「あ? まさか今までは特別室(個室)に入れてたのか?」
あそこはある程度の身分やワケありが一時的に入る個室だ。故にプライベートのために防音対策もされている。
「はい。彼女は国の辺境の出で王都には初めてのはずなのに、何故か初対面の聖騎士様方のことを詳しくご存じでした。それで監視の意味も兼ねてお入りいただいてました」
「それは正解だわ。怪しいし、あんなのが初日から大部屋で騒いでいたら他のヤツらの迷惑だし、あらぬ噂をまき散らされそうだ」
面識のない俺達のことを詳しく知っているだなんて、どこかの組織の間諜でハニートラップ関係か。
しかしやっていることが目立つし怪しすぎて、逆に疑いの目を向けられていることに気づいていない。バカなのか、それとも本命か何かから目を逸らさせるための捨て駒なのか。
まあ、どちらにせよ、俺には関係ないな。もう顔を合わすつもりもない。このままこれからも会わないようにしよう。
「行くぞ、キエル。アレに構う必要はない。何か聞かれても無視していいぞ。どうせあと数日もすれば、職場を斡旋されて神殿から出されるだろう?」
「はい、そうですね。……ごねずに出て行ってくれるといいんですけど」
キエルが困り顔で言う。うん。あの様子を見てからだと、それもすんなりいきそうにないかもな。
「あー、そのときは神官の他に誰か聖騎士を付けて職場まで送り届けてやればいい。聖騎士には向こうに押し付けてサッサと帰れって言っておけ」
俺が淡々とそう告げると、キエルは苦笑した。
「はは、相変わらず塩対応ですね、ルキウス様は」
「悪いか。俺はあの方以外に心は許さないって決めてるからな」
「ふふ、そういうところ、尊敬します」
俺はあのときから、あの方だけのためにここまで頑張ってきたんだ。脇目も振らずにな。
だからあんなワケの分からんヤツに拘っている暇なんかないんだよ。
──そういうことがあったあとに再会した第七王子は、綺麗で可愛くて、俺の癒しになった。
※ちょっと時系列が今イチ分かりづらいかもしれませんが、今はうまく修正できないので、このまま行きます。すみません。
ルキウスが休暇で森に来る→おかしな少女のことを回想→森でウトに出会うという感じです。
もう一話、ルキウス視点の予定。
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