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十四、グラマー市長の乳攻撃
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情報誌「ブリグストンズ速報」より
「先ごろ、我が都市最悪の凶悪犯、ペテロギウスがアルトトラズ刑務所を脱獄し、目下チルアウトゾーン内を北へ逃走中。奴は邪教ミズダヤスト教の教祖であり、冥界より無数の悪霊を復活させ、チルアウトゾーン全土を支配する、という恐るべき計略をもくろんでいる。
北部には、死者復活に最適と言われる土地、ゾンダーがあり、我がブリグストンズ市警は、なんとしても奴がそこへたどりつくことを阻止すべく、現在追跡中である。
新しい情報が入り次第、追って伝える」
「ゾンダーへようこそ!」
部屋へ入るや、いきなりふくよかな声で景気よく言った女を一目見て、桃香はとてつもなくヤバいと踏み、眉間にガーッとしわが寄って、眉が吊りあがった。だが、その警戒も瞬時に、奈落に落ちたような驚がくに変わった。女はそのでかい胸にでかい尻の豊満な肉体をゆらし、見事なくびれを持つ腰をやや振って、なんといきなり両腕をがばっと広げて一樹に抱きつき、その巨峰のような胸の中へ、彼の顔面をずぶずぶ埋めまくったのである。
「ぶ、ぶはああっ!」
あわてて顔を引っぺがし、「な、なにするん――」と抗議しかけたとき、彼は隣で桃香も同じ目にあうのを見た。
「ぐ、ぐはあっ! やめてっ!」
窒息しかけ、必死にその風船のような肉を突き飛ばした桃香に、女は苦笑してわびた。
「あら、ごめんなさい。ハグはこの土地のあいさつなんですよ」
「ふ、普通にハグればいいのに、なんで顔を胸に押しつけるんですかっ!」と、まっかになって怒る桃香。
「これは、たんに私のくせで……」
「そんなくせ、なおせよ!」
「も、桃香、よせ」
一樹がなだめると、彼女はしかたなく黙った。そして相手をじろじろ見た。
ったく、ムカつく女だぜ。ベージュの背広にタイトスカートを着けた体だけじゃなく、顔も肉づきがよくて、こんにゃくみたいにぷにぷにしてやがる。なのに、顔はやたらに端正なうりざね。その切れ長のするどい目や、赤く小さな唇、右側でゆわえた長い黒髪などは、どこかアジア的だが、褐色肌なので、エスニックな美人女優のおもむき。だがなによりヤバいのは、背広の胸元からはみ出そうなほどに、はち切れそうにでかい巨乳である。歳は三十から四十……いや、こんな役職だから、軽く五十は行ってるかも。
桃香は、いまの言動プラスこの容ぼうで、一気にこいつのことがきらいになった。
「私がこのエスクリック市の市長、マキゾネです」
女がそう言って手を出して一樹と握手したので、またキレそうになった。
「握手するなら、ハグいらないじゃん!」
「あーら、娘さん、ハグがおきらいですか?」
一樹を向いて、のん気に言うので、再度キレかかったが、一樹が先に制した。
「いえ、娘じゃないんです」
「では、めい御さん?」
「いや、めいでも――」
「じゃあ、ご友人の娘さん? まさか、お孫さんではありませんよね? いや待て、ありうるな。この前も……」と一人であれこれ考え出す。
ガキあつかいは慣れているが、バカにやられるとムカつく。恋人だと豪語しようとしたとき、一樹が横から彼女の肩を抱いて、市長にドヤ顔を向け、きっぱりと言った。
「違います。彼女は――僕の母です」
(い、いかん、こいつもバカだ……!)
そう思ったが、うれしさのほうが勝って、なにも言えなかった。マキゾネ市長は、もっと困惑するかと思いきや、腕を組んで納得したようにほほえんだ。
「そうですか、かわいらしいお母さまですね」
「あのう、ここはそういう人が多いんですか?」
一樹が聞くと、マキゾネは、なんでもないように続けた。
「はい、先日も魔術で二十歳ほど若がえった方がいまして。親が、お子さんよりさらに子供の年齢に戻ることは、可能です」
「へえ、そりゃすごい」
「はい、ほかにも――そうですね」と考えて、「たとえば、子供でも、なろうと思えば大人の親になることが出来ます。普通は無理な相談ですが、子供が魔術師のところへ行けば、子育てのスキルなどを身に着けられるアイテムをもらえます。魔法を使えば、不可能はありません。このエスクリックは、そういう町です」
一樹の顔がくもった。まずい、幼児期のことを思いだしたようだ。そもそも、母親の父親役を務めなければ捨てられる、という無理ゲーを子供のころに押しつけられたのが、彼の不幸と苦しみの原点だからだ。
桃香はあわてて、話題をずらした。
「そ、それでは、ここではオカルトや心霊のたぐいが、ふつうのこととして認知されているわけですね?」
「そのとおりです。お母さま、ご聡明ですね」とマキゾネ。誰でも分かるわ、そんなこと。
しかし、わいたムカつきを消し飛ばすような言葉が、すぐ相手の口から出た。
「さすがは、アシザワ・カズキさまのお母さまですね」
「えっ、ぼくを知ってるんですか?」
おどろく一樹に、「はい」と、あごをしゃくりそうな位置に来て、続ける。おい、近づきすぎだろ。
「エスクリックは情報が発達しております。あなたさまのお噂は、全て入っておりますよ」
マキゾネは両腕を大きく広げて無駄に乳をぶんぶんゆらし、今にもハグしそうな体勢で一樹にさけんだ。
「目下、三十五の町で膨大な悩める市民を救い、数々の伝説を作り続けるスーパーヒーロー、アシザワ・カズキ! おのおの三十二の町で彼をたたえる銅像が建つ、まさにチルアウトゾーン稀代の英雄、アシザワ・カズキ!」
顔がまっかになる一樹。彼の鬱を追い払ってくれたのはいいが、見ていると、いやな予感しかしない。
「あなたにお会いできて、本当に、光栄のきわみですううううー!」
案の定、彼に抱きつこうとしてよけられ、後ろのロッカーに額を思いっきりぶつけて、流血した。
「先ごろ、我が都市最悪の凶悪犯、ペテロギウスがアルトトラズ刑務所を脱獄し、目下チルアウトゾーン内を北へ逃走中。奴は邪教ミズダヤスト教の教祖であり、冥界より無数の悪霊を復活させ、チルアウトゾーン全土を支配する、という恐るべき計略をもくろんでいる。
北部には、死者復活に最適と言われる土地、ゾンダーがあり、我がブリグストンズ市警は、なんとしても奴がそこへたどりつくことを阻止すべく、現在追跡中である。
新しい情報が入り次第、追って伝える」
「ゾンダーへようこそ!」
部屋へ入るや、いきなりふくよかな声で景気よく言った女を一目見て、桃香はとてつもなくヤバいと踏み、眉間にガーッとしわが寄って、眉が吊りあがった。だが、その警戒も瞬時に、奈落に落ちたような驚がくに変わった。女はそのでかい胸にでかい尻の豊満な肉体をゆらし、見事なくびれを持つ腰をやや振って、なんといきなり両腕をがばっと広げて一樹に抱きつき、その巨峰のような胸の中へ、彼の顔面をずぶずぶ埋めまくったのである。
「ぶ、ぶはああっ!」
あわてて顔を引っぺがし、「な、なにするん――」と抗議しかけたとき、彼は隣で桃香も同じ目にあうのを見た。
「ぐ、ぐはあっ! やめてっ!」
窒息しかけ、必死にその風船のような肉を突き飛ばした桃香に、女は苦笑してわびた。
「あら、ごめんなさい。ハグはこの土地のあいさつなんですよ」
「ふ、普通にハグればいいのに、なんで顔を胸に押しつけるんですかっ!」と、まっかになって怒る桃香。
「これは、たんに私のくせで……」
「そんなくせ、なおせよ!」
「も、桃香、よせ」
一樹がなだめると、彼女はしかたなく黙った。そして相手をじろじろ見た。
ったく、ムカつく女だぜ。ベージュの背広にタイトスカートを着けた体だけじゃなく、顔も肉づきがよくて、こんにゃくみたいにぷにぷにしてやがる。なのに、顔はやたらに端正なうりざね。その切れ長のするどい目や、赤く小さな唇、右側でゆわえた長い黒髪などは、どこかアジア的だが、褐色肌なので、エスニックな美人女優のおもむき。だがなによりヤバいのは、背広の胸元からはみ出そうなほどに、はち切れそうにでかい巨乳である。歳は三十から四十……いや、こんな役職だから、軽く五十は行ってるかも。
桃香は、いまの言動プラスこの容ぼうで、一気にこいつのことがきらいになった。
「私がこのエスクリック市の市長、マキゾネです」
女がそう言って手を出して一樹と握手したので、またキレそうになった。
「握手するなら、ハグいらないじゃん!」
「あーら、娘さん、ハグがおきらいですか?」
一樹を向いて、のん気に言うので、再度キレかかったが、一樹が先に制した。
「いえ、娘じゃないんです」
「では、めい御さん?」
「いや、めいでも――」
「じゃあ、ご友人の娘さん? まさか、お孫さんではありませんよね? いや待て、ありうるな。この前も……」と一人であれこれ考え出す。
ガキあつかいは慣れているが、バカにやられるとムカつく。恋人だと豪語しようとしたとき、一樹が横から彼女の肩を抱いて、市長にドヤ顔を向け、きっぱりと言った。
「違います。彼女は――僕の母です」
(い、いかん、こいつもバカだ……!)
そう思ったが、うれしさのほうが勝って、なにも言えなかった。マキゾネ市長は、もっと困惑するかと思いきや、腕を組んで納得したようにほほえんだ。
「そうですか、かわいらしいお母さまですね」
「あのう、ここはそういう人が多いんですか?」
一樹が聞くと、マキゾネは、なんでもないように続けた。
「はい、先日も魔術で二十歳ほど若がえった方がいまして。親が、お子さんよりさらに子供の年齢に戻ることは、可能です」
「へえ、そりゃすごい」
「はい、ほかにも――そうですね」と考えて、「たとえば、子供でも、なろうと思えば大人の親になることが出来ます。普通は無理な相談ですが、子供が魔術師のところへ行けば、子育てのスキルなどを身に着けられるアイテムをもらえます。魔法を使えば、不可能はありません。このエスクリックは、そういう町です」
一樹の顔がくもった。まずい、幼児期のことを思いだしたようだ。そもそも、母親の父親役を務めなければ捨てられる、という無理ゲーを子供のころに押しつけられたのが、彼の不幸と苦しみの原点だからだ。
桃香はあわてて、話題をずらした。
「そ、それでは、ここではオカルトや心霊のたぐいが、ふつうのこととして認知されているわけですね?」
「そのとおりです。お母さま、ご聡明ですね」とマキゾネ。誰でも分かるわ、そんなこと。
しかし、わいたムカつきを消し飛ばすような言葉が、すぐ相手の口から出た。
「さすがは、アシザワ・カズキさまのお母さまですね」
「えっ、ぼくを知ってるんですか?」
おどろく一樹に、「はい」と、あごをしゃくりそうな位置に来て、続ける。おい、近づきすぎだろ。
「エスクリックは情報が発達しております。あなたさまのお噂は、全て入っておりますよ」
マキゾネは両腕を大きく広げて無駄に乳をぶんぶんゆらし、今にもハグしそうな体勢で一樹にさけんだ。
「目下、三十五の町で膨大な悩める市民を救い、数々の伝説を作り続けるスーパーヒーロー、アシザワ・カズキ! おのおの三十二の町で彼をたたえる銅像が建つ、まさにチルアウトゾーン稀代の英雄、アシザワ・カズキ!」
顔がまっかになる一樹。彼の鬱を追い払ってくれたのはいいが、見ていると、いやな予感しかしない。
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