孤独な腐女子が異世界転生したので家族と幸せに暮らしたいです。

水都(みなと)

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第二章

第80話 サプライズ

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 サディさんとナーガさんを見送って、お父さんは畑仕事に戻った。
 村の人たちにも助けてもらって、野菜は順調に育ってるみたい。
 私はライラック号にブラシを掛けながら、畑仕事に精を出すお父さんを見守る。

「ニンジンもたくさん作ってるみたいだよ。ライラック号も楽しみにしててね」

 ヒヒーンと短く鳴いて、ライラック号が黒い尻尾を揺らした。


 夕方になって、お父さんと一緒にハドリーさんのお店に向かった。こっちに来てから初めての外食。
 店内には何組かお客さんがいて、カウンターの中ではハドリーさんがコーヒーを淹れている。私とお父さんはカウンターの席に座った。

「いらっしゃい」
「こんばんは、先輩」
「この時間ってことは夕飯か? 食べに来るなんて珍しいな」

 ハドリーさんがお父さんと私をじっと見て、憐みの表情を浮かべた。

「もうサディに逃げられたのか」
「そんなわけないでしょう! 明日までナーガと出掛けてるんですよ」
「はー、ナーガのやつ略奪か」
「子供の前で冗談やめてください!」

 ハドリーさんがゲラゲラ笑ってる。お父さんをいじるのホント好きなんだろうな。リアクションいいもんね。

「何にする?」
「俺は肉が食いたいです。アリシアには何か、子供が好きそうなものはありますか」
「そうだなぁ、スパゲッティーなんてどうだ? 村の子供らが好きだぞ」
「スパゲッティー食べたい!」

 しばらくお父さんと話をして待っていると、チキンのガーリックソテーとトマトベースのスパゲッティーが目の前に並んだ。

「いただきまーす!」
「先輩の料理は旨いぞ、アリシア。旅の途中に作ってくれたメシはいつも最高で」
「アルは口に入ればなんでもいいんだろ。辺境の部族の村に寄ったとき、とんでもねえゲテモノ料理出されたのにお前だけ旨い旨い食って」
「全員残したら印象悪いでしょ。出されたもんを食うのは礼儀じゃないですか」

 お父さん、そういうとこ気を使えるんだな。さすがリーダー。
 ナーガさんとか普通に「まずい」って言っちゃって気まずくなりそう。

「にしても、サディとナーガで一晩どこに出掛けたんだ?」
「アリシアの魔法の杖を買いに行ってるんですよ。師匠が用意するものらしいんですが、心配なのでサディも一緒に」
「ああ、そういやアリシアちゃんの魔法修行のために移住したんだったな」

 この村に魔法使いはいないみたいだけど、ハドリーさんは私が魔法使いなことに驚いてないみたい。
 お母さんやナーガさんとずっと一緒に旅してたから、慣れてるのかな。

 2人の話を聞きながら、トマトソースとキノコを絡めて食べる。んー、ミートソースともケチャップとも違って新鮮な酸味がおいしい。粉チーズがあればもっといいんだけどな。

「アリシアちゃん、もうプレンドーレには慣れたかい?」

 いつの間に、ハドリーさんが私の方を向いていた。スパゲッティーを慌てて飲み込む。

「うん! お友達もできたし、アステリもおいしいよ」
「そりゃ良かった。アステリといや、来月村の祭りがあるぞ」
「お祭り?」

 ハドリーさんの話では、毎年村でアステリの収穫祭が行われるらしい。そろそろ流星群の季節らしく、その光で熟したアステリを囲んだお祭り。

「村中にアステリを模したランプを飾るんだ。流星群の光を受けた直後のアステリは実が輝くからな」
「へえ、キレイなんでしょうね」
「それ目当てに観光客も増えるから村の書き入れ時だ。カップルのデートで最適だとか噂が広まって、最近じゃ結婚式上げるやつもいるな」

 前世の世界で言うところの映えるフォトスポットって感じですね。
 結婚式か~。そういえば、お父さんとサディさんって結婚式してないよね。というか、『結婚』してるんだろうか。まだ恋人だって言い張ってるけど、子供連れて一緒に暮らしてるんだから事実婚状態だよね。

 ふと横を見ると、お父さんが何やら考え込んでる。

「来月か……」
「祭りは村総出でやるから手伝えよ。新参者が出てこないなんて村八分になるぞ」
「わかってますよ。来月っていうと、記念日だなと思って」
「記念日?」
「俺とサディが魔王討伐に旅立った日なんです」

 2人の記念日! なにそれ初耳なんですけど!
 わっくわくの私とは反対に、ハドリーさんは呆れたような顔してる。

「あー、アルは記念日とか気にするタイプだからな。旅の最中も俺らの誕生日は必ず祝って」
「大事なことじゃないですか。まあ、サディは毎年『そうだっけ?』って忘れてるんですけど」

 お父さん、結構マメなタイプなのね。サディさんは意外とそうでもないのか。
 でも決意を固めて2人で大いなる一歩を踏み出した記念日。目的が達成された今も2人の旅は形を変えて続いていて……うーん、尊い。

「ちょうど祭りの日なら、アステリの何かをプレゼントするのもいいな。何かいいのありますか?」
「アステリの菓子だの酒だのは死ぬほど出るぞ」
「せっかく一緒に暮らして初めての記念日なので、形に残るものがいいんですが」
「あー……指輪とか?」
「指輪!!」

 お父さんと一緒に私まで叫んでしまった。
 だって指輪のプレゼントとか、それはもうプロポーズ。結婚指輪? 婚約指輪? ええい、それはどっちでもいい!

「この村に指輪が売ってるんですか?」
「祭りに結婚式上げるやつがいるって言ったろ。この時期だけ特別に鍛冶屋と硝子屋が作ってんだよ」
「指輪か……」

 お父さんが真剣な顔で腕を組んだ。
 きっとサディさんにプレゼントするつもりなんだろう。

 そういうことなら、私も2人に何かをしたい。
 今度こそ花束を作るのもいいけど、トラウマが蘇る。それに今回はプロポーズ。もっと盛大に――

 そうだ、指輪があるなら結婚式をしよう!
 手作り結婚式でお父さんとサディさんにサプライズだ!

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