63 / 111
第二章
第63話 歓迎会
しおりを挟むその夜、ハドリーさんのお店で開いてもらった歓迎会には村の人たちがたくさん集まってくれた。
ナーガさんの姿をさがしたけど、来てないみたい。人が多いところ嫌いって言ってたもんな。
お父さんとサディさんは村長さんやお役人さんたちに、挨拶してまわる。私もその後をついてまわった。
「おお、可愛らしいお嬢さんだ。お名前は?」
「アリシアです」
「年はいくつかな?」
「7歳です」
「ちょうどうちの子と同じくらいだ。お父さんが勇者様なんて羨ましいなぁ。お父さんのこと好きかい?」
「好きー!」
というテンプレのやり取りを何度となく繰り返した。
もう最初から「アリシア、7歳です。お父さんのことは好きです」と言いたいくらいだったけど、これもコミュニケーションだもんね。新参者なんだから、第一印象は大事にしないと。
「勇者様ご一家を歓迎して、乾杯!」
「乾杯!」
大人たちはアステリの果実酒で、子供はアステリのジュースで乾杯した。
昼間と同じものだけど、夜に見ると更にキラキラ輝いて見える。まるで星が散りばめられてるみたいだ。
「こんばんは。あなたも向こうで一緒に遊ばない?」
声を掛けてくれたのは、10歳くらいに見える女の子だった。胸元まであるプラチナの髪は上品な内巻きで、柔らかく微笑んだ彼女はとても優しそうだった。
部屋の隅を見ると、村の子供たちが集まっている。
「私はソフィア。お友達になりましょう、アリシアちゃん」
「うん! ありがとう! ソフィアお姉ちゃん!」
そう呼ぶと、ソフィアちゃんは嬉しそうに笑った。
ソフィアちゃんは、みんなのお姉さん的な立場らしい。美人で可愛くて優しいとか、こんなお姉ちゃん前世で欲しかったんだよね~。
「アリシアちゃん、もうお友達ができたの?」
サディさんが大人たちの輪を抜け出してやってきた。
「サディさん、この子はソフィアお姉ちゃんっていうの。今みんなでゲームしてるんだよ」
「楽しそうだね。僕も混ぜてくれない?」
サディさんがソフィアちゃんに言うと、ソフィアちゃんは「もちろん、どうぞ」と私との間にスペースを開けてくれた。
「ありがとう、ソフィアちゃん。僕はサディアス、『サディ』でいいよ。アリシアちゃんもそう呼んでるから」
「はい、サディさん。よろしくお願いします」
サディさんがさりげなく聞き出してくれた話によると、ソフィアちゃんは村長さんの娘さんらしい。
それからしばらく、サディさんとも一緒に村の子たちと遊んだ。お父さんはというと、村の人たち相手にハドリーさんと旅の武勇伝を披露してるみたい。お酒も入ってずいぶん盛り上がってるのか、盛大な笑い声が何度も聞こえる。
サディさんが輪に加わってから、子供たちのお母さんたちが何やらこっちを気にしていた。
「あの、サディアス様……」
「様なんてよしてください。僕らも同じ村の住民なんですから」
「ええ、では……サディアスさん。子供たちの相手をしていただいて、ありがとうございます。あちらでハドリーさんたちとご一緒しなくてよろしいのですか?」
「僕はこっちでみんなと遊んでる方が楽しいんです。僕みたいなのがいたら、お邪魔でしょうか?」
「い、いえ、そんな! 子供がお好きなのですね」
「はい。それにこちらにいるおかげで、皆さんのような美しいお嬢さんたちとお話しすることもできて幸運でした」
「まあ!」「キャー!」と、お母さんたちが口元に手を当てて沸き立つ。
ヤバい、サディさんがモテちゃう。
夜も遅くなってきて、子供たちはお母さんと帰る時間になる。
私もサディさんと先に帰ることになった。お父さんは「お~、サディ~、アリシアを頼むぞ~」とベロンベロンだった。朝まで帰ってこないかもしれないな。
「ったく、アルはしょうがないな。アリシアちゃんほったらかしでさ」
田舎の暗い道を歩きながら、サディさんが零した。
「ハドリーさんが一緒だからって、はしゃぎ過ぎて困っちゃうよね」
「お父さん、ハドリーさんととっても仲良しなんだね」
「騎士学校の頃から、ハドリーさんはアルの憧れなんだよ」
確かにプレンドーレに住むと決めたときのお父さんは嬉しそうで、ハドリーさんと一緒にいるとキラキラした目をしてた。
「上級生と剣の対決をする行事があったんだけど、うちの学年で1番剣が強いアルが代表して出ることになってさ。実際、訓練で上級生を負かしたこともあったから自信満々で出てったら……ハドリーさんにコテンパンにされた」
「ハドリーさん、強かったんだね」
「慢心というか、舐めてたんだろうね。あの頃のアルは、今よりずっと強気だったから。でもそれで反省して、ハドリーさんを尊敬するようになったんだ。いつもハドリーさんの後ろをくっついて歩いてさ」
あの2人にそんな過去が。
そして努力したお父さんは、ある日ついにハドリーさんとの勝負に打ち勝つ。
「ふっ、お前も強くなったな」「やっと、あなたに並べましたね」とか言っちゃって!
……いやいやいや、お父さんとハドリーさんでカップリング作ってどうするんだ。浮気はダメダメ。
サディさんだって、ちょっと拗ねた顔してるじゃない。
ん? 拗ねた顔?
「サディさんは、ハドリーさんのこと……嫌いなの?」
サディさんが驚いて私を見た。
「嫌いじゃないよ。でもいや、ちょっと……さ。アルって昔からハドリーさんにベッタリだから、なんか、ね」
もしかして……サディさん嫉妬してる!? してるよね!
だから引っ越し前からお父さんがハドリーさんの話すると、複雑そうな顔してたんだ。
独身時代に女性が相手なら身を引くけど、今は自分というものがありながら他の男と仲良くするなんてどういうことだ! ってことですね!
とすると、さっき「美しいお嬢さんたち」と王子様スマイル浮かべてたのは、お父さんへの当て付け?
なにそれ、サディさんかーわーいーいー!
はっ! 腐女子としては激萌えの展開だけど、お父さんがそれにまったく気づいてないのは大問題だ。
明日は酔って帰って来るだろうし、引っ越し早々空気が不穏……。
6
あなたにおすすめの小説
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!
音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ
生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界
ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生
一緒に死んだマヤは王女アイルに転生
「また一緒だねミキちゃん♡」
ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差
アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる