異世界で吟遊詩人のパトロンになりました

水都(みなと)

文字の大きさ
10 / 65

6-1.お誘い

しおりを挟む

 それから、毎日のように酒場に通った。

 日によって出没する酒場も時間も違ったが、完全にランダムというわけではないらしい。
 何度も顔を出していれば、顔見知りになった店員が「昨日はあの店に来ていたようだ」「この時間に来ることが多い」と情報を教えてくれるようになった。

 そして何より、通っていればノアと何度も話す機会がある。
 顔も名前も認知され、軽い雑談もするようになっていた。
 「次はどこ?」「いつ歌が聴ける?」と聞けば、それとなく教えてくれる。

 もうすっかり常連の仲間入りをしたと言ってもいいんじゃないだろうか。

 幻想的な微笑もキレイだが、俺の他愛もない話で笑ってくれるノアも魅力的だ。
 ノアの顔を見るだけで、声と竪琴の音色を聞くだけで生きる希望が湧いてくる。

 推しがいるというのは幸せなことだ。転生できて良かった。

 残念なのはこの世界に録音機能がないということだ。
 家に帰ってCDやスマホでノアの歌声を聞けたらどんなにいいか。
 
 考えた末、俺はノアの歌を紙に書き留めることにした。
 それを眺めれば、ノアの歌声が脳内再生できる。それだけでも幸せだ。
 

 今日もまたノアの歌に酔いしれた。
 我先にとコインを投げに行く親父たちの背中をのんびりと見守る。

 早くノアと喋りたいのは山々だが、最後の方に行くと長く話せると学んだ。焦りは禁物だ。

 まだ数人残っているが、そろそろコインを入れに行くことにする。

 今日は奮発して金貨を準備してきた。
 ヒキニートのくせして毎月小遣いを貰っているが、いつも銀貨しか渡されないのに今月は金貨があった。

 急に伯爵家の羽振りがよくなったのかは知らないが、ありがたく使わせてもらおう。

 足元のケースに金貨を入れると、ノアが笑顔を向けてくれる。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

お疲れポメラニアンの俺を癒したのは眼鏡イケメンの同期だった

こたま
BL
前田累(かさね)は、商社営業部に勤める社員だ。接待では無理してノリを合わせており、見た目からコミュ強チャラ男と思われているが本来は大人しい。疲れはてて独身寮に帰ろうとした際に気付けばオレンジ毛のポメラニアンになっていた。累を保護したのは普段眼光鋭く厳しい指摘をする経理の同期野坂燿司(ようじ)で。ポメラニアンに対しては甘く優しい燿司の姿にびっくりしつつ、癒されると…

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】

まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

処理中です...