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2 アサータ王国へ

閑話 マダナが”外泊”した朝、セクウの部屋でのお話

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アサータ王国に魔力を持つものが多いのはアサーダの湖に魔力回復の力があるからだとか、そもそも空気中に含まれる魔量が多く適正のない者は生きられないのではないかとか、単なる遺伝だと言う者もいるが本当のところは分かっていない。

「ん よく寝た」

この部屋の主であるセクウはパチリを目を開けて、身体を少し起こして隣のクッションの上で寝ているコドモトビネコをみる。そっと手を伸ばしてコドモトビネコを撫でてからふっと息を吐いた。

「寝てる間に心を読むことはできないみたいだね。君が言うレーナの事を知りたいんだけど、起きたら教えてくれるかい?」

夕べ、突然窓から何か動物が飛び込んできた時、セクウは反射的に抱き留めた。
それは自分の魔法に自信があったからなのかもしれないし、ベッドに寝込んでいる生活に飽き飽きして終わりを求めていたからかもしれない。

抱き留めてみたらそれは王都で見る事は無いはずの魔獣コドモトビネコ。しかも魔法のリボンを咥えて居たり、思いがけないことにその考えていることが分かったり、
何か勘違いされて自分が”不法侵入者”だと思われていたり。

聞きたい事は山ほどあったがコドモトビネコがひどく弱っていることに気が付いた彼はとりあえず解放してやる。すると解放されると同時にコドモトビネコは眠ってしまった。

気持ちよさそうに眠るコドモトビネコを眺めていると寝室のドアが控え目にノックされ、セクウが瞬きすると静かにドアが開いた。

セクウはコドモトビネコを隠すようにして、ノックの主から受け取った手紙に目を通し「是(よし)」と頷いた。

「やっぱり君はバルカ様やレーナリア嬢に関係があるようだね。調べても出てこない
レーナリア、噂通り”しいたげられた令嬢”をバルカ様が救い出してきのか、それともこの王城に乗り込んできた諜報員の可能性だってあるのに、父上はバルカ様にそんな必要はない。だもんなあ。もしかしたら君は取引のいい材料になってくれるかもしれないね」

ドアが閉まった後、優しい笑顔のままセクウは眠り続けるコドモトビネコに語り掛けた。

聞えたのか聞こえないのかコドモトビネコの耳がぴくぴくと動くのを見てセクウの顔から笑顔が消えてため息が漏れた。
指先でコドモトビネコの頭を優しくなでるとコドモトビネコはその指に頭を押し付けてくる。そのあきれるほどの警戒心の無さにセクウの口元から笑いが漏れた。

「次に生まれるときはボクも猫になりたいな でも 今は第二王子の務めを果さないとね」





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