孤独な腐女子が異世界転生したので家族と幸せに暮らしたいです。

水都(みなと)

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第二章

第69話 家族

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 夕食の後はまったりタイムを過ごして、それからお風呂に入った。
 まだ少し早いけど、今日はもう寝ることにしよう。いや、本当は寝ないけど。

「眠くなっちゃったから、今日はもうお休みするね」
「初めての修行頑張ったもんね。おやすみ、アリシアちゃん」
「よし、お父さんがベッドまで連れて行って……」
「大丈夫! 1人で行けるから!」

 お父さん、なんで私がさっさと退散するか全然わかってない。
 目で「サディさんと話するんでしょう」と訴えると、お父さんが気づいたのか慌てて頷く。

「あ、ああ、そうか。おやすみ、アリシア」
「おやすみなさい」

 頑張ってね! とアイコンタクトして2階に向かう。
 階段の上は吹き抜けになっている。覗き込めば、真下はリビングのテーブル。覗き見するにはもってこいの場所だ。

「また振られちゃったね~。どうする? 俺らももう寝る?」
「い、いや……ちょっと、あの……聞きたいことが、あるんだが」

 しどろもどろだけど、なんとか切り出せた。お父さんはコップの水をグイッとひと飲みして、サディさんに向き合う。

「何か俺に、言いたいことはないか?」
「アルに?」
「この前から、その、サディの様子がおかしいような……気が、して」

 お父さん、失速するの早すぎ。頑張って!
 上からじゃサディさんの顔は見えないけど、少し俯いてるみたい。

「へえ、気づくんだ。意外」
「そ、そりゃ俺だって気づくぞ。何年バディやってると思ってるんだ」
「……俺ってさぁ、今でもアルにとってはバディってだけなわけ?」
「え……」
「パートナーに……恋人になったんじゃないのかよ。俺たち」

 2人が押し黙って、時計の秒針の音だけが響く。

「それはもちろん、バディでもあってパートナーでもあるだろ」
「だけど、ハドリーさんには言ってくれなかったじゃん。他の人たちにはともかく、ハドリーさんには本当のこと、言ってほしかった」
「サディ……」
「ハドリーさんは仲間だろ。仲間にも隠したいような関係なのかよ。俺のことって」

 サディさんの声は、どことなく拗ねているようだった。
 部屋全体に重く、冷たい空気が沈んでいる。

「……悪い」

 お父さんの絞り出すような声が届く。

「ダメだな、俺は。サディと恋人になる覚悟が全然できてなかった」
「そうだよ。そっちから告白しといてさ。もっと腹括って責任取れよ」
「ごめん。お前との関係を隠したかったわけじゃないんだ……ただ、照れくさくて……」

 手で顔を覆うお父さんに、サディさんがため息をつく。

「別にリリアさんとのときみたいに、大手を振って『聞いてくれ! リリアと付き合うことになったんだ!』とか言ってほしいわけじゃないんだからさ」
「いいい言うな! あれは若かったから! 周りが見えてなくて!」
「こっちが引くくらい有頂天になってたよねぇ。なのに、今更何が恥ずかしいわけ? よりによって恋人が俺だから? 男だから?」
「違う! サディと恋人だということは恥ずべきことじゃない。……ただ、リリアと付き合った頃のことは今でもたまに思い出すんだ。若気の至りとはいえ、イタかったなと……」

 お父さん……そんな過去が。
 確かに若い頃と同じテンションで触れまわってたら恥ずかしいだろうけど、でもお父さんだってもう大人。スマートに伝えることだってできる、はず……たぶん。

「でも、それでサディを傷つけてたんだな。悪かった」
「いいよ、別に。俺も勝手に拗ねて悪かった。アリシアちゃんにも、気を使わせちゃってたよね」

 バレてた! いやそんな、私のことなんて気にしなくていいのに。
 でもサディさんからすれば、7歳の子供に気を使わせたのは罪悪感があったのかもしれない。
 うーん、気を使うのも難しい。お父さんには大丈夫だと思うけど。

 ガタッと、突然お父さんが立ち上がった。

「よし! ハドリーさんにサディとのことをきちんと伝えるぞ。ちょっと行ってくる!」
「今から? 明日にしなよ。こんな時間に乗り込んでって伝えるとか、そっちのが恥ずかしいんだけど」
「そ、そうか……」

 しゅるしゅるとお父さんが腰を落とす。
 とにかく、これで解決かな。あとは明日お父さんがハドリーさんのところに行くときに……

「サディ、俺は空気が読めない」

 小さくなってたお父さんが顔を上げた。

「んなこと知ってるけど」
「今回みたいに、またヘマをすることもあるだろう。お前が何を考えてるか、言ってくれないとわからない」
「堂々と言うことかよ」
「だから、何かあればすぐに言ってくれ。思ってることは、嫌なことも困ってることもなんでも言ってほしい。その都度話し合って、解決していこう」

 そう提案するお父さんの顔を、サディさんはまじまじと見てるようだった。
 それから、ふっと笑う。

「なんかそれって、『家族』みたいだよね」
「家族なんだから当然だろ」
「でも……うん、そうだね。良いことも悪いことも、これからは共有していこう」
「風通しを良くしておくのは、家族円満の秘訣だ」
「アリシアちゃんが思春期になったとき、口利いてくれなくなったら大変だもんね」
「アリシアが!? ア、アリシアが反抗期になったら俺は……俺は……どうしたら!!」
「だーかーらー、そうならないようにしようって言ってんだろ」

 頭を抱えて嘆いてるお父さんに、サディさんがやれやれと肩を竦めた。

 ゴーンゴーンと、壁掛け時計が鳴る。
 もうそろそろいい時間。見届け人はここまでにして、寝るとしましょうか。

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