異世界で吟遊詩人のパトロンになりました

水都(みなと)

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 腰まで届く紫がかった銀髪に、アメジストのような瞳。
 装飾のついたローブマントは上等なモノのように見えたが、貴族のそれとは違う。
 まるで舞台衣装のように、彼の幻想的な美しさを引き立てていた。

 驚いた。
 2次元でしかありえないと思っていた紫月ノエルの姿にそっくりだ。
 推しが2次元から飛び出してきた。そうとしか思えない。

 それでも、ノエルとはまた違う透明感のある歌声。それを乗せる竪琴の静かなメロディー。
 まるでこの世の者とは思えない、月から光臨してきたと言われても信じてしまいそうな神秘的な姿だ。
 膝に乗せた竪琴が三日月のような形をしているのも、その印象を際立たせている。
 
 その姿と歌声に見惚れていると、竪琴を爪弾いていた彼の白く細い指先がそっと離れる。
 ほう、と一斉に観客からのため息が聞こえ、そして拍手が沸いた。

「いやあ、噂通りだな。吟遊詩人」
「男にしとくのはもったいない美人だ」
「本当に男なのか? 男装してる可能性もあるぞ」
 
 口々にそう言いながら、客たちは吟遊詩人が開けた竪琴のケースにコインを投げ入れていった。

 まるでスパチャだ! ……じゃなくて、これが本当の投げ銭だ。
 前世では金がなくてほとんどできなかったが、今なら金がある。

 懐の革袋から銀のコインを出した。
 ドキドキと歩みを進め、彼の前に出る。そっとケースにコインを置いた。

「ありがとうございます。初めましてですよね?」

 顔を上げた彼が、紫の双眸で俺を見つめてくる。
 初見だと認識してくれている!

「は、はい。初めて聞きました。すごく素晴らしくて、感動して」

 推しを前にすると語彙力が低下するのは、転生しても変わってない。
 
「ありがとうございます。僕はノアと申します。あなたの心の片隅にでも刻んでいただけると嬉しいです」

 ノア、か。名前までちょっとノエルと似てる。
 でもこの風貌と声にピッタリのキレイな名前だ。

 薄いノアの唇が、静かに開く。

「貴方のお名前を、聞いてもよろしいですか?」
「え、あの……フレデリック、です」
「フレデリックさん。ぜひまた聞きにいらしてくださいね」
 
 ノアが微笑みを浮かべると、銀の髪がきらりと輝いた。
 俺にはそれが、天使の輪のように見えた。
 
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