8 / 22
8 捕獲された元聖女 1 ※少し加筆してます
しおりを挟む
──何でこうなった?
現在時刻は深夜零時を迎えようかというところ。
俺が婚約破棄と国外追放されてからまだ六時間も経っていない。それなのに知らないうちになぜ元護衛騎士のアルフォンスに拉致られているんだろうか。
俺は宿の一室でぐっすり眠っていたはずだ。なのに気付いたときには初めて見る天蓋付きのふっかふかのベッドに横になっていて、アルフォンスの端正な顔が至近距離にあった。
「ようやく捕まえたよ、サエ」
「……へ?」
混乱していた頭では間抜けな声しか出せなかった。
──時を遡ること約二時間前。
国外追放からサッサと隣国に移動した俺は、その日はもう夜遅くて移動は無理だと宿を取ることにした。
時間も時間だから大した宿は取れないだろう。下手すれば空いてるところもないかも、と内心で心配しながらひとまず冒険者ギルドに向かった。
もちろんセイウーチ王国の冒険者ギルドのギルマスに融通してもらった手紙を渡すためだ。
手紙には俺について詳しい詮索はしないことと生活の最低限の地盤ができるまで面倒を見てくれるように頼む主旨が書いてあった。
冒険者ギルドに着いて名前を告げるとすぐ執務室に案内された。セイウーチのギルマス、すでに俺のことを連絡済みだったのかな。対応が早い。
執務室で対面したイリヤ国冒険者ギルドのギルマスはソエルという名の元Sランク冒険者だそうだ。
燃えるような短い赤髪に紺色の瞳で四十代には見えない逆三角形の筋肉モリモリのワイルドイケオジだった。
「やあ初めまして。君のことは色々と聞いているよ。だから詮索することはないから安心してくれ」
「それのどこに安心する要素が?」
つまりは全部知ってるから聞く必要がないって意味だろ。あんのくそギルマス、個人情報筒抜けかよ。いや、そりゃあこの世界にプライベート保護法なんてないけどさあ。
俺は無表情な顔のまま殺気立った。それに気付いたソエルが苦笑する。
「あー、落ち着け。向こうのギルマスからは君の言うとおり『冒険者のサエ』としての情報しか貰ってない。他はこちらが独自に持っている情報だ。もちろん他言無用だ」
「……どうやってそれを信用しろと?」
俺が元聖女で女のフリしてたことが漏れたらマズいなんてものじゃないっていうのに。それなのに簡単に信用なんて出来るか。
するとソエルは少し考えたあとニヤリと笑って言った。
「うーん、それもそうか。じゃあとっておきの切り札を切らせて貰おうかな」
「切り札?」
俺が信用せざるを得ないくらいの何かがあるっていうのか。
「そう。これを聞けば君はこちらを信用してくれるだろうが、しかし同時に逃げられなくなる。──どうする?」
ソエルの言い分は選択肢を俺に選ばせているようで、その実一択しかない気がするんだが。
「アホなの、それとも確信犯? 普通なら俺は断る一択だけど、でも今のこの状況じゃ選ぶ以外の選択肢はないよな」
ブスッとふて腐れたように言うとソエルはいい笑顔になった。
「ふふ、理解が早くて助かるよ。じゃあ信用して貰うために教えよう」
不意に真剣な顔になったソエルの切り札に俺は唖然とした──と同時になるほどと納得もした。
俺って捨てられた直後から前世の記憶があって、そのせいか生まれたときの記憶もしっかり残っててさ、ソエルが出した切り札のあるものにもしっかり見覚えがあったんだよな。
実は生まれたときに抱き寄せられた母親らしき人の胸の中央にあったのを一度見てたんだ。
ソエルが出したものはネックレスに通された紋章だったけど、それはこの国イリヤの国章だ。
それに俺もこの国章を毎日のように見て知っている。なぜなら──。
「君の左足の裏にもこの紋章の痣があるはずだ」
「……」
無表情で知らんぷりでいたが、さすがにバレてるか。
うん、そりゃそうだ。だって今ソエルから聞いた話だと、俺はイリヤ国王の王弟殿下の実子らしいから。産まれたときに痣は確認済みなんだと。
ソエルの言うことによれば、この国の王族の血を引く者は身体のどこかに国章が痣のように浮かび上がるんだって。
それが俺の場合は左足の裏だったわけだ。
そのおかげで俺はいい意味でも悪い意味でも身分がバレずに今まで過ごせていたわけだ。
いやあ、まさか自分がイリヤの王族だったとは思わなかった。王族特有のものだなんてさすがに知らないし、イリヤ国でも秘匿情報なんじゃねえの?
これがソエルのいう切り札。
確固たる証拠があるから信用に値するが、同時に面倒な身分が付随されてしまった。
そう、まさに逃げられなくなったわけだ。
俺の夢見た自由な冒険者ライフはどこへ行った!
現在時刻は深夜零時を迎えようかというところ。
俺が婚約破棄と国外追放されてからまだ六時間も経っていない。それなのに知らないうちになぜ元護衛騎士のアルフォンスに拉致られているんだろうか。
俺は宿の一室でぐっすり眠っていたはずだ。なのに気付いたときには初めて見る天蓋付きのふっかふかのベッドに横になっていて、アルフォンスの端正な顔が至近距離にあった。
「ようやく捕まえたよ、サエ」
「……へ?」
混乱していた頭では間抜けな声しか出せなかった。
──時を遡ること約二時間前。
国外追放からサッサと隣国に移動した俺は、その日はもう夜遅くて移動は無理だと宿を取ることにした。
時間も時間だから大した宿は取れないだろう。下手すれば空いてるところもないかも、と内心で心配しながらひとまず冒険者ギルドに向かった。
もちろんセイウーチ王国の冒険者ギルドのギルマスに融通してもらった手紙を渡すためだ。
手紙には俺について詳しい詮索はしないことと生活の最低限の地盤ができるまで面倒を見てくれるように頼む主旨が書いてあった。
冒険者ギルドに着いて名前を告げるとすぐ執務室に案内された。セイウーチのギルマス、すでに俺のことを連絡済みだったのかな。対応が早い。
執務室で対面したイリヤ国冒険者ギルドのギルマスはソエルという名の元Sランク冒険者だそうだ。
燃えるような短い赤髪に紺色の瞳で四十代には見えない逆三角形の筋肉モリモリのワイルドイケオジだった。
「やあ初めまして。君のことは色々と聞いているよ。だから詮索することはないから安心してくれ」
「それのどこに安心する要素が?」
つまりは全部知ってるから聞く必要がないって意味だろ。あんのくそギルマス、個人情報筒抜けかよ。いや、そりゃあこの世界にプライベート保護法なんてないけどさあ。
俺は無表情な顔のまま殺気立った。それに気付いたソエルが苦笑する。
「あー、落ち着け。向こうのギルマスからは君の言うとおり『冒険者のサエ』としての情報しか貰ってない。他はこちらが独自に持っている情報だ。もちろん他言無用だ」
「……どうやってそれを信用しろと?」
俺が元聖女で女のフリしてたことが漏れたらマズいなんてものじゃないっていうのに。それなのに簡単に信用なんて出来るか。
するとソエルは少し考えたあとニヤリと笑って言った。
「うーん、それもそうか。じゃあとっておきの切り札を切らせて貰おうかな」
「切り札?」
俺が信用せざるを得ないくらいの何かがあるっていうのか。
「そう。これを聞けば君はこちらを信用してくれるだろうが、しかし同時に逃げられなくなる。──どうする?」
ソエルの言い分は選択肢を俺に選ばせているようで、その実一択しかない気がするんだが。
「アホなの、それとも確信犯? 普通なら俺は断る一択だけど、でも今のこの状況じゃ選ぶ以外の選択肢はないよな」
ブスッとふて腐れたように言うとソエルはいい笑顔になった。
「ふふ、理解が早くて助かるよ。じゃあ信用して貰うために教えよう」
不意に真剣な顔になったソエルの切り札に俺は唖然とした──と同時になるほどと納得もした。
俺って捨てられた直後から前世の記憶があって、そのせいか生まれたときの記憶もしっかり残っててさ、ソエルが出した切り札のあるものにもしっかり見覚えがあったんだよな。
実は生まれたときに抱き寄せられた母親らしき人の胸の中央にあったのを一度見てたんだ。
ソエルが出したものはネックレスに通された紋章だったけど、それはこの国イリヤの国章だ。
それに俺もこの国章を毎日のように見て知っている。なぜなら──。
「君の左足の裏にもこの紋章の痣があるはずだ」
「……」
無表情で知らんぷりでいたが、さすがにバレてるか。
うん、そりゃそうだ。だって今ソエルから聞いた話だと、俺はイリヤ国王の王弟殿下の実子らしいから。産まれたときに痣は確認済みなんだと。
ソエルの言うことによれば、この国の王族の血を引く者は身体のどこかに国章が痣のように浮かび上がるんだって。
それが俺の場合は左足の裏だったわけだ。
そのおかげで俺はいい意味でも悪い意味でも身分がバレずに今まで過ごせていたわけだ。
いやあ、まさか自分がイリヤの王族だったとは思わなかった。王族特有のものだなんてさすがに知らないし、イリヤ国でも秘匿情報なんじゃねえの?
これがソエルのいう切り札。
確固たる証拠があるから信用に値するが、同時に面倒な身分が付随されてしまった。
そう、まさに逃げられなくなったわけだ。
俺の夢見た自由な冒険者ライフはどこへ行った!
372
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる