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3 身代わり生活

7 初めての船遊び

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「オレ、城の外に出たことも殆どなくて、魔湖も初めてで、ヨットも初めてなんで失礼があったらごめん」

正直に打ち明けて謝ってしまう。レーナは目も見張り微笑み軽く頭を下げた

「わたくしのような者にまでお心使いありがとうございます」

うーんレーナ可愛い。本当はレーナだって王女なんだからそんなに遜ることないのにさ

「船をだしましょうか?」

船長らしきオジサンから声がかかった

「ヨットって風を受けて走るんだよね?」

そっと帆に風を送るけれど進まない。おかしいなあ、風力が足りないのかな?

「恐れながら、殿下はご自身の風でヨットを走らせようとお考えですか?」

オレが頷くとオジサンは楽しそうに笑ってヨットの走らせ方を説明してくれた。
それから もう少し沖にでたらオレの風で走らせてくれることも約束してくれた。


「ヒャッホーーー」

風魔法って生活するうえで便利だし護身術にもなっていいなあって思っていたけど
こんなに楽しいとは思わなかった。
船長は風魔法の上級使い手である上に風の精霊たちにも懐かれているみたいでオレの風が弱すぎても強すぎてもフォローしてくれるから、オレ自身が上級風使いになった気分。

「わたくしも操ってみていいですか?」

もちろん、とオレは首を縦に振り、船長の笑顔も確認する。そこからはまた輪をかけて楽しくなった。


はっと気が付くとマオリが俯いていた。それに護衛も心なしか青い顔をしている。たぶん今海賊(?)が襲ってきても戦えないだろうなあ。船酔いそれとも魔力酔いか、もしくは両方か?

車酔いも運転している人は大丈夫って言うから、魔力酔いも操作している人は大丈夫なのかな?

レーナと顔を見合わせて苦笑してから、あまり揺れないように気を付けながら岸に向かった。

マオリと護衛は岸についても青い顔のままおぼつかない足取りでタープへ向かいオレとレーナは湖岸を散歩する。

「マダナは大丈夫だったかしら?」

レーナがポケットから紫紺の魔獣石を取り出した。あ、連れてきてくれていたんだ。レーナがマダナを大切にしているのを見て悪い気はしない。

「マオリがね、マダナを魔湖に連れてきたいって言っていたの。マダナに足りないのは魔力だから、ここに連れてきたら元気になるんじゃないかって……」

レーナが湖畔の波打ち際すれすれのところに立ち止まる。

「それで、わたくしその時に想像しましたの」

レーナは両手の上に魔獣石を乗せてに散歩進む、今日のドレスは動きやすいように丈が短めだけれどそれでも あと一歩進んだら濡れてしまいそう。とオレの心配を他所にレーナがしゃがんだ

「マダナと一緒に水遊びをしたらきっとマダナも元気になるし、さぞかし楽しいだろうなあって」

待って!コドモトビネコって泳げないと思う。そこんところマオリに確認した?
『レーナってホントに面白いよね』セクウの楽しそうな声が聞えるのと同時に

「きゃあ」

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