(仮)攫われて異世界

エウラ

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112 観光&情報収集 2

僕はミスティにもらった地図を頭にたたき込んで、ナハトと手を繋いで大通りを歩く。

ナハトは最初からフードを被っていなくて、周りからめちゃくちゃ見られている。そういえばアムリタからもう何年も出歩いていないって言ってたから、この街の人もほとんどの人がナハトの姿を見たことがないんだろうな。

僕は最初こそフードを被っていたけど、周りが見えづらいし面倒になってきたので下ろしている。
それに昨日、すでに冒険者ギルドで顔を見られてるし、何なら今回の目的の関係者らしき輩に目をつけられたから不可抗力で囮的な? 悪人ホイホイみたいな?

まあ、ナハトはいい顔しなかったけどしょうがないよね。でもいくらなんでもこんな人が多い場所で、しかも真っ昼間から襲っては来ないでしょ。一応警戒はするけどさ。

というわけで、腹ごしらえとドワーフのお店と雑貨屋。あとこれが一番肝心、ラヴァに言われた古書店!
目立たないようにさり気なく行きたいから、あちこち彷徨くわけ。冷やかしはカモフラージュ。いや、冷やかしでもないんだけどね。

「ふふふ。お昼ご飯楽しみ!」
「そうだな。どうする、テリテリ亭に行くか?」
「うん、量も味もいいって言ってたから、食べ応えありそう」
「気に入る料理があるといいな」
「ラヴァの味を越えるものがあるかな」

なんだかんだ言って、ラヴァの料理が一番美味しいんだよね。家庭的で豪快な感じなのに、ホッとするというか。

「ユラにそう思われているなんて、きっとラヴァは知らないぞ。今度店に行ったら教えてやればいい。きっと泣いて喜ぶ」
「えー、泣くかなぁ?」

あれか、鬼の目にも涙ってヤツ? 鬼だけに。でも別にラヴァは冷酷無比じゃないよね。オカンでオトンでアニキだもんね。

ちょっと涙ぐむラヴァを想像してくふくふと笑ってしまった。

「……どうした?」
「ううん。あの、ちょっと想像したら面白い絵面になったもんだから……ふふっ」
「? そうか」

そんな会話をしながら最初の目的地である『テリテリ亭』にやってきた。なるほど、庶民向けの大衆食堂みたいな店構え。店舗はファミレスくらいの大きさで二階建ての一階が食事処だ。二階は店主達の自宅なのかな。
まだ少し昼時には早いがいい匂いが店の外に漏れていて、さっき開店したばかりらしいのにだいぶ席が埋まっている。
これはかなりの人気とみた。

「ナハト、席がなくなっちゃうよ! 早く入ろう! すみませーん、二人、いいですかー!?」

扉を開けて店の中に声をかければ、厨房にいた五〇歳くらいの恰幅のいいおじさんがヒョコッと顔を出して応えてくれた。

「おう、いらっしゃい──って、お前さん達、初顔だな。えらいべっぴんさんが二人もとは、こりゃあ今日はいいことがありそうだ」

僕達を見てギョッとしたあと、そんなことを言って笑うおじさんの他に、カウンター席に座っている癖っ毛の茶髪に翠の目の四〇歳くらいの軽装備のおじさんも声を上げる。

「あっ! お前さん達、もしかして昨日冒険者ギルドにいなかったかい?」
「あれ、昨日あそこにいた冒険者のおじさんだ」

帰り際にギルド内を見回したときに見た冒険者のおじさんだった。優しげで人のよさそうな感じだったので印象に残っていた人だ。

「おじさん言うな! まだまだ若いわ。ほれ、よかったらこっちに座りな。ここは特等席ですぐに飯が届くぞ。ああ俺はエリオンという」
「ありがとうございます、ユラです」
「ナハトだ。邪魔をする」

すすめられるままカウンター席のおじさんもといエリオンの奥の左隣に座る。ナハトは僕のさらに左隣に座った。ちょうどカウンター席の一番端っこだ。右にエリオン、左にナハトで挟まれる形になる。

この体勢だと背中側に若干違和感があるが、まあ気をつけていれば大丈夫かな。そう思っていたら、ナハトがしれっと椅子ごと僕を引き寄せて背中を隠してくれてホッとする。

「おうおう、過保護だな兄ちゃん」

揶揄い混じりに笑って言うエリオンに、僕は苦笑しナハトは無表情で応える。

「俺の番いだ、当然だろう」
「……えっ!? つ、番いぃ!?」

ギョッとしたあと店内に響くほどの大声で叫ぶエリオンに、店内の他のお客もギョッとした直後にざわめきだす。

「マジ!?」
「うん、僕の番い。本当に過保護だよねぇ。嬉しいけど。あ、おじさん、僕お肉食べたい。オススメってある?」

アムリタではもうあまり見られなくなった反応にクスリと笑い、僕は厨房のおじさんに声をかける。
そのおじさんもギョッとしていたけど、すぐに立ち直ったみたいで返事をしてくれた。

「お、おう、今日はいい肉が入ったから唐揚げがオススメだが……いや、さらっと番いって言葉を聞き流しそうになっちまったけど、本当に?」
「だよなー! 兄ちゃんはともかくユラは未成年じゃねえのか?」

エリオンは半信半疑で聞いてくる。うん、これも何か懐かしい。そういえば僕も冒険者だって知らないのか。見た目じゃ分からないよね。今は冒険者の装備を着けてないし。

「成人済みだよ。問題ない。それに僕もナハトと同じ冒険者だし」
「は、はあああ!? え、冒険者!? じゃあ昨日冒険者ギルドにいたのも単に冒険者だったからなのか?」
「そうだよ。これでもCランク。よろしくね」

そう言って微笑んでおく。エリオンはいい人っぽいから、愛想よくしておこうっと。

「はあ……いや、おじさん今日だけで寿命が何年か縮んだ気がするよ」
「自分でおじさん呼びしてる」
「自分で言うのはいいんだよ」
「そういうもん?」
「そういうもん」

そんな会話で笑っていると、厨房から大量の唐揚げをエリオンと僕に出してくれた。僕は厨房のおじさんにお礼を言って一口頬張る。

「……うんまあーい! 何これ、肉汁じゅわってじゅわって!」
「そうか、よかったな。店主、俺にはワインをくれ。ユラには果実水を」
「あんたは食べないのか?」

ナハトがもっくもっくと食べる僕に微笑んで飲み物を注文すると、エリオンは不思議そうに言う。
そりゃあねえ、子供な見た目の僕がバクバク食べてるそばで何も料理を注文しないんだもんね、変に思うよね。

「ああ、俺は吸血鬼だからな。酒で事足りる」
「き、吸血──え? こんな真っ昼間から? いやいや待て待て、冒険者で吸血鬼で昼間に動けるって、は?」

ああ、アムリタでは日常茶飯事だけど、ウン十年来ていないヘルフォートでは忘れられてたりしてあまり知られていないんだな。

「ナハト・オスクリタって吸血鬼のSランク冒険者、知らない?」
「…………は?」

食べてる合間にそう教えてあげたら、しばらく沈黙したあと、店にいた客が一斉に叫んだ。

「あの伝説級の冒険者ー!?」

──煩っ!!!






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