孤独な腐女子が異世界転生したので家族と幸せに暮らしたいです。

水都(みなと)

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第一章

第57話 引っ越し前夜

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 それからしばらく、お父さんとサディさんは手分けして何度もプレンドーレに向かい、新しい家の準備を整えてくれた。

 私も荷物の整理をしたけど、新しい家に収納場所はそんなにないだろうから持っていけるものは少ない。

 でも私には、お母さんのオルゴールとお父さんから貰ったペンダントがあれば十分だ。あとは洋服を何着か。残りはこっちに置いておいて、必要なときに取りに来るか送ってもらうことになった。

 お父さんたちの仕事の引き継ぎも終え、ようやく旅立つ支度ができた。
 そして引っ越し前日。
 サディさんの家は引き払ってしまったので、最後の夜はうちで過ごすことになった。

「使えそうな家財道具は全部プレンドーレに送っちゃったから、家の中すっからかんになったよ」
「悪いな。サディの家のものを使わせてもらうことになって」
「捨てるにはもったいないから良かったよ。現地調達もどこまでできるかわからないからね。それに、アルんちの家具は大きくて新居に入らないでしょ」
「これからは、なんでもコンパクトにしないとな」

 夕食後、客間の丸テーブルを囲んでまったりタイム。
 この家とも今日でお別れだけど、これからは家族3人の暮らしが始まる。寂しさもあるけど、今はワクワクの方が強い。

「向こうに行ったら自給自足だ。おいしい野菜を作るから、いっぱい食べるんだぞ」
「うん! でもお父さん、畑のお仕事できるの?」
「そりゃできるさ。子供の頃、施設でよく畑仕事をしていたからな」
「施設?」

 私が首を傾げると、お父さんが「ああ」と苦笑した。

「お父さんは騎士学校に入る前、孤児院にいたんだよ」
「孤児院!?」

 ってことは、家族がいなかったってことだよね。
 詳しく聞いてもいい話、なのかな……

「お父さんの家族は魔王軍の魔物に襲われたんだ。魔王がいた頃は、そんなに珍しい話でもなかったがな」
「親と暮らせない子は今よりずっと多かったよね。僕もそうだった」
「サディさんも孤児院にいたの?」
「僕はストリートチルドレンってやつだよ」

 お父さんが魔王を倒すまでは世界に魔物が溢れてたって、前に街でおばあさんが言ってた。
 今の平和な世の中からは考えられないけど。

「サディは苦労したからな」
「そんなのお互いさまだろ」
「でもお前の場合は……」
「アリシアちゃんの前でやめてよ。僕嫌われたくないんだけど」

 お父さんが口をつぐんで、部屋に沈黙が落ちた。

 前世の私にはお父さんがいなくて、病気のお母さんに甘えることもできなかった。
 お父さんとサディさん、それから私。みんなそれぞれ事情があって、所謂普通の家族を知らない。

 お父さんが空気を変えるように「そうだ」と手を叩いた。

「せっかくプレンドーレに行くんだから、アステリの実も育てよう!」
「アステリって?」
「プレンドーレの特産品だ。黄色いリンゴのような果物だが、流星の光を浴びて育つらしい」

 なにそれすごいロマンティック! 急に異世界っぽい食べ物!

「アステリのおかげで、プレンドーレって田舎の村にしては結構栄えてる方なんだよね」
「俺たちやハドリーさんのように、引退後の元騎士の移住先としても密かに人気らしい」

 アステリかぁ。どんな味がするんだろう。

 まだ見ぬプレンドーレの話を聞いて胸を膨らませてると、あっという間に夜更け。
 そろそろ私は寝る時間だ。

「アリシア、今日は一緒に寝るか?」

 最後の夜だからか、お父さんがそんなことを言い出す。
 こっちの世界は日本と違って、大人と子供は別々に寝るアメリカ式。たまにはお父さんと寝てみたい気もするけど……

 でも、私と一緒に寝たらお父さんとサディさんの時間が減っちゃう!
 それにプレンドーレに行ったら、なかなか2人きりにしてあげることはできないかもしれないもんね。

「ううん、1人で寝られる。お父さん、サディさん、おやすみなさい」
「そ、そうか……おやすみ」
「おやすみ、アリシアちゃん」

 お父さんの寂しげな顔に胸が痛む。
 ごめん、お父さん。向こうに行ったら1回くらい「寂しいから一緒に寝てもいい?」ってイベント発生させるから!

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