夢ノ瀬日記

夢ノ瀬 日和

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7月31日

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 鼓膜に心臓が生えてきたようだ。
 酷い空腹感と体にこもる熱、うだるような寒気。あとは現実へ引き留める夢。
 眠れぬ夜を布団の中に隠せば、セミが性を求めてくる。厳しい夏を匂う。エアコンとサーキュレーターの音が混じり、心臓をたたく。
 このまま蠱毒に死ねたらいいのに。意識が飛ぶ度に空腹の夢がとおせんぼする。自死を選べばどうなるか。風が窓をノックした。他殺なんてもってのほかだろう。浅い呼吸にあくびが出る。ラクになれる方法は無んだろう。なにもしない苦しみを文字に起こしては消していく。孤独を友達にできればいいのに。特定少数には言いづらい本音を。豚に真珠、猫に小判、俺の生。空っぽの胃に吐き気止めを詰め込んで。身も蓋も意味もない。眠剤と抗うつ薬は躊躇した。終えるしか道のない欠陥品。胃が荒れそうで怖い。爆発音とセミの声、朝を告げるアラームに布擦れ。耳から心臓が吹き出そうだ。

 果てのない思考に犯される。荒波の中で押しつぶされる理性が呼び止めた。

「みずが、ほしい」

 薬と毒とゴミしか入っていない俺の身体は重く熱く冷たく動かない。

「みず、ほしい」

 目から流れてきた水を舐める。ぬるくあじがしない。口の中で広がった鉄の味に脳が歓喜する。舌がピリつく。辛みに似た苦痛。なのに、今の俺には悦楽なのだ。
 生きている。苦しい。いきている。うれしい。息している。浅ましい。いきしている。気持ちがいい。遺棄をしている。過去も未来も道徳も。全て遺棄をしている。
 単純な快楽だけ欲する脳。拒否する脳。ささやかな幸せを欲する脳。拒絶する脳。矛盾していく思考とNOで埋まっていく。

 カブトムシの幼虫に翅が生えたような虫が腹に乗る。八つの瞳が俺を睨む。俺のようで気持ち悪い。シャーペンで刺せば、赤い血が滴った。どうやら逃がしてしまったらしい。黒鉛が取り残された腹がほんのり血を流してえぐれている。もうつかれた。ゆっくり目を閉じる。

 鼓膜の心臓が膨れたようだ。
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