12 / 111
第一章
第12話 お父さん
しおりを挟む声が聞こえる……幻聴……?
「アリシアー! 聞こえたら返事をしてくれ!」
お父さんの声!
「ここにいるよー! 助けて―!」
カラカラの喉は貼りついているみたいで、さっきよりも声が出なかった。
お父さんの声は聞こえているのに、お父さんに私の声は聞こえてない。
お父さんに気づいてもらえなかったら、もう誰にも気づいてもらえない。
一生……このまま……
そんなの、イヤだ。
「助けてーー!! お父さーーーーん!!」
ザワザワと木々が揺れた。
そして、ピタリと音が止まる。
「アリシア!? アリシアか! どこにいる!」
「お父さん! ここ! 崖の下!」
叫びながら上を見ると、チラチラと何かの光が見えた。
お父さんの声がどんどん近づいてくる。私も枯れてる喉をムリヤリ張り上げて、何度もお父さんを呼んだ。
「アリシア!」
蛍のような光と共に、頭上に人影が現れた。
「お父さん!」
「そこにいるんだな! 待ってろ!」
お父さんは一瞬後ろに下がって……飛んだ!?
音もなく、私の目の前にお父さんが着地した。
「アリシア! 良かった!」
強く、お父さんに抱きしめられた。
「アリシア、心配したんだぞ」
「お父さん、ごめっ、ごめんなさい……私、わたしっ」
「いいんだ、無事でよかった」
ごめんなさいと泣きじゃくる私を、お父さんはずっと抱きしめていてくれた。
前世の結理は、泣いているところを誰かに見られるのが嫌いだった。
泣いてあまえたり、同情を引くのはみっともないと思っていた。
お母さんが死んだときだって、誰にも涙は見せなかった。
けど今は、そんなこと考えていられなかった。
20歳の結理じゃなくて、6歳のアリシアとして声を上げて泣いた。
自分の涙が誰かに受け止めてもらえたのは、初めてかもしれない。
「アル!」
顔を上げると、駆けてきたのはサディさんだった。
傍にお父さんと同じ蛍のような光がチラチラしてる。
「アリシアちゃん! 良かった、見つかったんだな」
「ああ、すぐ家に連れて帰る」
「待って。アリシアちゃん、ケガしてるじゃない」
サディさんが私の足を指差す。
瞬間、お父さんの顔が青ざめた。
「血!? 血が出てるじゃないか! す、すぐに騎士団の救護班を! いや城の医者を!!」
「アル、落ち着けって。とりあえず応急処置するから」
サディさんが私の足に手をかざすと、傷口がポウッと暖かくなった。
それから、手早く包帯を足に巻いてくれる。
「気休め程度だけど、これでちょっと我慢してね」
気休めなんかじゃない。ジンジンしてた痛みが消えてる。
これは……魔法?
「アリシア、大丈夫だ。必ず歩けるようになるからな。お父さんが約束する」
お父さんがそうっと、宝物でも触れるみたいに私を抱きかかえてくれた。
あったかい。お父さんの鼓動が伝わってくる。
さっきまでとは違う涙が込み上げてきた。
「お父さん、ありがとう。大好き」
お父さんの首に腕をまわした。
一瞬息を飲んだお父さんは、すぐに私をぎゅーっと抱きしめてくれる。強く、優しく。
「お父さんも大好きだよ。俺の愛しいアリシア」
4
あなたにおすすめの小説
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!
音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ
生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界
ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生
一緒に死んだマヤは王女アイルに転生
「また一緒だねミキちゃん♡」
ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差
アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる