(仮)攫われて異世界

エウラ

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25 アムリタの街 2

「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
「ああ、オーダーしたモノが出来上がる頃にまた来る」

そう言って服飾店をあとにしたナハトと僕。
僕は来たときの服装じゃなくて、既製品でサイズの合ったシンプルな白いシャツと黒いパンツに着替えていた。
そこに最初から羽織っていた空色のローブを身に着けている。

そして当然のように抱っこ移動だ。

───アレから一時間は経ったんじゃないかな。

奥の部屋に着いて最初に、僕の見た目からおおよそのサイズの服を何着か見繕って持ってきてくれて、とりあえずシンプルなシャツとパンツに着替えた。

そこからメジャーで細かく採寸し、オーダー用のカタログを見ながらナハトが色々と注文していく。

そう、ナハトが色々と拘った。
僕は出されたお茶を飲みながら店主とナハトのやり取りをぼーっと見ていただけ。

時々お茶を入れ直してくれる店員が、黙って黙々とお菓子を消費する僕に靴や装飾品のカタログを見せてくれた。
こういう服装にはこういう靴や装飾品を合わせるといいですよ、って教えてくれたりして勉強にもなったので、まあよかったんだが。

「・・・・・・あのさ、二、三着もあればいいんだけど」

そう言ったらナハトはにっこり笑って言った。

「俺が色々と着せたいんだ」
「そ、そう・・・・・・なんだ」

有無を言わせぬ圧があって、僕はそれ以上言えなくなった。
間に合わせで既製品の服を一式、下着も合わせて五セット。
そこにオーダーメイドで一〇着。これはの数で、ナハトにしてみれば最低限なんだとか。

いやいや、僕の身体は一つしかないんだが? いつ着るんだよ、この量の服。日替わりでも半月分あるよ?

「でもさ、冒険者って汚れたりするんでしょ? こんないい生地の服じゃ依頼とか受けにくくない?」

破けたりすることも多いよね? もったいないよ?
そう思って言ったんだけど・・・・・・。

「付与魔法で防汚と破壊不可を付けるから問題ない」

って、サラッと言われた。ナニソレ、そんな魔法あるんだ?

「だから普段使いで遠慮なく着てくれ」
「じゃあ、ありがたく着させて貰うね」

さすが異世界。
でもこれが普通かと思ったけど、聞けばナハトが付与魔法出来るからタダだが、一般庶民には使える人は少なくて、魔導師に頼む付与なのでそれなりの金額がかかるそうだ。
なるほど。

・・・・・・今着てるこの服も、もしかして僕のポーチに収納したら新品同様に戻ったりして。なんてねー。

後日、やっぱり新品同様になった服を見て遠い目をすることになるのだが。

それはともかく。

「お腹空いた」

辺りから食欲をそそるいい匂いが僕の胃を刺激する。
さっきお茶とお菓子を貪っていたろうって? アレは別腹なんだよ。
ていうか何故かめちゃくちゃお腹空くんだけど、何で? いつもはもっと小食なんだけどな。

「ああ、いつの間にか昼か。その辺の店にでも入るか。なにがいい?」
「分かんないから、お任せで」
「・・・・・・俺もあまり食べないからな・・・・・・。肉料理でいいか?」
「肉! ステーキとかある!?」
「ステーキなら普通にあるだろう。じゃあ、あそこがいいか」

元の世界でもあんまり食べたことないのに異世界初のまともな食事がステーキ!
楽しみだなー!

わくわくしながらナハトに連れて行かれた店は、どうみても夜のお酒を提供するバー的な店構えなんだが・・・・・・。

「・・・・・・え、やってるの?」

どうみても営業時間外の札が下がってて扉の窓ガラスにはカーテンがひかれているんだけど。
それでも構わず扉を開けて店内に入るナハト。もはや『勝手知ったる他人の家』状態なんだけどいいのか?

「オイコラ、勝手に入ってくるんじゃねえよ」
「今更だな」

───ほら、やっぱり・・・・・・。

奥のカウンターバーから不機嫌そうな低い声が聞こえてきてそっちを見ると、肩までの赤髪をハーフアップした顎ヒゲ・・・・・・無精ひげ? のあるワイルドな三〇代後半ぽい男の人が翠色の瞳を眇めて睨んでいた。

・・・・・・よく見ると額に一〇センチくらいの角っぽいものが見える。耳も若干尖ってるような?

「悪いがステーキ焼いてくれ」
「おい、外のプレート見えなかったか? 今は営業時間外だ。大体テメェは飯食わねぇだろうが」

そうだよね。そう書いてあったもんね。ちっとも悪びれずにそう言うナハトの方がおかしいよねぇ。
しかしお構いなしにズカズカ近寄っていくナハトはその人をカウンター越しに見て言った。

「ユラに食べさせたい」
「・・・・・・ユラ? 誰のことだ───って、おいおい、ガキをこんな酒場に連れ込むんじゃねぇよ! 教育に悪いわ!」

ポンポンと飛び交う会話にツッコむタイミングが分からずにぽけっと見ていたら、ナハトの言葉に腕に抱えられていた僕に気付いたらしい。
店内は薄暗かったし。

そんでもってその認識は正しいよね。子供にはよくないよね。このイケオジは至極真っ当な人みたい。
でも残念。僕はとっくに大人なんだなー。

「ユラと言います。成人してますのでお気遣いなく。何ならお酒飲めます。・・・・・・お金ないですけど」
「───はぁっ!? 小っさ、いや・・・・・・おいおまっ、どういうことだ! 攫ってきたのか!?」

小っさいくだりでちょっと睨んだら言うのを躊躇ったワイルドイケオジ。そして誤魔化すかのようにナハトにツッコんだ。

「失礼な。攫っては・・・・・・いない、よな? 一応断って連れて来たよな?」

そう言ってちょっと不安げに僕を見るナハトをちょっと可愛いとか思いながら無表情で頷く。
一応、同意の上だったよね? 寝て目覚めたらナハトの家で驚きはしたけど。

「うん」
「・・・・・・ホントかよ?」

アレ、服飾店で疲れてたせいで無表情で言ったからか嘘と思われた?
無表情か愛想笑いがデフォルトだからつい。次は愛想笑いにしよう。

そんなことを思っていたら、ここでもナハトはきっぱりと宣言した。

「ユラは俺の運命の番いなんだ」
「───へっ!? お前・・・・・・マジか───!?」

どこでも驚かれるこの反応・・・・・・。
運命の番いという存在が凄いのか、番いが出来たナハトに驚いてるのか?

まぁ、ここで聞くことじゃないと思うので今はスルーする。
帰ったら説明するってナハトが言ってたもんな。

───ところでこのワイルドイケオジは誰なんだろう? 名前教えてくれないかなー?










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