40 / 87
第三章 ささえ
(8) 灯台下暗し
しおりを挟む
気づけば、三人は元の場所に帰ってきていた。
さっきから何度か声を掛けようとしていたものの、わたしが涙を流しながらへらへら笑っていたから、気味悪がってできなかったみたいだ。
その時、突然耳の奥で別の女性がシオリさんに声を掛けたのを感じた。
同じユニットのメンバーらしきその人は、少しだけ出掛けるようだ。
そしてドアの開く音が聞こえた時、目の前のバーから一人の背の高い女性が出てきた。
なんだ、そこにいたんだ。
これを灯台下暗し、っていうのかな。
わたしは思わず笑みを浮かべて立ち上がると、キョトンとする三人を連れてバーの方へと向かった。
店に入る直前、シオリさんが再び話し始めたようだ。
彼女の言葉を耳に刻みながら、わたしは木製のドアを思いっきり開ける。
「……それに、あたしは君が変われるって確信してるんだ。
だって君にもさ、今のあたしと同じで、君のことを見つけ出して、そして支え合っていけるような、大事な仲間がちゃんといるじゃん!」
バーの中は、お洒落で落ち着いていた。
カウンターやテーブルはすべて木製で、奥には簡単なステージが用意されている。
入るなり、ぶっきらぼうな店員さんが訝しげに睨みつけてきた。
でも奥から、あたしたちの連れだよー、という声を聞いて、渋々店内に通してくれた。
テーブル席には、大人の女性たちが数人固まって、仲良く喋っていた。
そして、カウンターの方には黒くてセンスのいい帽子をかぶった女性と、そして梢ちゃんがいた。
わたしは走って駆け寄るなり、梢ちゃんの身体を思い切り抱きしめる。
そして、突然のことにあわあわしている彼女に向けて、精一杯謝った。
「ごめん、梢ちゃん! 一人にして。寂しい思いをさせて。本当にわたしたち、先輩失格だよ。こんな可愛い後輩を置いてきぼりにして、先に行っちゃうなんてさ。かなり反省してる。
だから、こんなわたしたちで良ければ、これからも引き続き応援して、そしてファンでいてくれないかな。厚かましいお願いだってことはわかってるけど、もう二度と一人ぼっちにはさせないから。
きっと頼れる、かっこいい先輩でいるから!」
梢ちゃんも、やがて次第に声を震わせながら喋り始める。
「……わたし、わたし、嬉しいです。こうして見捨てないで、ちゃんと捜し出してくれて。今まで、ずっと怖かった。人と接するのが。自分の夢を追うことが。
でも、今日シオリさんと出会えて、そして先輩方とも遊べて、とても楽しかった。それだけで、わたし、凄く幸せです!
だから、改めて伝えます。勝手にはぐれてしまって、本当にすみませんでした。そして、こんなわたしですが、これからも、どうかみなさんのファンでいさせてください!」
最初は小さかった声も、終わりの方では店中に響くような大きな声になっていた。
わたしは、梢ちゃんから少しだけ離れると、手を前に大きく差し出す。
そして後ろを振り向くと、早百合たちもそっと腕を伸ばしてきた。
四本の手が、そして一番上に小さな手が、綺麗に重なった。
どこからともなく、拍手の音が聞こえてくる。
気づけば、『ハミングバード』のみなさんが、口笛を鳴らしながら祝福してくれていた。
シオリさんが、梢ちゃんに近づいてそっと囁く。
「よかったね。みんなにまた会えて。これからもお互い支え合って、頑張りなよ」
梢ちゃんは、今まで見た中で一番大きく頷いた。
その逞しい表情にシオリさんは満足気な顔をすると、ふと何かに気づいたように出入口の方を見た。
その後、何事もなかったかのように戻ったものの、実はわたしにはしっかり見えていた。
店の出入口のそばで、ナナ様がにこやかに微笑んで、こちらに手を振っていたことが。
さっきから何度か声を掛けようとしていたものの、わたしが涙を流しながらへらへら笑っていたから、気味悪がってできなかったみたいだ。
その時、突然耳の奥で別の女性がシオリさんに声を掛けたのを感じた。
同じユニットのメンバーらしきその人は、少しだけ出掛けるようだ。
そしてドアの開く音が聞こえた時、目の前のバーから一人の背の高い女性が出てきた。
なんだ、そこにいたんだ。
これを灯台下暗し、っていうのかな。
わたしは思わず笑みを浮かべて立ち上がると、キョトンとする三人を連れてバーの方へと向かった。
店に入る直前、シオリさんが再び話し始めたようだ。
彼女の言葉を耳に刻みながら、わたしは木製のドアを思いっきり開ける。
「……それに、あたしは君が変われるって確信してるんだ。
だって君にもさ、今のあたしと同じで、君のことを見つけ出して、そして支え合っていけるような、大事な仲間がちゃんといるじゃん!」
バーの中は、お洒落で落ち着いていた。
カウンターやテーブルはすべて木製で、奥には簡単なステージが用意されている。
入るなり、ぶっきらぼうな店員さんが訝しげに睨みつけてきた。
でも奥から、あたしたちの連れだよー、という声を聞いて、渋々店内に通してくれた。
テーブル席には、大人の女性たちが数人固まって、仲良く喋っていた。
そして、カウンターの方には黒くてセンスのいい帽子をかぶった女性と、そして梢ちゃんがいた。
わたしは走って駆け寄るなり、梢ちゃんの身体を思い切り抱きしめる。
そして、突然のことにあわあわしている彼女に向けて、精一杯謝った。
「ごめん、梢ちゃん! 一人にして。寂しい思いをさせて。本当にわたしたち、先輩失格だよ。こんな可愛い後輩を置いてきぼりにして、先に行っちゃうなんてさ。かなり反省してる。
だから、こんなわたしたちで良ければ、これからも引き続き応援して、そしてファンでいてくれないかな。厚かましいお願いだってことはわかってるけど、もう二度と一人ぼっちにはさせないから。
きっと頼れる、かっこいい先輩でいるから!」
梢ちゃんも、やがて次第に声を震わせながら喋り始める。
「……わたし、わたし、嬉しいです。こうして見捨てないで、ちゃんと捜し出してくれて。今まで、ずっと怖かった。人と接するのが。自分の夢を追うことが。
でも、今日シオリさんと出会えて、そして先輩方とも遊べて、とても楽しかった。それだけで、わたし、凄く幸せです!
だから、改めて伝えます。勝手にはぐれてしまって、本当にすみませんでした。そして、こんなわたしですが、これからも、どうかみなさんのファンでいさせてください!」
最初は小さかった声も、終わりの方では店中に響くような大きな声になっていた。
わたしは、梢ちゃんから少しだけ離れると、手を前に大きく差し出す。
そして後ろを振り向くと、早百合たちもそっと腕を伸ばしてきた。
四本の手が、そして一番上に小さな手が、綺麗に重なった。
どこからともなく、拍手の音が聞こえてくる。
気づけば、『ハミングバード』のみなさんが、口笛を鳴らしながら祝福してくれていた。
シオリさんが、梢ちゃんに近づいてそっと囁く。
「よかったね。みんなにまた会えて。これからもお互い支え合って、頑張りなよ」
梢ちゃんは、今まで見た中で一番大きく頷いた。
その逞しい表情にシオリさんは満足気な顔をすると、ふと何かに気づいたように出入口の方を見た。
その後、何事もなかったかのように戻ったものの、実はわたしにはしっかり見えていた。
店の出入口のそばで、ナナ様がにこやかに微笑んで、こちらに手を振っていたことが。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
煙草屋さんと小説家
男鹿七海
キャラ文芸
※プラトニックな関係のBL要素を含む日常ものです。
商店街の片隅にある小さな煙草屋を営む霧弥。日々の暮らしは静かで穏やかだが、幼馴染であり売れっ子作家の龍二が店を訪れるたびに、心の奥はざわめく。幼馴染としてでも、客としてでもない――その存在は、言葉にできないほど特別だ。
ある日、龍二の周囲に仕事仲間の女性が現れ、霧弥は初めて嫉妬を自覚する。自分の感情を否定しようとしても、触れた手の温もりや視線の距離が、心を正直にさせる。日常の中で少しずつ近づく二人の距離は、言葉ではなく、ささやかな仕草や沈黙に宿る。
そして夜――霧弥の小さな煙草屋で、龍二は初めて自分の想いを口にし、霧弥は返事として告白する。互いの手の温もりと目の奥の真剣さが、これまで言葉にできなかった気持ちを伝える瞬間。静かな日常の向こうに、確かな愛が芽吹く。
小さな煙草屋に灯る、柔らかく温かな恋の物語。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる