孤独な腐女子が異世界転生したので家族と幸せに暮らしたいです。

水都(みなと)

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第二章

第74話 魔力記念日

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 次の日、ライラック号のお世話をして朝ご飯を食べ終えると、さっそくサディさんと魔法の練習をすることにした。

 私の部屋の真ん中に、サディさんと向かい合って立つ。

「まず、両手を合わせてみて。そのまま深呼吸」

 胸の前で手を合わせ、ゆっくりと深呼吸をした。すると、サディさんが私の手を両手で包み込む。

「呼吸を続けて、段々と手が温かくなってくると思うよ」

 確かに、ちょっとずつ手が温かくなってる気がする。サディさんの手が温かいからだと思ったけど、手のひらの内側がぼんやり熱くなる。ちょっとだけ、ビリビリする。

「どう? 何か感じる?」
「熱くてビリビリした感じがする」
「そう、それが魔力の感覚だよ」

 これが魔力!?
 サディさんが私から手を放した。それでもまだ、手は熱いまま。

「少しずつ、手を離していってごらん」

 言われた通り、ちょっとずつ手を離していく。それでもまるで両手の真ん中に何かがあるみたいに、熱を感じる。

「両手を胸に当ててみて。手のひらから心臓を通って、全身に魔力が巡っていくイメージをするんだ」
「イメージ?」
「うん、イメージすると魔力の流れを意識できる。まずはこうやって、魔力を使う意識をすることが大事なんだ」

 イメージか……。
 なんとなくだけど、私のイメージ的に魔力って緑色。緑色のエネルギーが手から放たれて、心臓を通って頭や手足に巡っていく。
 いや、実際に巡ってる感覚は全然ないけど。

「最初は感じられないかもしれないけど、これを毎日続けてごらん。そのうち、イメージしようと意識しなくても自然と魔力が感じられるようになるよ」
「どれくらいすればいいの?」
「それは人に寄るんだけど……徐々に上達していくというか、あるとき『ふっ』と急にできるようになるんだ」

 なんだか雲を掴むような話。もともと目に見えないものだから、そりゃそうかもしれないけど。

「サディさんは、どのくらいでできたの?」
「僕は3ヶ月くらいかな。そこから魔法を使えるようになったのが半年……」

 そんなに? と思ってしまったのが顔に出ていたのか、サディさんが慌てて片手を振った。

「大丈夫大丈夫。僕は生粋の魔法使いじゃないから時間が掛かっただけだよ。アリシアちゃんはリリアさんの子なんだから、もっと早くできるよ」

 お父さんの魔力はゼロなんですけどね。
 でもとにかく、やるしかない。

 そこから毎日、時間を見つけて魔力を使う練習をした。
 暇さえあれば……って、学校も行ってないし修行も始められない。家のお手伝い以外は暇だらけな私は、とにかく何度も魔力を使うイメージトレーニングをした。

 初日にいきなり両手が熱くなったのは、やっぱりサディさんのおかげだったみたいで、自分でやると何にも感じない。
 それでも魔力が使えるようになると信じてイメージを続ける。相変わらず全然実感はないけど、緑色のエネルギーが体中に流れているイメージ。


 練習を始めて一週間。

 両手を合わせて深呼吸をした途端、何かを感じた。
 両手がポカポカ熱くなってきて、手のひらがピリピリしてくる。これは! 魔力の感覚だ!

 その感覚がなくならないうちに、そっと両手を胸に当てて目を閉じる。すると、緑色のエネルギーが身体にぐんっと巡るのを感じた。イメージじゃない、本当に感じる。
 頭のてっぺんから足の爪先まで、まるで何かに包み込まれたみたいだ。

「サディさん! できた! できたみたい!」

 階段を駆け下りて行くと、リビングにお父さんとサディさんがいた。サディさんは私の様子を見て、目を見開く。

「本当だ! アリシアちゃん、魔力が使えてるね!」
「わかるの?」
「見ればわかるよ。アリシアちゃんの身体、魔力のオーラに包まれてる」
「私には見えないよ」
「これも修行していけば見えるようになるよ」

 サディさんと手を取り合って喜んでると、お父さんも飛んできた。

「すごいじゃないか、アリシア。魔力が使えたんだな」
「うん、ほら」

 熱くてピリピリしてる手で、お父さんの手を握る。でも、お父さんは嬉しそうに私の手を握りしめるだけだった。

「さすがはお父さんの自慢の子だ」
「お父さん、何も感じないの?」
「ん? お父さんはすごく嬉しいぞ!」

 いや、そうじゃなくて。
 サディさんが横で苦笑した。

「アル、やっぱり魔力は全然感じられないんだね」
「う……ずるいぞ、サディ。お前ばかりアリシアと喜びを分かち合って」
「別に自慢したわけじゃないんだけど」

 お父さんに魔力が伝わらないのは残念だけど、でも喜んでくれてることには変わりない。
 早く魔法を使えるようになって、お父さんに見てもらわないと。

「でも一週間でできちゃうとは思わなかったよ。一か月は掛かるかなって思ってたから」
「お母さんの魔力が強かったからかな?」
「それもあると思うけど、アリシアちゃんが頑張ったからだよ」

 サディさんがそう言うと、お父さんが大きくうなずいた。

「アリシアは毎日頑張っていたからな。偉いぞ、アリシアは努力家だな」
「そういうところは、アルに似たのかもしれないね」
「俺に!?」
「アルも騎士学校のとき、みんなが寝静まった後も1人で稽古してたじゃない」
「知ってたのか……?」
「まあね」

 こんなところで初出し情報が!
 もう私の話なんてどうでもいいから、その話聞かせて!

 という心の叫びは届かず、お父さんは私を抱き上げた。

「今日はアリシアの魔法記念日だな。お祝いをしないと!」
「お父さん、私まだ魔力が使えただけだよ。魔法は使えてない」
「そうか、じゃあ魔力記念日だな!」
「後でケーキを買ってこようね」

 お父さんが私を抱きしめて、サディさんが頭を撫でてくれた。
 やれやれ、この勢いだと魔法が使えた日も記念日になりそうだな。


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