異世界で吟遊詩人のパトロンになりました

水都(みなと)

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6-1.お誘い


 それから、毎日のように酒場に通った。

 日によって出没する酒場も時間も違ったが、完全にランダムというわけではないらしい。
 何度も顔を出していれば、顔見知りになった店員が「昨日はあの店に来ていたようだ」「この時間に来ることが多い」と情報を教えてくれるようになった。

 そして何より、通っていればノアと何度も話す機会がある。
 顔も名前も認知され、軽い雑談もするようになっていた。
 「次はどこ?」「いつ歌が聴ける?」と聞けば、それとなく教えてくれる。

 もうすっかり常連の仲間入りをしたと言ってもいいんじゃないだろうか。

 幻想的な微笑もキレイだが、俺の他愛もない話で笑ってくれるノアも魅力的だ。
 ノアの顔を見るだけで、声と竪琴の音色を聞くだけで生きる希望が湧いてくる。

 推しがいるというのは幸せなことだ。転生できて良かった。

 残念なのはこの世界に録音機能がないということだ。
 家に帰ってCDやスマホでノアの歌声を聞けたらどんなにいいか。
 
 考えた末、俺はノアの歌を紙に書き留めることにした。
 それを眺めれば、ノアの歌声が脳内再生できる。それだけでも幸せだ。
 

 今日もまたノアの歌に酔いしれた。
 我先にとコインを投げに行く親父たちの背中をのんびりと見守る。

 早くノアと喋りたいのは山々だが、最後の方に行くと長く話せると学んだ。焦りは禁物だ。

 まだ数人残っているが、そろそろコインを入れに行くことにする。

 今日は奮発して金貨を準備してきた。
 ヒキニートのくせして毎月小遣いを貰っているが、いつも銀貨しか渡されないのに今月は金貨があった。

 急に伯爵家の羽振りがよくなったのかは知らないが、ありがたく使わせてもらおう。

 足元のケースに金貨を入れると、ノアが笑顔を向けてくれる。
 
感想 2

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