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第三章 天青と藍晶は闇夜に輝く
仮契約
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「さっさと答えを出せ。 我はあまり待つのは好きではないのだ」
「お願い、少しだけこの人と話をさせてちょうだい。すぐに済むから。そうしたら、私はあなたのところへ行くわ」
焦れる青の妖魔への返答は、リリス自身が驚くほどに冷静だった。もちろん、その言葉は出任せである。窮地から抜け出す手があるという男の言葉を信じて、最後の手にかけてみたかった。
リリスの言葉に反抗するかと思われた妖魔は、意外にも大人しく一歩引いた。戦いが長引けば、最悪相打ちになりそうなほどの気迫を男から感じたのだろう。 多少は妖魔のほうも怪我を負っているようだった。
「お前、本気なのか?」
「一発逆転できる方法があるんでしょう。そのやり方を教えてちょうだい」
「やむを得ない。多少お前にも覚悟が伴うが……」
「かまわないわ。話して」
「わかった、単刀直入に言おう。お前の魔力を貸して欲しい」
その言葉にリリスは大きく目を見開いた。『魔力を貸して欲しい』ということはつまり――。
「魔法使いの契約を結ぶの……?」
まさか、と思って問いかけると、男はあいまいに頷いた。
「正式なものではない。仮契約の形で魔力をもらう」
「仮、契約……?」
「すまないが、時間が無いんだ。説明している暇も無い」
そういわれて青の妖魔のほうへ視線を移すと、もう我慢の限界のようだった。リリスが来ないのなら自分が行ってやるとばかりに、じりじりと少しずつ歩み寄ってくる。
「説明なく仮契約を結ぶことを許してほしい。あくまで仮であって本当に契約するわけではないし、妖魔の契約に近いもので契約破棄に何の制約もつかない。 だから安心してくれ」
「遅いぞ、小娘、時間だ! 我のところへ来てもらおう!」
吼えるように妖魔が叫ぶのと、男が立ち上がるのとは同時だった。何をされるのかわからぬままに手を引かれ、リリスは共に立ち上がる。すまない、というささやきとともに唇へ降ってきたのは柔らかな感触だった。
「――?!」
優しく触れるように口付けられているだけなのに、体中の力が吸い取られていくようだった。遠慮がちに唇をついばまれ、そのたびに体から魔力がなくなっていく。酸欠でぼうっとする頭で状況を理解した時にはもう、男の唇はリリスから離れていた。
「こいつはお前に渡さない。さあ、観念しろ」
「仮契約を結んだだと? さては小娘、我を謀ったな! ええい許さぬ、許さぬぞ!!」
気づけば男の体には妖魔を遥かに凌ぐ魔力が宿り、傷はすべて癒えていた。騙され怒り狂った妖魔がこちらへ突進してきたが、男は顔色一つ変えずに迎え撃つ。ふたつ、みっつと放たれた光の玉の威力は桁違いのすさまじい力だった。
あっという間に行く手を阻まれ、今度は逆に傷だらけとなった妖魔は悔しがって地団太を踏んだ。だが男の持つ力に形勢不利だと感じたのか、あまり粘ることなく後退を始める。追いかけるようにして男がもう二、三発魔力を込めた球を放つと、妖魔の姿は完全に姿を消した。
「終わった、の……?」
「ああ、終わった」
「よかった……」
訪れた静寂の中、リリスは目の前の事が信じられずにぼんやりと問いかける。はっきりと答えてくれる男の言葉に、戦いが終わったことを実感した。安心したせいなのか、これまでの疲労が一気におしよせ、ふっと体から力が抜けていく。慌てて支えてくれる男の手にすがったものの、少しずつ意識は遠のいていった。
「おい、お前……?!」
暗転する視界の中。最後に聞いたのは、ひどく慌てる男の声だった。
「お願い、少しだけこの人と話をさせてちょうだい。すぐに済むから。そうしたら、私はあなたのところへ行くわ」
焦れる青の妖魔への返答は、リリス自身が驚くほどに冷静だった。もちろん、その言葉は出任せである。窮地から抜け出す手があるという男の言葉を信じて、最後の手にかけてみたかった。
リリスの言葉に反抗するかと思われた妖魔は、意外にも大人しく一歩引いた。戦いが長引けば、最悪相打ちになりそうなほどの気迫を男から感じたのだろう。 多少は妖魔のほうも怪我を負っているようだった。
「お前、本気なのか?」
「一発逆転できる方法があるんでしょう。そのやり方を教えてちょうだい」
「やむを得ない。多少お前にも覚悟が伴うが……」
「かまわないわ。話して」
「わかった、単刀直入に言おう。お前の魔力を貸して欲しい」
その言葉にリリスは大きく目を見開いた。『魔力を貸して欲しい』ということはつまり――。
「魔法使いの契約を結ぶの……?」
まさか、と思って問いかけると、男はあいまいに頷いた。
「正式なものではない。仮契約の形で魔力をもらう」
「仮、契約……?」
「すまないが、時間が無いんだ。説明している暇も無い」
そういわれて青の妖魔のほうへ視線を移すと、もう我慢の限界のようだった。リリスが来ないのなら自分が行ってやるとばかりに、じりじりと少しずつ歩み寄ってくる。
「説明なく仮契約を結ぶことを許してほしい。あくまで仮であって本当に契約するわけではないし、妖魔の契約に近いもので契約破棄に何の制約もつかない。 だから安心してくれ」
「遅いぞ、小娘、時間だ! 我のところへ来てもらおう!」
吼えるように妖魔が叫ぶのと、男が立ち上がるのとは同時だった。何をされるのかわからぬままに手を引かれ、リリスは共に立ち上がる。すまない、というささやきとともに唇へ降ってきたのは柔らかな感触だった。
「――?!」
優しく触れるように口付けられているだけなのに、体中の力が吸い取られていくようだった。遠慮がちに唇をついばまれ、そのたびに体から魔力がなくなっていく。酸欠でぼうっとする頭で状況を理解した時にはもう、男の唇はリリスから離れていた。
「こいつはお前に渡さない。さあ、観念しろ」
「仮契約を結んだだと? さては小娘、我を謀ったな! ええい許さぬ、許さぬぞ!!」
気づけば男の体には妖魔を遥かに凌ぐ魔力が宿り、傷はすべて癒えていた。騙され怒り狂った妖魔がこちらへ突進してきたが、男は顔色一つ変えずに迎え撃つ。ふたつ、みっつと放たれた光の玉の威力は桁違いのすさまじい力だった。
あっという間に行く手を阻まれ、今度は逆に傷だらけとなった妖魔は悔しがって地団太を踏んだ。だが男の持つ力に形勢不利だと感じたのか、あまり粘ることなく後退を始める。追いかけるようにして男がもう二、三発魔力を込めた球を放つと、妖魔の姿は完全に姿を消した。
「終わった、の……?」
「ああ、終わった」
「よかった……」
訪れた静寂の中、リリスは目の前の事が信じられずにぼんやりと問いかける。はっきりと答えてくれる男の言葉に、戦いが終わったことを実感した。安心したせいなのか、これまでの疲労が一気におしよせ、ふっと体から力が抜けていく。慌てて支えてくれる男の手にすがったものの、少しずつ意識は遠のいていった。
「おい、お前……?!」
暗転する視界の中。最後に聞いたのは、ひどく慌てる男の声だった。
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