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23 ネタバレからの八つ当たり 4
西門を出たあとはフードを被り直して、アルと二人で迷宮があるという道をひたすら歩く。
歩いて一時間くらいという話だったが、アルと雑談をしながらだったからか、あっという間だった気がする。
迷宮の入り口の前は馬車がぐるっと回れるようにロータリーができていて、その周りは広場のようになっていて屋台がいくつも並んでいる。よく見ると食べ物屋や道具屋、武器防具屋なんかがある。
入り口の脇には冒険者ギルド職員用の詰め所があった。
入り口には数組の冒険者パーティーが並んでいる。
「へえ、簡易的だけど小さな村みたい。あ、隅っこに鍛冶屋まであるよ。すごいな。万が一何か忘れたり壊れたりしても対応できそう」
「そうだな。初めて見たが至れり尽くせりだ。向こうには迷宮自体ないから新鮮だよ」
アルも興味津々で見入っている。
「だよな。それだけ平和だったってことで俺が頑張ってた結果だと思えば、まあそんなに悪い気はしないな」
「──ああ、サエのおかげだ。ありがとう」
俺がふと思ったことを言えば、アルは一瞬目を瞠ったあと柔らかく微笑んで俺のフードの中に顔を近づけて、チュッと触れるだけのキスをしてきた。
「な、ななな何すんだよ! ビックリするだろ!」
「ふふ、いや急に今したくなってね」
「もー、恥ずかしいだろ! 人前ではヤメロ」
「うん、それ以外ならオッケーなんだね。了解」
そう言って顔を離すアルに、そういう意味じゃねえ! と言い返そうとして何かにローブの裾を引かれてハッとする。
引っ張られた方を振り返れば、そこには一〇歳くらいの男の子がいた。ショートの明るい茶髪に緑色の大きな瞳で可愛い顔の男の子だ。
引っ張られた拍子に俺が被っていたフードは脱げてしまったが、今更かとそのまま下ろしておく。
その子は麻の生成りのシャツに軽装の胸当て、腰にはあまり質のよくない短剣を下げている。ズボンはところどころ擦り切れそうでショートブーツも穴が開きそうだ。
背中には大きなリュックを背負っている。
周りを見渡すと、似たような子供がちらほらと見えた。
「……誰? 何?」
「さあ?」
思わずアルに尋ねたが、アルも分からないらしい。その男の子に戸惑っていると、前に並んでいた冒険者パーティーの一人が俺達に気づいて声をかけてきた。
「おう、兄ちゃん達、迷宮は初めてか。コイツらは通称『サポーター』と言って、迷宮に入る冒険者の荷物持ちとか簡単な案内役みたいなもんだ」
「そうそう。まあ実際はまだ冒険者になれない年齢の子供にお小遣い程度で冒険者の真似事をさせているんだ。子供にしちゃあ結構いい小遣い稼ぎになるんだぜ」
「ちなみに連れて行くならちゃんと契約書にサインして責任を持たなきゃいかんがな」
強面剣士と魔導師っぽい細い優男、重戦士っぽい大柄な男が順にそう言って教えてくれる。
きちんと子供の面倒を見ることや、魔物のドロップアイテムの分け前の割合などを決めて魔法誓約書で契約するそうだ。あそこの職員詰め所で受け付けてくれるらしい。
「なるほど、この迷宮はこんな子供を連れていても比較的安全だってことなのか」
アルが俺に変わって聞き返すと、強面な剣士は真面目な顔になって言った。
「一〇階層辺りまでは比較的安全だ。もちろん油断はできねえがな。だからコイツらを連れて行けるのは一〇階層まで。その先に連れて行こうとすればこの転移の護符が発動して子供だけ自動で迷宮の外に転移される」
「あとは命の危険があると判断されれば同じように自動で外に転移されるぞ」
「悪いヤツはどこにでもいるし危険と隣り合わせだからな。これから先、未来ある子供は大事にしなきゃ、だぜ」
そんな説明の最中にその子が首から下げたドッグタグに似た金属のネックレスを見せてくれる。表には名前らしきものが、裏には転移の護符が貼り付けられている。一度使ってしまったらギルド職員が新しいものに付け替えてくれるそうだ。
「へえ、しっかりしてるな。……ということは君は俺達について行きたいって言ってるのかな?」
俺がその子に声をかけると頷かれた。
しかし──
「もしかして、声が出ないのか?」
先ほどから一言も話さないこの子に問いかけてみた。するとやはりコクンと頷く。
「……アル、この子連れてってあげようよ」
「そうだな。俺達は今日が初めての迷宮入りだから、道案内も兼ねて、どうだろう?」
アルも頷いてその子に問えば、パッと顔を明るくしてうんうんと頷いた。可愛いな。
「よし、じゃあよろしく。俺はサエ。彼はアルフォンス。君は──トーレンで合ってる?」
タグに刻まれた名前を呼べばその子は嬉しそうに笑った。
※だいぶご無沙汰してます。すみません。
歩いて一時間くらいという話だったが、アルと雑談をしながらだったからか、あっという間だった気がする。
迷宮の入り口の前は馬車がぐるっと回れるようにロータリーができていて、その周りは広場のようになっていて屋台がいくつも並んでいる。よく見ると食べ物屋や道具屋、武器防具屋なんかがある。
入り口の脇には冒険者ギルド職員用の詰め所があった。
入り口には数組の冒険者パーティーが並んでいる。
「へえ、簡易的だけど小さな村みたい。あ、隅っこに鍛冶屋まであるよ。すごいな。万が一何か忘れたり壊れたりしても対応できそう」
「そうだな。初めて見たが至れり尽くせりだ。向こうには迷宮自体ないから新鮮だよ」
アルも興味津々で見入っている。
「だよな。それだけ平和だったってことで俺が頑張ってた結果だと思えば、まあそんなに悪い気はしないな」
「──ああ、サエのおかげだ。ありがとう」
俺がふと思ったことを言えば、アルは一瞬目を瞠ったあと柔らかく微笑んで俺のフードの中に顔を近づけて、チュッと触れるだけのキスをしてきた。
「な、ななな何すんだよ! ビックリするだろ!」
「ふふ、いや急に今したくなってね」
「もー、恥ずかしいだろ! 人前ではヤメロ」
「うん、それ以外ならオッケーなんだね。了解」
そう言って顔を離すアルに、そういう意味じゃねえ! と言い返そうとして何かにローブの裾を引かれてハッとする。
引っ張られた方を振り返れば、そこには一〇歳くらいの男の子がいた。ショートの明るい茶髪に緑色の大きな瞳で可愛い顔の男の子だ。
引っ張られた拍子に俺が被っていたフードは脱げてしまったが、今更かとそのまま下ろしておく。
その子は麻の生成りのシャツに軽装の胸当て、腰にはあまり質のよくない短剣を下げている。ズボンはところどころ擦り切れそうでショートブーツも穴が開きそうだ。
背中には大きなリュックを背負っている。
周りを見渡すと、似たような子供がちらほらと見えた。
「……誰? 何?」
「さあ?」
思わずアルに尋ねたが、アルも分からないらしい。その男の子に戸惑っていると、前に並んでいた冒険者パーティーの一人が俺達に気づいて声をかけてきた。
「おう、兄ちゃん達、迷宮は初めてか。コイツらは通称『サポーター』と言って、迷宮に入る冒険者の荷物持ちとか簡単な案内役みたいなもんだ」
「そうそう。まあ実際はまだ冒険者になれない年齢の子供にお小遣い程度で冒険者の真似事をさせているんだ。子供にしちゃあ結構いい小遣い稼ぎになるんだぜ」
「ちなみに連れて行くならちゃんと契約書にサインして責任を持たなきゃいかんがな」
強面剣士と魔導師っぽい細い優男、重戦士っぽい大柄な男が順にそう言って教えてくれる。
きちんと子供の面倒を見ることや、魔物のドロップアイテムの分け前の割合などを決めて魔法誓約書で契約するそうだ。あそこの職員詰め所で受け付けてくれるらしい。
「なるほど、この迷宮はこんな子供を連れていても比較的安全だってことなのか」
アルが俺に変わって聞き返すと、強面な剣士は真面目な顔になって言った。
「一〇階層辺りまでは比較的安全だ。もちろん油断はできねえがな。だからコイツらを連れて行けるのは一〇階層まで。その先に連れて行こうとすればこの転移の護符が発動して子供だけ自動で迷宮の外に転移される」
「あとは命の危険があると判断されれば同じように自動で外に転移されるぞ」
「悪いヤツはどこにでもいるし危険と隣り合わせだからな。これから先、未来ある子供は大事にしなきゃ、だぜ」
そんな説明の最中にその子が首から下げたドッグタグに似た金属のネックレスを見せてくれる。表には名前らしきものが、裏には転移の護符が貼り付けられている。一度使ってしまったらギルド職員が新しいものに付け替えてくれるそうだ。
「へえ、しっかりしてるな。……ということは君は俺達について行きたいって言ってるのかな?」
俺がその子に声をかけると頷かれた。
しかし──
「もしかして、声が出ないのか?」
先ほどから一言も話さないこの子に問いかけてみた。するとやはりコクンと頷く。
「……アル、この子連れてってあげようよ」
「そうだな。俺達は今日が初めての迷宮入りだから、道案内も兼ねて、どうだろう?」
アルも頷いてその子に問えば、パッと顔を明るくしてうんうんと頷いた。可愛いな。
「よし、じゃあよろしく。俺はサエ。彼はアルフォンス。君は──トーレンで合ってる?」
タグに刻まれた名前を呼べばその子は嬉しそうに笑った。
※だいぶご無沙汰してます。すみません。
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是非とも搾取した王国と虐待した伯爵家のザマァと、心機一転実父達の過保護なほのぼのが読みたいです。
ありがとうございます😆
そして長らく停滞中ですみません😭
い、一年経つ…😱 こちらも折を見て進めたいのでお待ちください🙇
ざまあとか溺愛とか、はい、書きたいので頑張ります😄
15話目の『アルにエスカレートされて』のところ、エスコートじゃないでしょうか…?
承認はしないでもいいです。
いつも楽しみにしてます、頑張ってください。
誤字報告、大変助かります。修正しました。ありがとうございます😆
いつも読んで下さってありがとうございます😄
続き書けるように頑張りますね😆
サエは、基本意地悪されて育ってるので、自己評価低いですよね😅アルは近衛してたくらいなので見た目保証されてるので美形認識もしてるだろうけど(近衛は実力だけでなく見目も良くないとなれないと聞いたような)
その点、元•仮の実家(どうしても実家……とは言いたくないので悩んだあげくのこの表記w)では、妹がお姫様扱いなので美の基準は妹=サエの自己評価低下、という結果に。
これは元•仮の実家にも、こういう考えに育てたことに相当するくらいな『ざまぁ』が必要と思われますね。
お母様が激怒案件です。
「せっかくサエちゃんを可愛く産んだのに❗」とオコです。
アルも怒りつつ、殿下からの評価を下げてくれたからサエがこちらに亡命という名の帰国して結婚出来たので複雑でもありそう。今日出会う魔物、ドンマイ😅💦
サエは義家族のせいで自己評価低い上に無表情になっていたので、可愛いもしくはキレイと言われることがなかった。
あとは前世の記憶のせいで平凡だと思い込んでいるので、実の家族や周りがいくら言っても本気にしなさそう😅
そうそう、近衛騎士は家柄と実力の他に、やっぱり見た目も重視されます。国のトップにつくので、外交とかもありますしね😅
アル達に八つ当たりじゃなくてよかったですね😄
ざまぁもあるといいですが😅