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3 誰も僕を知らない世界 2
焚き火にあたりながらカーゴパンツのポケットの中身やベルトに付いていた大小の二つのポーチを目の前に並べると、思ったよりも所持品が少なかった。
さっき使ったライターとワイヤー、折りたたみ式の艶消しされた黒いダガー。
ペンタイプのスタンガンと同じくペンタイプの仕込み針。
ポーチはもの凄く軽かったから、中身は何もないかもしれない。せめて軍用携帯食があれば食事の心配が減ったんだけど。
「とりあえず中を見てみよう」
そう独りごちて、何もなさそうな真っ暗な中身のポーチに右手をツッコんでみる。
その瞬間───!
「───っ!?」
有り得ない感覚にぞわっとした僕は咄嗟に手を引き抜いた。
「・・・・・・何だ、コレ・・・・・・」
引き抜いた右手をマジマジと見つめる。つい今しがたツッコんだ右手そのままでおかしなところはない。
「・・・・・・? どういうこと?」
確かに今、ポーチの見た目の深さ以上に、吸い込まれるように右手が沈んでいった。
「意味分かんない。何、本当にここは異世界で、しかも魔法的な超常現象が起こるわけ?」
小説なんかでは、大抵転移とか転生の特典でチートな力を手に入れる。
その中に生き物以外は何でも収納出来て時間経過もなく、容量も無限だとかいう、いわゆるインベントリとかアイテムボックスとか言われるヤツもよく書かれている。
「まさか・・・・・・、本当に?」
冗談抜きでここは異世界で、僕は異世界転移か転生したっていうのか?
「・・・・・・嘘だろ」
でも、それが本当なら、ここには今までの僕を知る人はいないわけで。
イヤな汚れ仕事を自分の意志なんか関係なく強要されない?
そりゃもちろん、自分の命を守るためなら躊躇なく殺るけど。
「僕は、自由に生きてもいい?」
優柔不断ぎみで協調性もなくて人付き合いも苦手でも。誰かの指示どおりに動かなくても。
ここなら一人で生きていける。僕にはそれくらいのサバイバルの知識や力が身についてる。
・・・・・・まあ、もし本当に魔法があるなら、それはこれから訓練が必要だろうけど。
「ははっ、なんか楽しくなってきた」
今の僕はたぶん心から笑っているだろう。いつもは貼り付けた愛想笑いで過ごすか無表情だった。そう訓練されてるから。
「そうと決まれば、もう一度ポーチを確認だ」
今度は躊躇なく右手をツッコんだ。案の定肘くらいまで余裕で入る。
でもそこまで入れる必要はなかった。指先が中に触れるだけで中身のリストが頭に浮かぶ。
その中に、失くしたと思っていたレーションも、ダブルショルダーホルスターと僕の相棒の拳銃二丁も入っていた。
さすがに腕時計とスマホはなかった。アレかな、こっちにはないテクノロジーだから持ち込みアウトだったのかも。
僕はハンドガンを思い浮かべた。すると右手に慣れた重さの銃が現れた。飛距離が短いのが難点だけど片手でも撃てるくらい反動が小さく、なおかつ僕専用にカスタマイズしてある特別製。
「・・・・・・すご・・・・・・でも無限収納なら持ち運びが楽だな」
手に取ってよく観察すると、型はいつも使っているハンドガンなのに弾を再装填する必要がなくなっていた。
「使い方が頭に知識となって入ってるみたいだ。やっぱり魔法なんだ、これ。この銃は魔導具扱いなんだね」
どうやら僕の魔力を消費して弾を発射するらしい。
それもただの弾じゃなくて魔力の塊みたいなのを、土水風火の属性に加えて雷と氷、光と闇という稀少な属性も付与して撃てるとか。あと無属性っていうのもある。
他にも色々な魔法があるみたいだが、それらは特殊なスキルで一部の人しか使えないらしい。
無属性は補助系の魔法が多いのかな。身体強化とか防御力向上とか、相手に撃ってバフやデバフをかけられるみたいだ。
もちろんハンドガンを使わなくてもそれらは全て使えるようだけど。
この辺りはざっくりした知識として頭に浮かんだきたものだ。詳しいことは自分で調べろってことかな。親切なのか不親切なのか分からないな。神様的な存在にも会わなかったし、僕の転移ってただの偶然?
それでも別にいいや。魔王的なヤツを倒せとか言われたら速攻逃げるけど。
で、僕の魔力がなくならない限り弾切れなしで撃ち放題ってことらしい。いや、僕にどれくらいその魔力ってのがあるのか分かんないけど。
「・・・・・・僕って実はチート?」
試しにハンドガンを構えて一〇〇メートルくらい先の木に照準を合わせて撃つとドンピシャな位置に命中した。
「・・・・・・え、ナニコレ。普通はズレるどころか届かないんだけど。飛距離も威力も桁違いなんだけど」
これが異世界常識! アレか、魔法で大抵何とかなるってヤツ!
感動しながらその後も黙々と所持品の確認をし、最初に使ったライターも魔力で火が付く魔導具になっているのが分かった。他も破壊不可の効果が付いてたり色々と中身が変化していた。
中でも僕以外には使えず、紛失・盗難しても転移で僕の手元に戻ってくるという所有者限定の効果はありがたい。
何があるのか分からないこの世界、僕の生命線になる武器達だから。
なんでそういうのが分かったかというと、小説あるあるの『鑑定』魔法とか使えたりしてーなんて思ったら、普通に使えたんだよね。びっくりだよ。
じゃあもしかして魔法で服も乾かせるんじゃ? なんて思い付いて試しに『乾燥』と頭の中で唱えてみると、いとも容易く出来た。
早速乾いた服を着直し、危険のない範囲で思い付く限りの魔法を使ってみた。
いやあ、現実逃避がてら異世界モノの電子書籍読み漁っててよかった。イメージバッチリ!
でも厨二病っぽいから『鑑定』しかり、無詠唱で使うことにしようと心に誓った。
※しばらく唯颯一人なので、独り言や説明が多いです。
攻めはまだ用意していないという見切り発車。次は出したい。
※台風ヤバいです。皆様もお気をつけ下さい。
さっき使ったライターとワイヤー、折りたたみ式の艶消しされた黒いダガー。
ペンタイプのスタンガンと同じくペンタイプの仕込み針。
ポーチはもの凄く軽かったから、中身は何もないかもしれない。せめて軍用携帯食があれば食事の心配が減ったんだけど。
「とりあえず中を見てみよう」
そう独りごちて、何もなさそうな真っ暗な中身のポーチに右手をツッコんでみる。
その瞬間───!
「───っ!?」
有り得ない感覚にぞわっとした僕は咄嗟に手を引き抜いた。
「・・・・・・何だ、コレ・・・・・・」
引き抜いた右手をマジマジと見つめる。つい今しがたツッコんだ右手そのままでおかしなところはない。
「・・・・・・? どういうこと?」
確かに今、ポーチの見た目の深さ以上に、吸い込まれるように右手が沈んでいった。
「意味分かんない。何、本当にここは異世界で、しかも魔法的な超常現象が起こるわけ?」
小説なんかでは、大抵転移とか転生の特典でチートな力を手に入れる。
その中に生き物以外は何でも収納出来て時間経過もなく、容量も無限だとかいう、いわゆるインベントリとかアイテムボックスとか言われるヤツもよく書かれている。
「まさか・・・・・・、本当に?」
冗談抜きでここは異世界で、僕は異世界転移か転生したっていうのか?
「・・・・・・嘘だろ」
でも、それが本当なら、ここには今までの僕を知る人はいないわけで。
イヤな汚れ仕事を自分の意志なんか関係なく強要されない?
そりゃもちろん、自分の命を守るためなら躊躇なく殺るけど。
「僕は、自由に生きてもいい?」
優柔不断ぎみで協調性もなくて人付き合いも苦手でも。誰かの指示どおりに動かなくても。
ここなら一人で生きていける。僕にはそれくらいのサバイバルの知識や力が身についてる。
・・・・・・まあ、もし本当に魔法があるなら、それはこれから訓練が必要だろうけど。
「ははっ、なんか楽しくなってきた」
今の僕はたぶん心から笑っているだろう。いつもは貼り付けた愛想笑いで過ごすか無表情だった。そう訓練されてるから。
「そうと決まれば、もう一度ポーチを確認だ」
今度は躊躇なく右手をツッコんだ。案の定肘くらいまで余裕で入る。
でもそこまで入れる必要はなかった。指先が中に触れるだけで中身のリストが頭に浮かぶ。
その中に、失くしたと思っていたレーションも、ダブルショルダーホルスターと僕の相棒の拳銃二丁も入っていた。
さすがに腕時計とスマホはなかった。アレかな、こっちにはないテクノロジーだから持ち込みアウトだったのかも。
僕はハンドガンを思い浮かべた。すると右手に慣れた重さの銃が現れた。飛距離が短いのが難点だけど片手でも撃てるくらい反動が小さく、なおかつ僕専用にカスタマイズしてある特別製。
「・・・・・・すご・・・・・・でも無限収納なら持ち運びが楽だな」
手に取ってよく観察すると、型はいつも使っているハンドガンなのに弾を再装填する必要がなくなっていた。
「使い方が頭に知識となって入ってるみたいだ。やっぱり魔法なんだ、これ。この銃は魔導具扱いなんだね」
どうやら僕の魔力を消費して弾を発射するらしい。
それもただの弾じゃなくて魔力の塊みたいなのを、土水風火の属性に加えて雷と氷、光と闇という稀少な属性も付与して撃てるとか。あと無属性っていうのもある。
他にも色々な魔法があるみたいだが、それらは特殊なスキルで一部の人しか使えないらしい。
無属性は補助系の魔法が多いのかな。身体強化とか防御力向上とか、相手に撃ってバフやデバフをかけられるみたいだ。
もちろんハンドガンを使わなくてもそれらは全て使えるようだけど。
この辺りはざっくりした知識として頭に浮かんだきたものだ。詳しいことは自分で調べろってことかな。親切なのか不親切なのか分からないな。神様的な存在にも会わなかったし、僕の転移ってただの偶然?
それでも別にいいや。魔王的なヤツを倒せとか言われたら速攻逃げるけど。
で、僕の魔力がなくならない限り弾切れなしで撃ち放題ってことらしい。いや、僕にどれくらいその魔力ってのがあるのか分かんないけど。
「・・・・・・僕って実はチート?」
試しにハンドガンを構えて一〇〇メートルくらい先の木に照準を合わせて撃つとドンピシャな位置に命中した。
「・・・・・・え、ナニコレ。普通はズレるどころか届かないんだけど。飛距離も威力も桁違いなんだけど」
これが異世界常識! アレか、魔法で大抵何とかなるってヤツ!
感動しながらその後も黙々と所持品の確認をし、最初に使ったライターも魔力で火が付く魔導具になっているのが分かった。他も破壊不可の効果が付いてたり色々と中身が変化していた。
中でも僕以外には使えず、紛失・盗難しても転移で僕の手元に戻ってくるという所有者限定の効果はありがたい。
何があるのか分からないこの世界、僕の生命線になる武器達だから。
なんでそういうのが分かったかというと、小説あるあるの『鑑定』魔法とか使えたりしてーなんて思ったら、普通に使えたんだよね。びっくりだよ。
じゃあもしかして魔法で服も乾かせるんじゃ? なんて思い付いて試しに『乾燥』と頭の中で唱えてみると、いとも容易く出来た。
早速乾いた服を着直し、危険のない範囲で思い付く限りの魔法を使ってみた。
いやあ、現実逃避がてら異世界モノの電子書籍読み漁っててよかった。イメージバッチリ!
でも厨二病っぽいから『鑑定』しかり、無詠唱で使うことにしようと心に誓った。
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