52 / 111
第一章
第52話 弟子入り
しおりを挟む「はああああ!?」
お父さんの叫び声が部屋中に響き渡った。
「なんでアリシアをお前の弟子にしなきゃならないんだないんだ!」
「魔法使いとして生まれた者は魔法使いの弟子になるって、さっき言った」
「それは聞いたが、なんでお前の弟子になるんだ」
「ナーガ、弟子なんて取ったことあるの?」
「ない」
ないんかい!
と、心の中でツッコんだのはお父さんもサディさんも同じだろうな。
「そんなやつに大事な娘を預けられるわけないだろう!」
「弟子入りは普通、縁故がある魔法使いに頼む。他に魔法使いの知り合い、いるの?」
う……とお父さんの声が詰まる。
まあまあと、サディさんが間に入った。
「確かに不安ではあるけど、他に知り合いの魔法使いがいないのは事実だろ。リリアさんの親族には頼めないだろうし」
「それは、そうなんだが……」
お母さんは家出してお父さんたちのパーティーに入ったからか、お母さんの方の親戚とは付き合いが全然ないみたい。
それどころか、この国にはそもそも魔法使いが少ない。サディさんみたいに多少魔法を使える人ならいるけど、『魔法使い』と名乗ってる人は旅行で行ったサウザンリーフ以外で見たことなかった。みんな、妖精の存在も知らないくらいだもんな。
「リリアの血を引いた魔法使いなら、アリシアは白魔法使いになるはずだろう。お前のは黒魔法じゃないか」
「魔法は元々全部同じ。使う魔法によって、白とか黒とか勝手に呼び分けられてるだけ」
ナーガさんが淡々と答えて、またお父さんが言い返せなくなる。
「……弟子入りと言っても、具体的にはどうするんだ?」
「純粋な精霊たちのいる地で魔法を学ぶのが、伝統的なやり方」
「精霊ってのはどこにいるんだ?」
「自然が豊かな田舎。弟子入りしたら、田舎で暮らしながら修行することになる」
「暮らすって……お前とアリシアが?」
「うん」
またまた新情報に、もうお父さんが倒れそうだ。
ナーガさんと田舎暮らし……でもそしたら、ここには居られなくなるってことだよね。
「僕も物心ついたときには師匠と暮らしてた。魔法使いとして独立できるまで、早くて数年、長ければ十数年……」
「絶対にダメだ! アリシアと何年も離れるなんて考えられん!」
私が本当に魔法使いなら、弟子入りをしてちゃんと魔法を学びたい。……と思ってたけど、そういうことなら話が変わってくる。
いくら魔法のためとはいえ、お父さんとサディさんと離れ離れになるのは嫌だ。せっかくサディさんとも家族になれたのに、こんなところでバラバラになるなんて!
お父さんとサディさんを目の前で見ていられなくなるなんて!
「ナーガがこの近くに住んで、家庭教師みたいにアルの家に来てもらうってのはどう?」
「未熟な魔法使いが都会で暮らすのは向いてない。妖精たちに悪さをされ続けることになるけど、いいの?」
「いいわけないだろ!」
そろそろお父さんが暴れ出しそうだ。
お父さんたちと離れてナーガさんと田舎で修行をするか、このまま妖精のイタズラに耐えるか……二つに一つ。
普通に考えたら修行した方がいいんだろうけど、でも妖精のイタズラも慣れれば大丈夫……かもしれないし。
長い沈黙の後、お父さんが首を振った。
「……少し、考えさせてくれ」
「わかった」
話を切り上げて、おやつタイムになった。
おやつのクッキーはおいしかったけど、お父さんはずっと考え込んでて、ナーガさんも終始無言。
サディさんと私がなんとか和ませようとお喋りしたけど、空気は重かった。
とりあえず今日はお開きになった。
帰り際、徐にナーガさんが首から下げていた紫色のペンデュラムをはずす。
「これ、貸しておく」
「私に?」
「僕の持ち物を身につけておけば、しばらくは妖精たちも出てこないと思う」
ってことは、魔法使いのアミュレットみたいなものだね。
「ありがとう! ナーガさん!」
ナーガさんが何か言いたそうな視線を向けてくる。その視線が痛い。
「どうするか決まったら呼んで。街外れの宿屋にいるから」
「アルの家、いっぱい部屋あるんだから泊まらせてもらえばいいのに」
「こんなに人がいる家、落ち着かなくてしょうがない」
「ナーガは人が多いとこ苦手だもんねぇ」
帰ろうとするナーガさんを、お父さんが呼び止めた。
「今日は娘のためにありがとう。感謝する」
「……驚いた。アルバートが僕にお礼言ってる」
「親になるって言うのはこういうことなんだよ、ナーガ」
しみじみと言うサディさんに、お父さんはばつが悪そうに顔を背けた。
7
あなたにおすすめの小説
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!
音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ
生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界
ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生
一緒に死んだマヤは王女アイルに転生
「また一緒だねミキちゃん♡」
ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差
アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる