8 / 23
第二章 出会いと別れは突然に
襲撃
しおりを挟む
自分を取り巻く人影は四人。対する自分は丸腰である。いくら「魔法使い」の修行の一環で実践的な体術を習っていたとはいえ、真っ向から対峙するにはきつい人数だった。
「お譲ちゃん……俺らに会ったのが運の尽きだったなぁ? とりあえず金目のものはすべて俺らに渡してもらってから、みんなで楽しいことをしようかぁ……」
ゲヘヘ、と下品に笑う体格のいい一人の男が一歩近づく。ほかの三人もその動きに合わせて足を踏み出し、取り巻きの輪を縮めていく。
(──嫌だ、気持ち悪い。捕まりたくない。触られたくない!)
リリスは唇をかみ締めた。なんと運の悪いことだろう。何か武器でも買っておけばよかったと嘆きたくなるほど、今の状態は絶体絶命だった。捕まれば、見ぐるみを剥がされたあと、男たちの手慰み者になるのは目に見えている。それなら抵抗せずに捕まるより、一か八か血路を開くほうがまだましだった。注意深く彼らを観察し、一番ひ弱そうな痩せた男に目をつける。 あの男なら多少攻撃を食らわせればどうにかなりそうだ。
男たちがじりじりと迫りくる中、リリスが動いたのは一番体格のいい男の手が伸びてきたときだった。身を低くして狙いをつけた男に突っ込み、みぞおちに体当たりを食らわせる。 不意打ちにひるむ男が一瞬遅れで伸ばした手首をつかみ、力の反動を利用して投げ飛ばす。 とっさに受身を取れなかった男は無様に起き上がれないまま地面に転がった。
これで一人終わり。残された男たちは何が起こったのか、すぐには理解できていなかった。だが地面に転がされた仲間を見るなり、三人全員でリリスへと飛び掛ってくる。さすがにこれはリリスもかわしきれず、二人の攻撃をよけたところで三人目にマントの布地を捉えられ、あっという間に身動きを封じられてしまった。
「手間かけさせやがってこの女……そんなに可愛がって欲しいなら存分に可愛がってやるぜぇ!」
「いやあぁっ!!」
すっ、とマントの下へと入れられた手に激しい嫌悪感を覚え、リリスは大きな悲鳴を上げる。 肌に直接触る生暖かい手と耳にかかる荒い息が酷く気持ち悪かった。
(こいつに良いようにされるくらいなら……!)
歯を食いしばって嫌悪感を押さえ込み、頭だけ回転させて振り返る。 覚悟を決め、自分を後ろから羽交い絞めにする男の二の腕に思い切り噛み付いた。
「いってぇ! お前なにしやがるっ!! おい、こいつを押さえろ!」
思わぬところからの攻撃はさすがに意表を突かれたのか、男は一瞬ひるんで仲間の男たちに声をかける。 その隙にするりと腕の中から抜け出すことに成功したリリスは山道にむかって走り出した。だが今度はすぐに男たちも反応し、後ろから追いかけてきた。足の速度では到底男たちに叶わないリリスはあっというまに長い髪をつかまれ、強い力で引き戻されてしまう。髪の毛が根こそぎ引っこ抜かれそうな痛みに顔をしかめると、男は下品に笑い、腕を勢いよく前へ突き出した。
「ぐぅ……っ!」
「少し静かにしておいてくれよ。ねぐらへ帰ってからたっぷり可愛がってやるからな!」
手加減なしにみぞおちへ一発入れられ、リリスの視界が暗転する。 必死で意識を保とうとするが、どんどん暗くなっていく視界に抗うことはできなかった。今意識を失ってしまったらだめだ──そう思っても、止められない。 痛みで頭がしびれ、視界が黒に埋め尽くされていく。 そうしてリリスは完全に意識を手放した。
「お譲ちゃん……俺らに会ったのが運の尽きだったなぁ? とりあえず金目のものはすべて俺らに渡してもらってから、みんなで楽しいことをしようかぁ……」
ゲヘヘ、と下品に笑う体格のいい一人の男が一歩近づく。ほかの三人もその動きに合わせて足を踏み出し、取り巻きの輪を縮めていく。
(──嫌だ、気持ち悪い。捕まりたくない。触られたくない!)
リリスは唇をかみ締めた。なんと運の悪いことだろう。何か武器でも買っておけばよかったと嘆きたくなるほど、今の状態は絶体絶命だった。捕まれば、見ぐるみを剥がされたあと、男たちの手慰み者になるのは目に見えている。それなら抵抗せずに捕まるより、一か八か血路を開くほうがまだましだった。注意深く彼らを観察し、一番ひ弱そうな痩せた男に目をつける。 あの男なら多少攻撃を食らわせればどうにかなりそうだ。
男たちがじりじりと迫りくる中、リリスが動いたのは一番体格のいい男の手が伸びてきたときだった。身を低くして狙いをつけた男に突っ込み、みぞおちに体当たりを食らわせる。 不意打ちにひるむ男が一瞬遅れで伸ばした手首をつかみ、力の反動を利用して投げ飛ばす。 とっさに受身を取れなかった男は無様に起き上がれないまま地面に転がった。
これで一人終わり。残された男たちは何が起こったのか、すぐには理解できていなかった。だが地面に転がされた仲間を見るなり、三人全員でリリスへと飛び掛ってくる。さすがにこれはリリスもかわしきれず、二人の攻撃をよけたところで三人目にマントの布地を捉えられ、あっという間に身動きを封じられてしまった。
「手間かけさせやがってこの女……そんなに可愛がって欲しいなら存分に可愛がってやるぜぇ!」
「いやあぁっ!!」
すっ、とマントの下へと入れられた手に激しい嫌悪感を覚え、リリスは大きな悲鳴を上げる。 肌に直接触る生暖かい手と耳にかかる荒い息が酷く気持ち悪かった。
(こいつに良いようにされるくらいなら……!)
歯を食いしばって嫌悪感を押さえ込み、頭だけ回転させて振り返る。 覚悟を決め、自分を後ろから羽交い絞めにする男の二の腕に思い切り噛み付いた。
「いってぇ! お前なにしやがるっ!! おい、こいつを押さえろ!」
思わぬところからの攻撃はさすがに意表を突かれたのか、男は一瞬ひるんで仲間の男たちに声をかける。 その隙にするりと腕の中から抜け出すことに成功したリリスは山道にむかって走り出した。だが今度はすぐに男たちも反応し、後ろから追いかけてきた。足の速度では到底男たちに叶わないリリスはあっというまに長い髪をつかまれ、強い力で引き戻されてしまう。髪の毛が根こそぎ引っこ抜かれそうな痛みに顔をしかめると、男は下品に笑い、腕を勢いよく前へ突き出した。
「ぐぅ……っ!」
「少し静かにしておいてくれよ。ねぐらへ帰ってからたっぷり可愛がってやるからな!」
手加減なしにみぞおちへ一発入れられ、リリスの視界が暗転する。 必死で意識を保とうとするが、どんどん暗くなっていく視界に抗うことはできなかった。今意識を失ってしまったらだめだ──そう思っても、止められない。 痛みで頭がしびれ、視界が黒に埋め尽くされていく。 そうしてリリスは完全に意識を手放した。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
どうぞお好きになさってください
みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。
婚約者の第一王子殿下は言った。
「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」
公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。
「好きになさればよろしいわ」
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる