【完結】俺、モブですよね?

エウラ

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10 めでたしめでたしのその後 1 sideルキウス

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※本日二話目の投稿です。ご注意ください。



やっと手に入れた、俺だけの天使。

魔王陛下に許しを得て祝福され、晴れて俺のつまとなったウトを背中から抱き寄せる。

初夜で歯止めがきかず、散々ヤって抱き潰してしまったせいで、ピクリともせずに深く眠っているウト。申し訳ないと反省しつつも、嬉しくて顔がニヤける。

最初はウトの住んでいる村の一角に住居を構えるつもりだったが、魔王陛下より王城の敷地内に家を賜り、住むことになった。
これは魔王陛下がウトを溺愛していて、彼の安全も兼ねているそうだ。

ちなみに俺は今はただの休暇なので、あと一月後には神殿に戻って聖騎士の仕事をしなければならない。
家の内装を相談するウトを見ながら、ここにウトを置いて通うには距離がなぁ──と悩んでいると、魔王陛下の方から提案があった。

「ルキウス殿、いいものがあるのじゃ!」
「いいもの、ですか?」

魔人国の現魔王陛下は、ウトと同じ長い黒髪に紅色の瞳で、頭には羊のようにねじれた角が二つ生えている。
背は一五〇センチほどで幼女のような可愛らしい顔立ちの女性だ。
年齢はウン百年──いやいや、特に女性には歳を聞いてはいけない。

とにかく見た目は可愛らしい未成年のような顔立ちだが、その魔力量は膨大で、たとえ同胞といえども害悪と判じれば王として冷酷に斬り捨てることができる資質の持ち主だ。

そんな冷酷無比だが可愛らしい魔王陛下の提案に、俺は一も二もなく飛びつく。

「これなんじゃがな、この一つの魔石を割って二つにしてな、それぞれに転移の魔法陣を組み込むんじゃ。それに魔力を流せば、片方の魔石の持ち主の元へ転移できる」
「え、何です、それ。初耳なんですけど!」
「じゃろう? これ、わらわの特別な魔法なんじゃ! すごいじゃろ!?」

褒めて褒めて! と言わんばかりのキラキラした目で見られて、俺も投げた小枝を咥えて持ってきて褒美を待つイッヌに見えてしまって、思わず頭を撫でてしまう。
本人は不敬とも思わず、もっと、というように頭をグイグイと押し付けてきて、クスリと笑う。
そういえばウトも擦り寄ってきたな。やってることが同じで、見た目で言うと何か保護者と言うよりウトの妹みたいだ。

「すごいですね、魔王陛下。オリジナルの魔法ということですか?」
「うんうん。まあウトと考えたので、わらわだけの手柄ではないんじゃがな。これならお主らもすぐに会えよう!」
「ありがとうございます、魔王陛下」

ウトと考えたというのもすごいが、性能がすごい。普通はものすごく魔力を消費するので、転移魔法は特別なときにしか使用しない。
俺だって、一度使えば他の魔法が使えないくらいには消費量がすさまじいのだ。
それを魔石に刻んで、すぐに転移できる!?

「うむうむ。これはお主とウトにしか使えんようになっておるから、安心せい。消費する魔力も自然界からの供給で間に合うように改良したから、消費は少なくて済むぞ」
「いやマジすごいんですけど! 魔王陛下、その改良版の転移魔法をぜひ教えていただけますか? 万が一のときに、ウトのためにも自分も転移できるようになっておきたいのです」

魔石だけでもすごいのに、消費魔力が少ないって、どんなことをすればそんなことが可能なんだ。
しかしそれならば、その改良版を覚えたい。ウトを護るためならば何でも吸収したい。

「うむうむ、よいこころがけじゃ。ウトはもう習得済みじゃから、お主も覚えておくとよいぞ。ちなみに今のところ、わらわとウトしか使えんから、悪用はされまいがの」
「確かに、これが漏れたら大問題ですね。でも、どうして陛下とウトだけなのです?」

魔力量が少なくて済むなら、簡単に広まりそうだが。

「それはな、魔法陣にちょっと特別な紋様を組み込んだからじゃ。わらわとウトしか理解できんものをな」
「……それが本当なら、私にも使えないのでは?」
「だーいじょーぶ! ルキウス殿なら理解できるじゃ!」

半信半疑ながらも教わった転移魔法には、ウトの名前が組み込まれていた。

『ウト』は『烏兎』という紋様になるのだそうだ。
それを陛下とウトは理解できているから発動できるのだと。そして俺はウトの伴侶で、烏兎の意味を教わり、理解することで発動できるのだと言う。

烏兎は月と太陽を意味するのだそうだ。そういう知識を何故陛下とウトが持っているのか不思議ではあったが、知らずともウトを愛する気持ちに変わりはないと心の片隅に追いやる。

「ふむ。まあ、ウトがそのうち教えてくれるじゃろう。だからわらわはあえて言わん。でも悪いことではないから、気にするな」
「そうですね。ウトが教えてもいいと思ったときに聞ければいいです」
「そうそう、それがよい」

こうして仕事に関する悩みも一応解決し、あっと言う間に家も建って、晴れて新婚初夜に及んでからの、ウトの天然無自覚な煽りにまんまと嵌まってしまった俺。

うん、反省はするが、後悔はない。

ウトのうなじに付いたに満足して、俺も目を瞑る。

している俺には、唯一の番いがいた。それが第七王子。今、俺の腕の中に眠るウトだ。

あの日、父から聞いた話では父の血筋に竜人族の者がいるそうで。
そのせいで何代かに一人の割合で先祖返りをする者がいて、その者は唯一の番いしか愛せないのだという。
それが今代の俺だそうだ。

唯一の番いは必ずしも出会えるわけではなく、一生会えないまま一人年老いて死ぬ者もいるんだとか。

だから幼いながらも無意識に第七王子を番いと定めた俺のために、影を付けて護っていたのだそうだ。

父も先祖返りではないが、竜人の特性が強く出てしまい、亡くなった俺の母しか愛せないのだという。だから俺の気持ちもよく分かると。

あと一つ、先祖返りした者は寿命がかなり延びるらしい。見た目は人族だが、二〇代で成長が止まり、その後数百年を生きるとか。

なので唯一の番いが見つかった場合は、番いの寿命を同じにするために、うなじを咬んで体液、つまりは精液を中に注ぐ行為が必然なのだ。
まあ、その説明ナシに咬んで注いだのは悪かったと思うが。俺もウトも初めての行為で理性がとんでいたし……うん、仕方ない。

事後報告で、甘んじてお叱りを受けよう。

でもまあ、ウトは笑って許してくれるだろう。
無表情だけど、挙動不審な瞳や声で丸わかりな、可愛いウト。自分は平凡だと思っている美人なウト。
まあ、美人なことは俺だけが分かっていればいい。

俺とずっと、最後のときまで一緒に生きようね。




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