【完結】雨を待つ隠れ家

エウラ

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我々の罪(side執事)

辺境伯にお仕えしてはや20余年、初めこそ素晴らしい方にお仕えできて僥倖と思っておりましたが、それが間違いであったと思い知ったのは、私が執事へとなって10年ほど経ったある日の事でした。

ここ暫く『深淵の森』が騒がしく、我が辺境伯領の私設騎士団も連日出動しておりました。

皆、大きな怪我はなく、強いて言えば疲労が溜まっているくらいでした。
その頃の私は、辺境伯領の騎士団はやはり鍛え方が違うのだな、強いのだな、と尊敬すらしておりました。

しかし、違ったのです。

あの日、森で小規模なスタンピードが起こった日。騎士団の団長と副団長が話している内容を、偶然耳にしてしまったのです。

それは耳を疑うものでした。

『一人の奴隷が全て殲滅してくれるから楽だな』
『俺達は死んだ魔物の討伐部位を集めるだけだ。だが、それもけっこう骨が折れる』

そう言っておりました。

それを聞いた私は、真実を知りたい一心で、密かに調べ始めました。
もちろん、誰にも頼れません。
少しずつ、気づかれないように、時間をかけて。

そうして、何故、騎士団の訓練所が公開禁止で壁で覆われているのか、理由を突き止めました。

皆、鍛錬とは名ばかりで、日々だらけた訓練をしていたのです。
さすがに剣も振れず、立派なフルプレートの鎧に着られているような状況にはならないが、明らかに鍛錬とはいえないそれを隠すためだったのです。

それをきっかけに、私は更に調査を進めました。
この頃になると、私の行動に疑問を持った同僚の一人が、一緒に調べてくれるようになりました。

「俺も変だと思ってたんだ。二人で調べよう」
二人なら出来ることも多いだろう、と。

それからは手分けして、帳簿の確認を進めました。しかし、巧妙に隠されていて、これは冒険者ギルドとの癒着が疑われました。

スタンピードで得たこの森の魔物の素材はかなり高額なものです。稀少な素材も多くあります。
しかし帳簿にはそれで得た利益があまりにも少ない額で記載されている。

『横領』

そもそも、騎士団の維持費等の名目で国からかなりの予算が割り当てられているのに、やっていることは・・・・・・。

ここまで調べるのに10年。しがない執事ではこれが限界でした。

「エド、私はこれを国王に奏上しようと思う」
私は彼、同僚でずっと一緒に調べてくれたエドワードに言った。
「俺も同じだ。アル、罪を白日の下にさらしてもらおう。俺達も罪に問われるだろうが」

その時はアルフレッドと一緒に。



そうして私達は密かに調べた資料が国王陛下に届くようにとある冒険者に依頼を出した。

エアヴァルト・アッシュ。
Sランク冒険者で龍人国の王弟殿下。
彼なら確実に届けてもらえる。
Sランクで王族で第3王子殿下の親友という肩書きを持っているから。

かくして、願いは叶えられ、今に至る。





今、目の前には第3王子殿下がいらっしゃる。膝をつき頭を下げてお言葉を待つ。

「あ~、頭を上げろ。楽にしていい。どうせ俺の素はわかっただろう?」
「---は」
緊張しながら顔を上げると、ニカッと言う言葉が似合いそうな笑顔で、殿下が
「ありがとう。本当によくやってくれた。礼を言う」

あろうことか、私達に頭を下げられた。
は?!
「でっ殿下!! 私どもにそんなことをしてはいけません!」
「団長、お二方がお困りですよ」
オロオロする私達を見かねて、殿下の騎士様が声をかけて下さった。

「ああ、すまんな。いや、本当に助かったんだ。実はその奴隷が500年ほど前に違法に召喚された異世界人で、エアヴァルトの番だったもんだから」
「え」
「どうにかなってなかったら、この国どころか世界が滅んでいたかも・・・・・・」

・・・・・・はい?!

心の平穏の為に、知りたくなかったその情報・・・・・・。

「ともかく、お前達はお咎めなしってこと! 辺境伯領だけでなく世界を救ったんだから」
「しかし、」
「それに、エヴァはともかく、奴隷だった『リッカ』は心の綺麗な優しい子だ。お前達に感謝こそすれ、憎むことはないよ」

だから、目が覚めたら彼のお世話よろしくね。
ああでも番の執着は凄まじいから、エヴァが全部やっちゃいそう。

乾いた笑いで去って行く殿下を呆然と見送り、意味を噛み砕いて、二人、顔を合わせて。

ひしっと抱きあった。



こうして、しばらくの後に目覚めた『リッカ』様のお世話をエアヴァルト様から何とかもぎ取り二人であれこれ世話を焼くことになるのは、また別の機会に。
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