17 / 22
17 王都にドナドナ 5(sideアビス)
そのあと休憩所で朝食を食べたノヴァは、改めて護衛の騎士達に挨拶をした。
「あの、出発のときは寝惚けててごめんなさい。王都までの護衛を引き受けてくれてありがとう。頼りにしてる」
眉を下げてそう言うとペコリと頭を下げるノヴァに、君は頭を下げないでいいんだよと声をかけられなかった。
調書によるとノヴァの国の人達は前世でも分け隔てなく謝るべきときは頭を下げるし、お礼を言うときも頭を下げるのが普通のようだった。
もちろん国の上に立つ存在はむやみに頭を下げないし謝罪も滅多にしないだろうが。
そもそも前世の国では貴族階級などなくなって久しいらしく、未だに慣れないということも書いてあった。だからノヴァもそういう生活を送っていたのだろう。
自分が平凡だという思い込みもそういう前世の影響が大きいのかもしれない。
前世から優しい心根なのだろう。その優しさをこちらの常識で否定したくないから、俺は口を噤んだ。
それはそうとノヴァの言葉に俺はモヤッとした。
「ノヴァ、俺は頼りにしてくれないの?」
そう言ったらノヴァはキョトンとした。
「アビスは護衛される側だろ、むしろ俺より偉いんだろ? お前は大人しく護衛されてろ」
いや、そうなんだけど。それはそれ、これはこれでしょ。まあ護衛の件はとりあえずいいよ。それよりもコレが大事。
「俺のことはシンって呼んで欲しいな」
「おい聞いてるのか?」
「ノヴァには昔のように親しみを込めて呼んで欲しい」
ノヴァのツッコミを笑いながら無視してそう続けると、溜め息を吐いてノヴァが折れた。
「おーい……聞いちゃいないな。はあ、分かったよ、シン。これでいいか?」
「ありがとう、ノヴァ! 愛してる!」
「あああ愛してるとか、かか軽く言うな! はっ恥ずかしいっ!」
嬉しくて思わずそう言うと途端に照れてツンデレになり、馬車に戻ったノヴァにまたニヤけて俺も馬車に乗り込み。
騎士達やエヴァンス達に何度も生暖かい視線を向けられながら王都までの旅路を行くのだった。
その道中に出会った盗賊団を騎士達が難なく蹴散らしたり魔物を討伐したりするたびにノヴァが彼らをめちゃくちゃ褒めて、俺が嫉妬したりたまに先陣を切っていいところを見せたりということが何度かあった。
俺だって伊達にSランク冒険者やってないからね!
そんな感じで概ね順調に進んで無事に予定通り10日をかけて夕方には王都に着いたが、元気だったのは初日くらいで、ノヴァは疲れた様子で馬車の座面にぐったり横たわっていた。
目立たないように裏門から入ってこっそり移動する。
「ノヴァ、着いたけど……降りられそう?」
「……無理、シンが運んで……もう動きたくない。揺れる、停まってるのにぐらぐらする」
慣れるどころか逆に馬車酔いになったようだ。途中の道は整備されていないところも多く、かなり揺れたからな。
よくよく聞くと前世でも乗り物にはけっこう弱かったらしい。
──どうりでやたらと転移したいというわけだ。
ローブを被せて顔を覆い、そっと抱き上げると抵抗もせずに身体を預けてきた。
「部屋に着いたら楽な服に着替えてゆっくりしよう」
「え、謁見とか」
「ノヴァに合わせるに決まってるじゃん。心配しないで。体調がよくなってからでいいんだよ」
こっちの都合で王都に連れてきたんだし。
「うー、ん。じゃあ遠慮なく……」
そう言いながらも俺が運ぶ揺れで眠気がきたのか、ウトウトしながらそう言うと目を瞑って黙り込んでしまった。
部屋に着く頃には本格的に寝入ってしまったノヴァをそっとベッドに下ろすとひとまず服を寛がせてそのまま眠らせた。
「さて、これから忙しくなるぞ」
もう手放せないから、覚悟してね。
※ショート枠の分は、加筆しましたがこれで終わりです。
次話から丸っきり新しくなります。
「あの、出発のときは寝惚けててごめんなさい。王都までの護衛を引き受けてくれてありがとう。頼りにしてる」
眉を下げてそう言うとペコリと頭を下げるノヴァに、君は頭を下げないでいいんだよと声をかけられなかった。
調書によるとノヴァの国の人達は前世でも分け隔てなく謝るべきときは頭を下げるし、お礼を言うときも頭を下げるのが普通のようだった。
もちろん国の上に立つ存在はむやみに頭を下げないし謝罪も滅多にしないだろうが。
そもそも前世の国では貴族階級などなくなって久しいらしく、未だに慣れないということも書いてあった。だからノヴァもそういう生活を送っていたのだろう。
自分が平凡だという思い込みもそういう前世の影響が大きいのかもしれない。
前世から優しい心根なのだろう。その優しさをこちらの常識で否定したくないから、俺は口を噤んだ。
それはそうとノヴァの言葉に俺はモヤッとした。
「ノヴァ、俺は頼りにしてくれないの?」
そう言ったらノヴァはキョトンとした。
「アビスは護衛される側だろ、むしろ俺より偉いんだろ? お前は大人しく護衛されてろ」
いや、そうなんだけど。それはそれ、これはこれでしょ。まあ護衛の件はとりあえずいいよ。それよりもコレが大事。
「俺のことはシンって呼んで欲しいな」
「おい聞いてるのか?」
「ノヴァには昔のように親しみを込めて呼んで欲しい」
ノヴァのツッコミを笑いながら無視してそう続けると、溜め息を吐いてノヴァが折れた。
「おーい……聞いちゃいないな。はあ、分かったよ、シン。これでいいか?」
「ありがとう、ノヴァ! 愛してる!」
「あああ愛してるとか、かか軽く言うな! はっ恥ずかしいっ!」
嬉しくて思わずそう言うと途端に照れてツンデレになり、馬車に戻ったノヴァにまたニヤけて俺も馬車に乗り込み。
騎士達やエヴァンス達に何度も生暖かい視線を向けられながら王都までの旅路を行くのだった。
その道中に出会った盗賊団を騎士達が難なく蹴散らしたり魔物を討伐したりするたびにノヴァが彼らをめちゃくちゃ褒めて、俺が嫉妬したりたまに先陣を切っていいところを見せたりということが何度かあった。
俺だって伊達にSランク冒険者やってないからね!
そんな感じで概ね順調に進んで無事に予定通り10日をかけて夕方には王都に着いたが、元気だったのは初日くらいで、ノヴァは疲れた様子で馬車の座面にぐったり横たわっていた。
目立たないように裏門から入ってこっそり移動する。
「ノヴァ、着いたけど……降りられそう?」
「……無理、シンが運んで……もう動きたくない。揺れる、停まってるのにぐらぐらする」
慣れるどころか逆に馬車酔いになったようだ。途中の道は整備されていないところも多く、かなり揺れたからな。
よくよく聞くと前世でも乗り物にはけっこう弱かったらしい。
──どうりでやたらと転移したいというわけだ。
ローブを被せて顔を覆い、そっと抱き上げると抵抗もせずに身体を預けてきた。
「部屋に着いたら楽な服に着替えてゆっくりしよう」
「え、謁見とか」
「ノヴァに合わせるに決まってるじゃん。心配しないで。体調がよくなってからでいいんだよ」
こっちの都合で王都に連れてきたんだし。
「うー、ん。じゃあ遠慮なく……」
そう言いながらも俺が運ぶ揺れで眠気がきたのか、ウトウトしながらそう言うと目を瞑って黙り込んでしまった。
部屋に着く頃には本格的に寝入ってしまったノヴァをそっとベッドに下ろすとひとまず服を寛がせてそのまま眠らせた。
「さて、これから忙しくなるぞ」
もう手放せないから、覚悟してね。
※ショート枠の分は、加筆しましたがこれで終わりです。
次話から丸っきり新しくなります。
あなたにおすすめの小説
贖罪公爵長男とのんきな俺
侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。
貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。
一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。
そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。
・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め
・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。
・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。
・CP固定・ご都合主義・ハピエン
・他サイト掲載予定あり
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
春野くんち―僕の日常は、過保護な兄弟たちに囲まれている―
猫に恋するワサビ菜
BL
春野家の朝は、いつも賑やかで少しだけ過保護。
穏やかで包容力のある長男・千隼。
明るくチャラめだが独占欲を隠さない次男・蓮。
家事万能でツンデレ気味な三男・凪。
素直になれないクールな末っ子・琉生。
そして、四人の兄弟から猫のように可愛がられている四男の乃空。
自由奔放な乃空の振る舞いに、兄たちは呆れながらも、とろけるような笑顔で彼を甘やかす。
狂わせたのは君なのに
一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】三度目の正直ってあると思う?
エウラ
BL
俺には今の俺になる前の記憶が二つある。
どういう訳かその二つとも18歳で死んでる。そして死に方もほぼ同じ。
もう俺、呪われてんじゃね?
---という、過去世の悲惨な記憶のせいで引きこもりがちな主人公の話。
三度目は長生き出来るのか?
過去の記憶のせいで人生を諦めている主人公が溺愛される話です。
1話1話が長いですが、3話で終わる予定です。
R18には*がつきます。
3話の予定でしたが番外編的な1話を足しました。これで完結です。